掠れた声と左膝の擦り傷

春嵐

α

 声がかすれれば、もう、使い道はなかった。

 生きていく道が絶たれた。夢も、もう、叶わない。

 唄だけで。声だけで。歌うことだけで。そう思っていた。ずっと、そうやって。そして今、掠れた声だけが残って、今、ここにいる。今。


「今か」


 未来がない自分には、現在にしがみつくしかなかった。過去には、戻れない。声が掠れる前には。戻れない。

 夜。

 今日が終わる。

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