不器用な優等生の独り言
@allegro0324
第1話
「…えっ、冗談でしょう?やめてよー!あー笑える!石橋君が私を好き?そりゃ無理無理、あり得ないわ!だって石橋君、あなたとつきあったって、何のメリットもないんだもん。勉強だけはできるから、宿題の答えはよく教えてもらっているけれど、ただそれだけの事だよ。これは皆に言いふらして笑ってもらわなきゃ。あーおかしい!」
彼女はこう言って走り去った。
僕は、この学校では学業成績が学年で一番だ。だけどここは進学校ではないし、不良も数人いる。何しろ元は農業高校だったんだ。ここで一番になっても「真面目過ぎてつまらない奴」「先生達のご機嫌取りだけは上手いけど」と言われるばかりで、同級生はおろか、上級生や下級生からも露骨に避けられている。身体的な暴力は振るわれないけれど、精神科な暴力は目には見えないだけに始末が悪い。
この前は、生徒会長に誰もなり手がいないからと先生方に請われて、仕方なく立候補した。だが、信任投票というハードルが待ち受けていた。結果は…やはり不信任だった。
冗談を言っても、バカをやっても皆は笑ってくれないばかりか「何やってんだ?」と、奇異の眼で僕を見る。勇気を出して好きな子に告白したら、このザマだ。
唯一の僕の居場所は図書室。優しい司書さんとの語らいだけが唯一の楽しみだ。司書さんには悩みを打ち明ける事もある。結婚していらっしゃる方だから、あまり甘えられないけれど。
両親も、皆の中に入って行けない僕が悪いという考え方だから、うかつに悩み事は話せない。こうなったらもう、ますます勉強して、この街からははるか遠くにある難関大学に入って、皆からも両親からも遠ざかるしかない。
不器用で人間関係がうまく築けない僕は、結局は誰に何を言われようとも、勉学に励むしかないんだ。贅沢な悩みかも知れないが、優等生と呼ばれてバカにされる奴にだって、苦悩はいっぱいあるんだ。
もっと器用に生きられたら、人気者になれたなら…と、いつも思うよ。
不器用な優等生の独り言 @allegro0324
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