第34回 ラッキースケベと工房への招待
朝方、カンカンと特徴的なハンマーを打付ける音で俺は目を覚ました。
なるほど、鍛冶師達は朝が早いらしい・・・ここはギルドによく併設されている宿屋だろうか、っつ・・・昨日は飲み過ぎたようだ頭が痛い。
二日酔いに回復魔法は効くのだろうかと考えながら起き上がり毛布を退けると・・・隣に誰か寝ていた。
「またルリコか・・・は?」
「ンン・・・もお朝かよ・・・。」
ポニーテールこそほどいているが俺の横に全裸で寝ていたのは昨日出会ったリュウガだった。
「なあああぁ!?リュウガさん!?」
「ああ?俺様にさん付けはいらねぇと何度も・・・むにゃあ。」
しかもまだ起きていない。
一応確認したが俺はちゃんと上下ともにシャツもトランクスも履いていた、ナニカで汚れた様子もない。
「・・・どうしたもんかコレは・・・。」
床に散乱しているのは俺の服に昨日彼女が着ていた服とサラシだろうな・・・酔っ払って俺のベッドに潜り込んで来たのか、俺をベッドに連れて来たのかはわからん。
とりあえず毛布を彼女に被せてから服をたたんで俺は顔を洗おうと洗面所に移動したのだった。
「あ、ハヤトおはよぉー、昨日は大変だったねぇ。」
「ミサキか、俺は酔っ払って記憶が無いんだが何があったんだ?」
顔を拭いているとミサキも起きてきたのか少し寝ぼけているように見えた。
「リュウガさんがお酒弱いのにめっちゃ飲んでたみたいでね、なんかハヤトが気に入られたみたいで寝床に連れてけーって・・・まさか。」
「俺はヤツの部屋の隅っこで毛布を巻いて寝ていたらしい。」
「えぇ・・・ハヤトもお酒弱いんだから気をつけなよ?」
嘘をついてしまったが直接現場を見られた訳じゃないのが幸いしたか・・・。
「ミサキたちはどうしたんだ?」
「ハヤトがリュウガさんに付き添っていってからギルドの人にここの部屋を使ってくださいって。ルリコはまだ寝てて、リリィちゃんはハヤトを心配して探してたみたい。」
「そうか、すまなかったな。」
「素直に謝るなんて珍しいねぇ、まあいっか朝ごはん用意してくれてるみたいだから食べに行こー。」「了解。」
そして一階で朝食を食べていると起きてきたらしいルリコを連れてリリィがやってきた。
「おはようございます、ご主人様。昨日は大丈夫でしたか?」
「ああ、少し酒が残ってる気がするけど平気だ。」
「リュウガ様はまだ寝ておられるのでしょうか、何処にお部屋があるのかわからずご主人様を起こしに行けず申し訳ありません。」
今日ほど起こしに来られず助かった日はないだろうな・・・。
まだ眠そうなルリコをリリィが洗面所に連れていき、それと入れ違いに昨日の受付嬢さんが俺たちのテーブルにやってくる。
「獅子王さま、昨日は当ギルドの支配人が失礼致しました・・・いつも強くもないのに気に入った冒険者さんをお酒の席に呼んでは先に潰れてしまうんですよ。なので私たちも遅くまで残ってることが多いんです・・・。」
「わかる気がするな。」
「しかも脱ぎ癖まであるからいっつも大変で・・・。」
「脱ぎ癖?」「・・・。」
「ええ、飲みの席では全裸にこそならないんですけど上着や作業ズボンなんかパパーっと脱ぎ捨ててしまうので。ベッドに辿り着く頃には当然のように何も着てないんですよ、不思議なくらい風邪は引かないようなんですけどね。」
そうしてご迷惑掛けてすいませんと一礼して帰っていった。
「ハヤト・・・もしかして。」「俺は知らん、見てないぞ。」
「赤くなってる!リュウガさんの裸見たんでしょ!」
「俺は隅で寝てたから知らん!」「そんなのわからないじゃんよ!」
「どうした〜痴話喧嘩か?」「ご主人様やはり・・・。」
「知らないっての!!」
朝から大騒ぎではあったがその後当の本人が何食わぬ顔でカウンターで飯を食べながらこちらを「若いヤツらは朝から元気だねェ」なんて騒ぎの原因は自分であるということには一切気づいている様子はなかった。
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「そんで今日は観光か?俺が暇だから案内してやろうか?」
「ヒマなのか?」
「ギルド長なんざ暇な方がいいのさ、副業に鍛冶師もやってるしな。そうだお前らの装備の様子みてやろう、裏に俺さまの工房があっから全員来な!」
とさっさとギルドを出ていってしまうリュウガ。
「なんというか・・・気風がいいとはああいう方を指すんでしょうね。」
「オレはリュウガ好きだぞ!昔はアタシって言ってたけどリュウガの真似してるんだ!」
「即刻やめた方がいいと思うんだが。」
「カッコイイじゃん!」
ギルドを出て脇道からぐるっと建物を回った先にあったのはまさにギルドの建物と同化した武器屋の様なものだった、既に何人か働いてるな・・・朝方聞こえてきた金槌の音はここからだったのだろうか。
「よお来たな!じゃあまずは・・・ルリコ!お前ナイフ研いでないだろ?」
「ギクッ!?」
「鞘に入れてたってわかる!どうせ自分じゃ研がないんだ、研ぎにも出してないってなぁ。投げナイフにしても日々のメンテは大事だからな、それは防具に関しても同じだ。」
パパっと手際良くルリコの装備を剥ぎ取っていくリュウガ。
そういや俺とミサキは防具はおろか剣も普段から装備していないが。
「よし、次はお前さんだハヤト・・・ってなんにも付けないできたのか?」
「俺は普段からこうだ。」「噂の魔人サマが
【チェンジ】
「変身。」
ベルトにレイドカードをスキャンするといつもの様にゼロムへと変身してみせた。
「うお!?ジオから聞いた噂と実際見てみるとじゃえらい違いだな・・・あと工房の中で変身するんじゃねぇ!!」
「ああ、それはすまん。」
「なるほど、コレは見たことも無い鎧だ。硬さはどんなもんなんだ?」
「全速力で突っ込んできた魔導馬車を片手で止めてたぞ?」
「ワイバーンの炎の直撃を受けてもご主人様は平然としていたとか。」
「バケモンかよ・・・しかし何で出来てるんだこれ?」
「俺の装甲はナノマシンで形成されてる複合装甲だ。表面は流体金属といって衝撃を受けた瞬間に硬質化し最大限の防御力を生む。」
「ナノマシンだぁ?」「それはな・・・」
そうして俺の変身した姿談義が二人の間で延々と始まり、暇を持て余したルリコとミサキがさっさと工房を出ていってしまったことに気づいたのは数時間後の事だった。
「ご主人様、わたくしは如何に暇でも耐えられます。」
「すまん。」
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