第33回 豪快なドワーフは酒が好き

なるほど、盗賊団はお頭を取り返すため挑んでくるでもなく退散したようだ。案外腰抜けの集まりなのかそれともコイツが人望など皆無なのか。


あれから俺たち一行は特に労することも無く護衛任務を終えて今も噴煙上がる活火山の麓にある炭鉱都市バッカスへと辿り着いたのだった。到着したのは夕方、さっさとギルドに向かわないと閉まってしまう可能性もある。


都市の様子はマグラスの里ともセルゲイの街とも全く雰囲気が違った。何処ともなく周囲からカンカンと金槌を振るう音が聞こえ、ガハハと笑う浅黒く日焼けした鉱山夫達が通りを行き交っている。

さて、まずはクエスト完遂の報告と盗賊撃退の証拠お頭を提出しないとな・・・。

とりあえずゼロムキャリアーはまた絡まれないようにしまっておこう。


「一先ずはここのギルドがどこにあるか教えてくれなないか?」

「了解しました、この時間は酔っ払いどもも出始めるからお互いに気をつけましょう。」


察した。

恐らくここの冒険者ギルドは酒場なのだろう、バッカス豊穣と酒と狂乱の神とは上手いことを言う。

酒場か・・・あまり得意でないな。



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「いらっしゃいませ〜♬︎ようこそギルド&バー、ポレポレへ!」

「「ようこそ〜〜♪♪」」

「は?」


タトルさんに連れられ到着した場所にはしっかり看板に酒場・冒険者ギルドバッカス支部と書いてあった、その下に書いてあった店名はやたら可愛らしい文字で【ポレポレ】。

中には酒場らしく樽で出来たテーブルやオブジェなど飾ってあるが古臭かったり汚いといったイメージは無い。

そしてウェイトレスがやたら明るいためか悪酔いしたりしているような客・・・冒険者の姿も見当たらないようだ。彼女たちは共通のフリフリしたミニスカートの制服でとても楽しそうに接客している。


「なんか楽しそうなとこだねぇ~。」「オレお腹空いた!」「なんだか可愛い酒場ですねぇ・・・。」

「・・・まずはクエストの報告だろ。」


こういった所はよく絡まれるようなイメージしか無かったがここまで悪い酒場のイメージを払拭してあれば一般人や駆け出しの冒険者なども利用しやすいのだろうか?

そんなことを考えながら受け付けカウンターへ向かった。


「はい、いらっしゃいませ♪♪こちらはギルド&バーポレポレのギルド側です~。」

「ああ、護衛依頼の達成報告と盗賊を撃退した報告をしたいんだが。」

「はいはい~って盗賊ですか?」「ああ、黒傘団とか名乗ってた。」

「マジですか!?しょ、少々お待ちくださいね!」


そう言って受付嬢は慌てて奥へ引っ込んでいった。よくわからんがさっさと終わらせたいんだが・・・。

そうしてしばらくすると先程の彼女が自分より小さな女の子を連れて戻ってくる。


「お、おまたせしました!コチラの方ですギルド長。」

「なんだよ飯時に呼びつけやがって・・・黒傘の連中をコイツらが見たってのか??」


ギルド長と呼ばれた彼女は・・・エルフでは無いのだろう、特徴的な耳は短いが赤い瞳でをこちらをまじまじと観察してくる。肌は浅黒く、ジオと違って日焼けした印象を受けた。少しふっくらしたズボンとサラシだけ巻いた胸元、上着こそ羽織っているが袖は通さず肩に引っ掛けている感じである。ピンクブロンドの髪をポニーテールに纏め、耳の上辺りから左右に立派な角が生えていた。


「・・・真っ黒な格好にメイドとアラクネに変わった格好の女を連れた四人組・・・ああ、お前らがジオの奴が言ってた魔人の英雄か?」

「英雄かは知らんが魔人とはよく呼ばれる。」

「活躍は聞いてるぜ、んで黒傘団まで倒したってか。」

「ああ、大体は倒してそのまま周りの木に縛ってきてしまったがお頭だけは捕まえてきた。ルリコ、連れてきてくれるか?」

「はいよー。」

「いや、店の景観に関わるから俺が見に行こう。」


そうして彼女と連れ立って外に置いてあった馬車まで行くとルリコがお頭を剥がしてその場に転がした。


「なるほどな・・・報告にあった通り黒い傘の刺青に眼帯、右腕の犯罪歴とコイツは間違いねぇようだ。」


その後お頭はギルド長の呼んだ騎士団によって連れていかれた、その際俺は後日報奨金を渡すので詰所まで来て欲しいと騎士のリーダー格の人に言われる。


「流石は魔人とまで言われる奴らってとこか、おっと名乗り遅れたな俺はここのオーナー兼ギルド長のリュウガってもんだ!ヒゲは生えてねぇが立派なエンシェントドワーフよ!!」


その後俺たちはタトル親子と別れ、気分がいいからとリュウガさんから食事に誘われたのだった。



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「ほぉ〜〜世界樹の果実をねぇ!俺も食ったことがあるぞ、今じゃこうして冒険者からギルドの経営に回っちまったがあそこのダンジョンは俺も70階層まで行ったからな!」

「じゃあ50年前の到達者ってリュウガさんだったのか!?」

「さん付けなんざ要らねぇよ、蜘蛛っ子!気軽にリュウとでも呼びな。」


ドワーフとは怪力と繊細な鍛治能力を宿した種族である。

男女共通して頭に二本の角が生えており、女性は身体こそ小さいが立派なたわわがある。男は2m前後の巨体で筋骨隆々の献体であることが多いようだ。

一般的な人族と違い男女間の力の差がなくむしろ女性の方が強い力を持っており、前述した鍛冶師を生業とするものが多く種族の大半は炭鉱や鉱山の近くに住むという。


「俺は元々SS級って呼ばれた冒険者でな、昔は世界をまたに掛けた大冒険をしたもんよ!こう見えてエンシェントドワーフでな、いくつかは忘れちまったがハイエルフと同じくらいは生きてるだろうよ!」


気分よく酒を煽る彼女に付き合ってその日は深夜までそれまでの旅の話が順調に肴として消費されていったのだった・・・そこからはよく覚えていない。

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