第29回 光り輝く果実
「壊さなきゃいいんだよな?」
ゼロムドライバーを展開、そこへ即座にレイドカードをスキャニングし俺は仮面レイダーZEROMへと姿を変えた。
いつものようにユニコーンの仮面が顔に装着される。
「変身する姿をまじまじと見たのは初めてです、美しい・・・はっ、ご主人様どうなさるおつもりですか?」
「こうするんだよ、」
そう言うと更なるレイドカードを取り出してスキャンする。
『チャアアアアジングゥペガサァアスッ!!』
ゼロムドライバーが吠えると同時に更なる力がウィンドスタイルとなった俺に加わる。
これは左手にもカードスキャナーとなる篭手と背中に天馬の翼を装着する、所謂強化フォームというやつである。
その名を仮面レイダーゼロム ウィンドチャージ。
まあ、今回は窓から外に出て飛んで空から世界樹を調べるためだけに変身したんだがな。
そうして俺は久々に自分の翼で空へ飛び出したのだった。
「・・・今更ですがご主人様がたの変身には必ずあのベルトが叫ぶのですか?」
「叫ぶよ?最近じゃちょっとスカッとするかな。」
「もし将来オレも変身できるようになったとしてもあの声はちょっと・・・。」
・・・聞こえてるからな?
この階層まで昇ってくると流石に外には大きな枝が茂っていた。
世界樹はある一定の高さまでは枝が生えておらず、その
一枚一枚が抱えるほどの大きさであるその葉はたまに落下するものを専門のトレジャーハンターが動き入手するのだが、滅多に落ちるものでもないのだ。
【世界樹の葉】は巨大な世界樹の生命力を生産するためだけあって、恐ろしい程の魔力を秘めているという。それは死者をも蘇らせるという噂が広まる程で、俺も研究者の端くれとして2~3枚は手に入れたいところだ。
しかしよく見れば俺以外になにか飛んでおり、急に現れた
「・・・人間にそのまま羽が生えている??」
「何者だ貴様!」「神聖なる世界樹を・・・ホントに何者だ??」
それはハーピーとも呼ばれる腕と太ももから先が鳥の亜人種だった。
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「人間だったのか・・・。」
「そうだ、俺は戦う意思は無い。」
「そんな魔人のような姿をしていてか!?」
「俺は仮面レイダーゼロム、ハヤト・獅子王だ。」
枝の一本に降り立つと首から上だけ変身を解除してみせる。
「変わったスキルを持ったやつだな・・・お前はどこからやってきたのだ?」
「世界樹のダンジョンを下から登ってきたんだ、70階層まで来たが何も無かったからこうして外を調べようと飛んだのさ。」
頭を元に戻すとハーピーの一人が降りてきてくれた。オーガと違って話す余地はあるようだな。
「は、ハーピーだって?!」
「ん?そんなに珍しいのか?」
ハーピーの男を仲間たちの元へ連れ帰るとルリコが素っ頓狂なの声を上げた。
「我々の存在はこの里じゃハイエルフくらいしか知らないだろう。」
「オレも初めて見たよ・・・ハーピーはな、聖域を護る伝説の種族とされてるんだ。まず地上で見かけることはないと思うぞ。」
「世界樹は聖域である。故に古くから我々は女神によってここを護るよう遣わされているのだ。」と彼は誇らしげに翼となった右手を胸にあてる。
「魔人どのは分からぬかもしれんがこの世界樹の葉や花、そしてその果実はその豊潤な魔力を宿しているのだ、我々はそれをこの世界の魔素が不足しがちな土地へ届ける役割を担っている。」
「そうだったのか・・・ちなみにこのダンジョンのことは何か知らないか?この階で最上階なのか?」
「詳しい回数は知らぬがダンジョンとしての最上階はここで間違いない、そらそこにダンジョンコアが輝いているだろう?」
「これだったのか!?」
彼が指さしたのは天井の例のクリスタルだった。
なるほど、ダンジョンコア=魔石と思い込んでいたからどこかに安置されてるのかと思ったらこの巨大な水晶がそうだったのか・・・。
「そっかぁ、オレたちは既にダンジョンコアを見つけてたんだね。」
「ボスもいないからわかんなかったよ~。」
「ボス?ああ、この階にいた大型魔物は我々の主食である。我々は基本的に世界樹の魔力を分けてもらって糧としているがたまには肉も食いたいのでな、魔物が出現するとすぐに狩っている。五日に一度出現するが最後に倒したのは昨日でな、あと四日は現れないだろう。」
「・・・謎は解けたな。」
俺たちは帰り支度を始める。
少しガッカリしたが最上階までクリアしたのだ、その点は満足だ。
ちなみに最上階のボスは飛行する巨大な蜂の魔物らしいがハーピー達とは絶望的に相性が悪いらしく彼らによって数人であっさりと狩られてしまうのに加え、肉が(彼らにとって)美味いとのことで。
と、窓の外を見ると彼とは違うハーピー達がなにか大きな丸いものを抱えて飛んでくるとテラスのように張り出した場所へそれを置いて飛び去っていった。
「これはダンジョンを制覇した上にコアには手を出さなかった貴殿らへの礼の品だ、是非持ち帰ってくれ。」と言って彼もその姿を空へと消したのだった。
「贈り物かぁ・・・って何だかいっぱいあるんだけど!?」
それらははボス級魔物産であろう様々な素材に大きな魔石が複数個置いてあったのだ。その量は数回から数十回は倒さなければならない量で、なるほど可食部位は全てハーピーが食べるのだろうがそれ以外は要らないということなんだろう。
そしてその中心にあったのは二人で抱えても手が触れないほどに巨大な真っ赤な果実だった。里で食べたどの果物とも様子が違うがとても美しい。
「は、ハヤト・・・それが世界樹の実だ!!トレジャーハンターの夢だぞ!」
「そうなのか、食えるのかコレ?」
「果実なんだから食えるだろ・・・じゃねーよ!そんな恐れ多い真似できるかぁ!!!」
ルリコがツッコミに回るとはそれほど貴重なものなのか・・・ならば今夜の飯はこれに決まりだな。
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