第20回 酒は飲んでも呑まれるな
それからすぐに身なりのいい男とジオ、それからさっきのクソg・・・ブタドンとアンコダマだったか?がSPのような大柄の男性二人に挟まれて檻の前にやってくる。そして衛兵の一人が鍵を開けてくれた。
「大変申し訳ありませんでした!!」
「オヤジ!?なんでこんな底辺冒険者なんかに頭下げてるんだよ。」
「お前は黙っていろ!」
そして男は俺に向き直るとさらに頭を下げてきた。
「この度は我が息子が大変横暴かつ失礼な真似を、私はこの街の商会であるアンドロメダの会長を務めているビブロス・アンドロメダと申します。暴走し操舵すらままならかった魔導馬車を止めてくれたお相手に対してあろう事か暴言三昧の上亜人種のお嬢さんには奴隷などという差別まで行ったと聞きました。」
「馬車はワシが調べておいたぞい。ハヤトらが捕まったあと何故かすぐさま修理に出されておったからな、店のものに聞いたら壊れているのは窓ガラス以外には魔導機関のブレーキが破損していたらしい・・・原因は経年劣化、明らかに事故前からじゃから長らく整備されておらんかったようじゃ。」
「ぐぬぬ・・・。」
「そうか・・・じゃあ窓ガラスの修理費を教えてくれ、俺が止めた拍子に割れたようだったからな。」
「滅相もございません!貴方は我が臨海都市を護ってくださった英雄のようなお方ではありませんか!!本来であれば私めの方からも報奨金が出てもおかしくありませんのに修理費などと・・・。」
要するに情報の行き遅れで俺がバイトシャークを仕留めたという話がビブロスさんの元へいくのが遅かったとのこと。
旧知の仲であったジオが彼の元を訪れ事の顛末を伝えると一気に青ざめ、部屋でくつろいでいた息子を執事に捕まえさせてここまでやってきたとのことである。
「聞けば衛兵も息子から金を受け取ったあげく、私の名前で随分と自由にやっていたようなのです・・・母を早くに亡くした息子をどうやら私は甘やかしすぎてしまったようですな。」
「して、どうする気じゃ?」
「彼は商会の下働きとして再教育をしっかり行う予定です、しっかりとな。」
「そ、そんな・・・。」
なぜ彼がこんなに青ざめてるのか俺にはわからなかったが、後日海運会社の人足というものが作業機械などが無い時代は如何にキツい仕事であったかを目撃することになるのである・・・しかしこの時と違って玉の汗を浮かべて良い顔になっていたので結果オーライかもしれない。
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そしてギルドに戻った俺の元にメズールより商会からバイトシャーク討伐の報奨金と迷惑料に加えて豪華な海鮮食材の盛り合わせが大型の荷車ごと届いていると聞かされるのだった。
「凄いなこれは・・・見たことも無い食材ばかりだな・・・。」
「お主は元から知らんのだろう?」
「それにしたってどれもとても新鮮でキラキラしてて美味しそう!料理って突き詰めると材料もすっごい高値になるって聞いたことあるし。」
「そうだぞ!オレも食ったことないようなのばっかだ!」
「ではこの食材を使わせて頂きギルドを上げての討伐祝勝会を行わせていただきますわ!ハヤトさん達もろくに今日は食べていないのでしょう?今夜ばかりはギルドを貸し切りという形でおもてなしを堪能くださいね。」
「それは楽しみだ。」
少し晩飯には遅い時間となったがギルドを上げての祝勝会はフルコースの食事という形式だった。
ただし、通常のソレは一皿ごとに出てくる量は少ないものの調理の手間のかかった逸品でその他にも様々な料理をビュッフェのように食べられる自由度の高い晩餐である。
「はぁ~~♡すっごく美味しい!!」
「このブイヤベースとかいうスープは様々な食材が入ってるのに互いを害せず一体感が生まれている・・・これも黄金比と言うやつなのだろうか・・・。」
「この寿司ってやつすごく美味いぞ!一口で食べれるからいくらでも食える!ウニが特に美味い!サーモン大好き!」
「ワシもこんな美味い海鮮は初めてじゃ!この牡蠣こそいくらでも腹に入っていくぞ!」
「コースとはいいましたがお代わりも多分に用意していますわ、満足いくまでお食べ下さい。」
その日はこの世界に初めて来た日以来のたっぷりと料理を堪能した・・・
食べきれない分の食材・料理は全て俺の次元収納内にしまってあるからこれでいつでも食べれるな!
「これが刺身か、生で食べても美味いのだな・・・この醤油って液に付けるだけで旨味が広がっていく。」
「ボンゴレスパゲティ最高~♪♪カラは食べれないけど中身が味が凝縮されてる感じ!」
「ミサキもこの焼いたホタテってデカい貝食べてみろ!めちゃくちゃ美味いぞ、ステーキみたいだ!」
「酒に合うのぉ~♡」
「ささ、大叔母さまもう一杯どうぞ。」
メズールとジオは酒を飲んでいるらしい。
俺は酒が飲めない、飲んではいけない年齢というよりも口にしたことはあるのだがどうも体に合わないようだ。研究所や大学の仲間と飲んだことはあるがだいたいは途中から記憶がなくなり気づけばベッドの上というのが常だった。
「お主らは呑まんのかぁ?」
「俺はいい、楽しんでくれ。」
「仕方ないのう、昨今は強制するのもマナー違反というから世知辛い。」
「飲めない子に無理やりはダメだよ!」
「オレは少しなら欲しいぞ!その赤いのくれ~。」
「赤ワインですの?仕方ありませんわねぇ。」
・・・最終的には俺以外の女性陣が全員飲んでいた、そしてグデングデンになったルリコがひたすら俺にベタベタしてくるのをミサキが剥がすというループがその日一日続くことになる。
コレも含めて酒は苦手なのである。
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