第18回 あわや人身事故だったぞ
その後素材を回収して帰ってきた俺たちは・・・ジオの前で正座していた。
「あのように言ったワシも悪いとは思うが・・・まさか本当に地形を変えるなどと思わんじゃろうが!!」
「すまん。」
結論から言おう、俺のファイナルアタックは海底に大穴を開けてしまった。
港から10数キロ離れた場所とはいえ海運に少々影響されるかと懸念したがメズール曰く、その場所なら特に問題は無いと言う。
大破壊の及んだ海底は元々地下を流れていく水流があったらしく、その大穴に水が落ちていくさまはまさに海の中の滝といった景観になったらしい。
メズールさん的には観光名所になり得るとのこと。
「今度こそファイナルアタック禁止じゃ!ワシの判定が出ぬクエスト中にもし使ったとわかったら冒険者活動の停止を言い渡すからの!!」
「大叔母さまはギルドの職員では無いのに越権行為ではないかしら?」
「うっ・・・。」
「とにかく三人とも足を崩してちょうだい。そしてこの度は臨海都市セルゲイのギルド支部長としてお礼を言うわ、街の危機を救ってくれて有難うございます。」
メズールからの最大限の礼を受け「当然のことをした迄だ。」と返す。
ジオはバツの悪そうな顔はしたものの許しは得れたようである。
「ではここからは報酬の話に移らせてもらうわね、もし貴方たちが襲撃に間に合っていなかったら海底ではなく街に大被害が出ていたでしょう。なのでこれはS級緊急クエストとして扱わせてもらうわ。」
「S級?」
「S級とはそれこそこの大陸を治めている王宮から発せられる国家級の緊急依頼という扱いになるということじゃ。報告によればあのように危険な種の魔物こそ大昔は【魔獣】と呼ばれ恐れられていたらしい。」
「そんなに危険だったのか?」
「ハヤトさん達はあっさり倒しちゃったみたいだけど本来であれば武装した戦艦を数隻使って討伐出来るような相手ですのよ【バイトシャーク】は。しかしそれは並のサイズだった場合の話。ルリコさんの報告からアイランドホエールと比べて遜色のない大きさだったというのは聞き及んでいますわ。」
アイランドホエール、別名島クジラ。
その巨体はまさに背中に島として人や魔物が住めるほど巨大な魔物である。しかし本来であれば人を襲うのが魔物である筈がアイランドホエールはかなり温厚な性質を持つようで、背中に振動すら与えぬほどゆったりと暖かな海流に乗っている姿は信仰すら集めるほどだという。
俺の倒した大型バイトシャークは島クジラの幼体に匹敵する巨体だったという。
「はっきり言って異常な成長ですわね・・・。そのような例は聞いたことがありません。故にハヤトさんへの報酬は500万ゴルドとさせて頂きます。」
「そんなに!?」
「それはもちろん素材代を含まず、です。サメの肉は臭みがあり普通の魚として食べるには難しいですが魔石や各素材の価値はとても高いです。もし全て提供して頂けるのでしたら報酬は倍となりますわね。」
「たしかにあの巨大な魔石は喉から手が出るほど欲しいのう・・・。」
持ち帰った魔石はサイズで言えば普通の車程はありかなりの大きさだ、普通は
正直に言ってこんな大きさじゃ何に使うにも持て余しそうではあるが。
「ジオちゃん、魔石って魔道具を使うのに動力源にしたりするんでしょ?肝心の本体より大きかったら使い物にならないんじゃない?」
「良いところに気づいたな、通常の魔導家具や魔道具に使うには土台無理だろうがその場合はこうするのじゃ。」
と、自分で持っていたのであろう大きめの魔石を取り出してみせるジオ。これもやはりサイズ的に普段使いする魔道具などには使えないだろう。
「【
「こうして使うのじゃ、収縮を掛けた魔石は大きさこそ変動するがその魔力含有量に変化は無いからのう。」
「今の俺たちには活用手段がないからな、やはりサメの魔石はメズールさんに預けるよ。」
「ありがとうございます、ではお支払いの準備を。」
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その後まとまったお金が入ってきたので!とミサキに連れ出され「せっかく新しい街に来たんだからショッピングがしたい」とのこと。ついでにとルリコまで連れてこられている。
「仕方ないなぁーオレの拠点はここにもあるから案内してやるよ!」
ノリノリである。
そういや腹が減った、今日は突然サメが出たから昼がまだだったんだよな。
「それは何か食べてからにしないか?」
「そういえばそうだねぇ、ルリコちゃん奢るからお魚美味しいとこ教えてよ!」
「そかぁ?じゃあ行こうぜ!」
と、俺の前を歩いていた彼女がこちらに振り返った直後にルリコ目掛けて馬のいない馬車が突っ込んでくる。
ガシャアアアンッ!!
危ない危ない。
俺は咄嗟に変身し、彼女を自分の方へ引き寄せると馬車を片手で押さえ付けた。窓ガラスなどは割れてしまったようだが一人の少女を救えたのだ、小さい犠牲であろう。
「あ、ありがとな・・・オレあれくらいなら平気なのに・・・。」
「身体を鍛えている冒険者とはいえ不意を突かれれば怪我じゃ済まないだろう、気をつけた方がいいぞ。」
「おい!なんだ貴様、ぼくちんを誰だと思ってる!!」
「ん?」
「ヒッ、化け物!?」
馬車のドアを開けて降りてきた男は、いや子供か?第一声から声を張り上げてきたが俺の姿を見て少し怯んだようだ。変身を解いておこう。
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