第10回 緊急クエスト発令!!

「ああ、いたいた!里長さま、緊急事態です!!」

「・・・昨日今日となにか起こりすぎではなかろうか?」


里のカフェテラスとかいう軽食や紅茶を専門に提供してくれる店の軒先で一呼吸していた俺たちの元にギルド職員のリリムさんが走り寄ってきた。あれから娘のサラは見かけていない気がするが元気だろうか。

彼女は息を整えながら報告書のようなものをジオに渡した。


「何かあったんですか!?」

「ああ、ハヤトさんにミサキさんもご一緒だったんですね・・・ハァハァ・・・実はアトラスダンジョンからのSOSが入ってきたんです!!」

「さっきジオに聞いたどこぞの国の調査団というやつか?」

「・・・お話が早い。実はダンジョンへ挑む際は発信機となる魔道具のリングを必ず所持する義務があるのです。」


それは緊急の場合、引き千切ることでギルド本部へ挑戦パーティの危機を伝えることが出来る便利なアイテムだと言う。具体的な機能はわからないが恐らくは雷系統の魔石を使っているのだろう。

雷か・・・。


「確か主な戦力は里にいないんだったな?」

「あ、ああ。しかし一番の問題は件の調査団は65階層にいるということなのじゃ。」と紙に目を落としたジオが呟いた。


「意外と攻略がスムーズに進みどんどん上へ上へ進んでしもうたんじゃろう、そこまで高い場所となるとお主の鉄の馬ゼロムストライカーに乗って空を飛ぶにしてもワシやミサキまで一緒にという訳にも行くまい?」


言外にもう乗りたくないと伝わってくるが確かにアレは猛スピードで飛行するため変身した俺かミサキでなければ無理だろう。

ならばで行くか。にやり。


「・・・ワシちょっと嫌な予感がするんじゃが。」

「大丈夫だよ~私が運転するから♪」

「運・・・転?」



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「いーやーじゃああああああああああああ!!!!!!!」

「うっせぇわ!」

「ジオちゃんちょこっと我慢してね~もちょっと加速すればすぐ着くからね!」

「あああああああああ!!」



【〇】☆緊急クエスト☆世界樹アトラスから調査団を救出せよ!!【〇】



凄まじい煙を立ち上らせがら大樹を爆走している一台の【車】。

今俺たちが乗っているのは巨大な八つのタイヤを持つ装甲車【ゼロムキャリアー】である。

俺はゼロムドライバーの次元収納から装甲車を召喚し、ミサキの運転のもとアトラスの大樹の外壁を垂直に走行し登っていた。

これは重力制御によって幹にタイヤを押し付け、車体自体は上昇気流を纏わせているためこのような芸当が出来るのである。


「~のである。では無いわ!!お主らが規格外というのはわかり始めていたがこんなゴーレム馬車の化け物まで持っているなぞわかってたまるか!!」

「なんだそれは?」

「魔石によって駆動する馬無しの馬車、ってそうではなく!」

「あ、オートバランサー忘れてた☆ちょっと待ってね、振動収まるはずだから。」


ポチッと運転席のスイッチを入れると途端に車体の揺れが静かになっていく。


「・・・始めから使ってくれ・・・、さて、まだ到着まで時間がある、ワシにも理解できるようお主らの身の上を教えてくれぬか?」

「了解した、ではどこから話していいものか・・・全部だな。」

「割とあっさり教えてくれるのじゃな?」


そうして俺はジオにことの起こりから俺たちが死ぬまでを語って聞かせるのだった。



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【中略】(一章の最後に閑話として投稿予定)


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「なんともはや・・・運命の女神というものがいるなら相当過酷な運命を引いてしまったようじゃな・・・樹木どころか生き物という生き物が滅んでしまった世界など想像もつかんわ。しかしそれならば料理を初めて食べたなどというのも納得いく。」

「俺のバイクもこの装甲車も次元収納に入れてそのまま持ってこれた物の一つだ。ミサキの愛読書的には普通は転生などという大層なものをしたらなにか持ち込むなんてことは出来ないんじゃないのか?」


「まあいいんじゃない?この世界にわたし達が来たのもなにか神様の思し召しかー、世界を救ったっていう事へのボーナスかもしれないよ?」


さすがどこにいてもポジティブだな・・・。


「む、そろそろ目的地のようじゃぞ。あの大きく開いたうろならこの車も入れよう!」

「よーし、振り落とされるなよー!」

「やっぱやめるのじゃー!!」



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●生還した後の調査団メンバーの手記より抜粋


俺たちがヤツに追い詰められてこれ迄かと死期を悟った時にその化け物が現れたんだ・・・。

信じられるか!?それは轟音を響かせながらアトラスの世界樹の外壁を垂直に登ってきたんだ!!

それは決して諦めムードから見た幻覚じゃない、鹿なんて荒唐無稽な説明しか付けられん!

まあ・・・その後気を失った我々は目覚めた時にはマグラスのギルドに寝かされいたのだから夢と一蹴されるかもしれない、だが俺は見たんだ!信じてくれ!!

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