第3回 変身、そして驚愕
「きゃあああああああああ!!」
「GUOOOOOOOOON!!!」
それは野生生物と言うには大きすぎた。
それは野生生物と言うには異質すぎた。
それは野生生物と言うには明らかに人に似通って いた。
端的に言ってクマである。
だが体格や姿勢その挙動はあまりにも人に近く、3m近い人間が熊の着ぐるみを着ていますと説明された方がまだ納得がいくだろう。
加えて口を開く度にチロチロと覗くのは舌ではなく炎だ。そして体毛も燃えるように赤い。
そう、あまりにも生物として俺の知識上のモノから離れすぎている・・・。
そんな存在を俺は助けを求める声に駆けつけたついでに蹴り飛ばしてしまったんだが。
首にイイ角度でドロップキックが入ったのだからもう立ち上がって来れないだろう。
「うわあ・・・えげつなァ。」
「仕方あるまい、少女を襲っていながら傷つけられる覚悟が無いなんてありえんだろ。・・・大丈夫かお嬢さん。」
と、膝を着いて彼女の目線に合わせた後に手を差し伸べる。
・・・なんというか・・・目の前で強大な捕食者を横から蹴り飛ばされたのだ、普通ならこうして腰を抜かしても仕方ないだろう。
「あ、ありがとうございます・・・あなた方はどなた様ですか?」と彼女は俺の手を取りながら立ち上がると小首を傾げて問いかけてきた。
改めて彼女の様子を伺う。
腰まで伸びた三つ編みの髪、その色はとても美しい翡翠色で俺を見つめる・・・恐ろしいものを見る目は少し赤みがかった茶色でとても均整のとれた顔立ちをしている。誰かさんの好きなスクールアイドルだかと比べても遜色無いだろう。
体格はまだまだ少女の域を抜けきれていないらしく、整ってはいるがミサキと比べれば可愛いものであった。
そして何より際立つのはふるふると震えている人とはあからさまに違う長い耳が横に伸びていた。後ろで「エルフ!?まさかエルフなの?」とさっきからうるさい奴がいるがそれもアニメ知識なんだろうか。
「ああ、俺は獅子王ハヤト。・・・さっきの獣、熊は一体?」
「あっ、私はサラっていいます!もしかしてお兄さんたちはフレイムベアーを知らないんです??」
「フレイムベアー。」
名は体を表す、というやつだろうか。
「ええ、この辺りに出てくることは今の時期珍しいので慌ててしまって・・・本来ならB級冒険者が5・6人でパーティを組んで討伐する魔物なのに、シシオーさんはお強いんですね!!」
またツッコむべき俺の知らない単語が二つも出てきてしまった・・・冒険者?魔物??
「こんにちわ、私はミサキ・周防っていうの。ゴメンね、私もコイツもちょっと田舎から出てきたばっかりでこっちの地方はあまり詳しくなくってね・・・あとコイツの名前はハヤトよ。」
「ハヤトさん、ですね?やはり狩人さんとかだったんでしょうか。」
そしてミサキは小声で「彼女から情報を手に入れましょう」と囁く。
なるほどそれはいい考えかもしれない・・・先にやるべきことはあるようだが。
ズゥゥゥンッ!
「GURAAAAAAAAAAAAAAAA!!!!!」
「ヒイッ!!」
先程倒れた熊、フレイムベアーとやらがその巨体にもかかわらずその場で跳ねて着地、そのまま咆哮したのだ。
そして明らかに折れていた首をゴキッと良い音をさせて元に戻したようだ、やはり中身は人間なんじゃないか?
「魔物っていうかあたし達の知ってる怪人っぽくない?」
「・・・俺もそう考えていた。ならばとる手段は一つだろう。」
俺は上着を脱ぎ捨て両
これは長年俺と連れ添ってきた体内のナノマシン群体を制御する装置である。
これ無くしては俺は人として生きることも出来なかったであろう・・・だが同時にこの身を忌まわしい呪い同然に縛り付ける鎖でもある。
「ハヤトッ!」
「応ッ!!」
そしてミサキが投げてきたカードをキャッチするとゆらりとフレイムベアーへと歩き始める。
もちろんそんな挙動をとれば相手もこちらに駆けてくるのは必定。
俺はそのまま仮面の戦士のバストアップが描かれたカードをベルトへ
「変身ッ!!!」
鬨の声を上げた俺を更なる光が包み込むと同時にゼロムドライバーからサファイアのように輝く魔法陣のエフェクトが放たれ軽快な音楽が流れ始めると駆け出そうとしていたフレイムベアーは見たこともないその異様にたたらを踏んでしまい、更には魔方陣に弾き飛ばされその場にひっくり返ってしまった。
そのままこちらへ戻ってくる五芒星をゆっくりと抜けた俺の姿はカードに描かれていた仮面の戦士、【仮面レイダー
白銀の騎士のようなアーマーが幾何学模様の走る黒いボディスーツの上に装着されていき、緑色の光は形を為して鎧の各部に収まっていくとそこには幻獣ユニコーンの意図を持ち輝くマフラーをたなびかせた戦士の姿があったのだ!!
『カァメンレイダァアアアアッゼロムゥッ!!ウゥインドォスタァァイルッ!!!』
「・・・ミサキ、俺のベルトはこんな奇声を今まで放ってただろうか。」
「・・・放ってなかったね・・・変身音みたいなものは今までも流れてたけど。」
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