はじめてだらけの『ソードワールド2.5』

ふぁぶりーず

チュートリアル:ゼロ


 いまだ新型コロナウイルスが猛威をふるう2021年春。都内某所にて、実に七年ぶりの再会となる面子が顔を合わせていた。


GM「やあやあ、お久しぶり。呼び集めた自分が言うのもなんだけど、よく来たねぇ」

ヨダカ「まったくです。なにもこの時期じゃなくてもよかったのに」

ニク「私はみんなに会いたかったし、お誘いが来たときは嬉しかったよ! けど、もしかして今日の参加者って……」

GM「うん、ボクたち三人だよ。まあ正確にはボクはGMだから、参加者って意味ではキミたち二人だけ」

ニク「……や、やっぱり」

GM「一緒にTRPGを遊んでたメンバーには声掛けたんだけどね。ヒョロくんは転勤で栃木、オモチさんは子育てで忙しいって」

ヨダカ「のこのことやってきたのは、私たち二人だけだった……ということですね」

ニク「ってか、そもそも二人だけで大丈夫なの⁉ 初遭遇のゴブリンに殺されるとかぜったいイヤだよ!」

GM「まぁPT(パーティー)バランスはNPCを入れればなんとかなるけど……それも味気ないしなあ。ちなみに二人は、『ソード・ワールド2.5』は遊んだことある?」

ニク「いえ、まったく!!」

ヨダカ「2.0を遊んだくらいです。七年前のあの頃に」

GM「そっかそっかあ。大丈夫、安心して。ボクも昨日ルールブック買ったところだから」


「「はい?」」


こうして、はじめて(そして間違い)だらけの、やけっぱち『ソード・ワールド2.5』の幕開けとなる。


*****


【メンバー紹介】


GM(通称メガネ)

アルバイト時代から所属している声優事務所で声の仕事を務める三十代男性。いまは声優一本で食べているというから、上手くいっているのだろう。


PL:ニク/キャラクター:ミーア

アニメ制作のデスクをこなす二十代女子。飲み会への出席率は百パーセント。担当アニメのスマホゲーをやりこみすぎて「ちゃんと仕事してる?」と先輩に突っ込まれるのが悩み。


PL:ヨダカ/キャラクター:ロンド

出版社の編集を経て、現在はゲーム会社に勤める二十代女子。TRPGやボードゲームが好きなわりに、人と関わることが苦手。D&D5e「魂を喰らう墓」のキャンペーンに参加中。



(この物語は実際に遊んだプレイをもとに、大胆なアレンジを加えて執筆しています)

*****


 物語の舞台となるのは、アルフレイム大陸の南西に位置する、数百人ほどが暮らす小さな村。都市をつなぐ街道から離れているため、村人たちは自給自足を基本とした穏やかな暮らしを営んでいる。

冒険者になったばかりのミーアとロンドは依頼を受けるべく、村にひとつしかないギルドに訪れていた。


ミーア「よぉーし! はじめての任務かもーん!」

ロンド「……とりあえず肩慣らしに、村の外にでます」

ミーア「ちょ、ちょっと⁉ 依頼を受けるのが先でしょ!」

ロンド「? 私は先に魔物を倒したいので、指針が違うようであれば、別行動でお願いします」

ミーア「うう、自由すぎるよ……」


 無表情のまま「それでは」と言い残して扉から出ていくロンドを見送りながら、ミーアは大きくため息をついた。開始二秒でパーティ解散なんて、最短記録かもしれない。


ミーア「それで、あたしでも受けられそうな手ごろな依頼ってあります……?」


 くるりと振り返えると、受付らしき机から白茶の獣耳がにょきっと生えた。それが左右にふわふわ揺れたかと思うと、机の向こうから獣耳の少女が顔をのぞかせた。


受付娘「アア、そこにいたんですネ! 小さいから見えませんでしたワ」

ミーア「はは……グラスランナーってめずらしいのかなあ」

受付娘「そンで、おたくは依頼をお探し中?」

ミーア「あ、はい! まだ冒険者になったばかりだから、簡単なものがいいなって」


受付娘「ふぅ~ん」


 受付娘は値踏みするようにミーアを下から上まで見たあと、「おたく、ひとり? 仲間いないノ?」と尋ねる。


ミーア「さっきまではいたというか、なんというか」

受付娘「いるノ? いないノ?」

ミーア「いません!!」


 やけっぱちの大声で答えるミーアに憐みの目を向けると、受付娘は力なく首を振った。


受付娘「正直に申し上げて、吟遊詩人ひとりでこなせる依頼、ありませんネ」


 ……え?

 思わず自分の耳を疑った。依頼がない? そんなことあるの?

 あたしもTRPG経験多い方じゃないけど、普通依頼って向こうからやってくるよね?

 村人やギルドから「どうかお願いします」って頼み込まれて、どうしよっかな~受けようかな~(チラッ)ってとこまでが冒険の醍醐味じゃないの⁉


ミーア「ええと、ギルドってあらゆる冒険者に対応できるクエストを用意してるんじゃない……の?」


 おずおずと獣耳の少女を見上げると、相手は露骨に不快そうな表情を浮かべてミディアムボブの髪をさらりとかきあげた。


受付娘「ハァ……。たまにいるんだヨネ。依頼があって当然ってヒト。冒険者は神様みたいな態度でさァ。こっちも商売なんだから、リスクのあるヒトには依頼は回せないノ。ワカル?」

ミーア「あ、はい……」


 なんであたしTRPGやって説教されてるんだろう……胸に飛来した虚無感をどうにか抑えて、ミーアはしょんぼりとギルドを立ち去った。必要なのは仲間だ。そして、仲間になってくれそうな人は、ひとりしかいない(ゲーム都合上)!

 

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はじめてだらけの『ソードワールド2.5』 ふぁぶりーず @Mi-Mi2311

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