リーゼロッテの誕生会 1
「エミリアっ、エミリア~」
自室で身支度をしていると、母の叫び声が聞こえてきた。朝からこんなに騒がしいことは初めてで、私は急いで下へ降りようとして、階段の途中でライナーと遭遇した。
「おはよう。ライナー。お母様、どうされたのかしら?」
「おはようございます。エミリア様に届け物がございまして。ちょっと驚かれたみたいです」
「届け物? どなたからかしら」
「それは勿論、リオン様ですよ!」
ライナーは満面の笑みを浮かべている。
これは、リオン様関連の時にしか見られない笑顔。
何が送られてきたのか分からないけれど、私はドキドキしながら階段を降りた。
婚約指輪を頂いてから二週間が経ち、変わらず城でもお会いしているのに、一体何が送られてきたのだろう。
もしかしたら、私では運べないくらい大きな魔法道具なのかもしれない。
そんな事を想像しながら扉を開けると、母が藍色の華麗なイブニングドレスを掲げて悶絶していた。
「エミリア。リオン様がドレスを贈ってくださったの。リーゼロッテちゃんのお誕生日会にご一緒しましょうってお手紙まで添えてあるのよ」
「まぁ。素敵……」
首回りや腕の部分は繊細なレースで出来ていて、スカートには水滴のような丸い小さなガラス玉が散りばめられている。大人っぽくて素敵なドレスだった。
「ああ。どうしましょう。お礼をしなくちゃ。こんな高そうなもの……。凄く高価な物だと思うのだけれどっ!?」
「お、お母様。落ち着いてください」
「そうね。でも、どうしてかしら。リオン様からいただいた物にはお礼をしたくなっちゃうのよね。前の時はこんな気持ちにならなかったのに」
そう言えば、オルフェオ様からもお土産をいただいていたけれど、お母様が喜んだことは一度もなかった。私もだけれど。
どうして、リオン様の贈り物はこんなに胸がドキドキするんだろう。
「あら。リオン様に会いたいって顔をしているわね。取り敢えず。エミリアは早くリオン様の所にいってらっしゃい」
「はい。いってまいります」
◇◇◇◇
工房へライナーと二人で訪ねると、リオン様はいつもの笑顔で迎え入れてくれた。
「リオン様。あの……ドレスありがとうございます」
「あっ。もう届いたのですね。良かったです」
「とても素敵なドレスで……本当に嬉しくて何てお礼を言ったらいいか」
お礼を言ったら、リオン様はお土産に持ってきたパンをくわえたまま一瞬固まり、お茶を飲むと慌てて首を横に振った。
「そ、そんなに気になさらないでください。俺はリーゼロッテ様の誕生日パーティーに、エミリア様の護衛として呼ばれたのです。ですが、兄に相談したところ、家紋入りの服しかないということが分かって、新調することになりまして。それで、エミリア様の分も一緒にご用意したのです」
「そうだったのですね。リオン様もご一緒できると聞いて嬉しいです。私、パーティーは苦手で」
「それならご安心を。あのドレスには防水効果がありますので、汚れる心配はありません。それから、スカートの硝子玉ですが、全部魔石なんです。各々に魔法がかけてあって――」
どうやらあのドレスには、一目見ただけでは分からないような秘密がたくさん隠されているみたい。世界に一つだけしかないドレスを着て、リオン様とパーティーに参加できるなんて夢みたいで、苦手なパーティーが楽しみになった。
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