リオンと謎の令嬢 3

 突然の婚約破棄の知らせ。エミリア様の元気が出る物とリクエストを受けた。あの小箱が頭に浮かんで、引き出しの奥から魔法で手元に飛ばしてプレゼントした。


 凄く喜んでくれて嬉しくて。

 それから二人で街を歩くことになった緊張していたら、あの人が現れた。


 うーん。ああいう人だとは思っていなかったから、正直驚いた。だからルシオ兄様に相談することにした。


「エミリアの婚約破棄が決まったから、国まで戻ってきたのか?」


 兄は呆れた顔をしていた。国を離れて約半年、一度も国へは戻っていなかったから。


 月に一度は顔を見せろと言われていたけれど、毎日、兄とは水鏡で顔を合わせて話していたから、それでいいかと思っていた。水鏡は短時間なら良いけれど、長時間だと結構魔力を消費するので、つい帰って来てしまった。


「はい。あの。俺、もうすぐ十六になるのですが、兄様達のように十五の誕生日の時に婚約者を決めていないと気づきまして。何故でしょうか?」

「父はリオンに研究を続けさせたく先延ばしにしていたようだ。しかし何故そのようなことを? もしかして……」

「あ、ぇと。それは……」

「リーゼロッテ姫は駄目だぞ」

「そんな訳ないじゃないですかっ。べ、別の方です」

「そうか。では……誰だ?」


 兄はホッとするも首をかしげた。

 本気で分からないのか、からかっているだけなのか、どちらなのかよく分からない。


「え、エミリア様です。話の流れから分かりますよね。言わせないでください」

「おぉ。そうかそうか! 別に良いのではないか。父は二つ返事で了承してくれると思うぞ」

「何故ですか?」


 俺の質問に、兄は一瞬戸惑った後、口を開いた。


「父は、リオンに研究を強いていたことを全方位から責められてな。母上は離宮に隠り、兄は父へ剣を向けた」

「へ?」

「気にするな。もう終わったことだ。兄も母もリオンが留学したことで納得し、父とも和解済みだ。ただの家族喧嘩程度で治めたから心配無用」

「心配無用って……」

「それよりだな。いつの間にエミリアと仲良くなったのだ?」

「いえ。これから……お近づきになりたいので。その前に、一応許可を」

「成る程。本気なのだな。しかし、エミリアか……」


 兄はわざとらしく顎に手を当て考え込んで、俺の様子を薄目で窺っている。


「な、何か問題でもありますか?」

「リーゼロッテ姫が私の話をエミリアにしたそうだが、ルシオ様は大人っぽくて素敵ですね。と言っていたそうだ」

「自慢ですか?」

「いや。違う。エミリアはリオンの二つ年上。そしてエミリアの元婚約者も年上だった。リオン、お前は動物にたとえると子犬みたいだろ? 果たしてエミリアに釣り合うだろうか」

「こ、子犬ですか!?」

「ああ。もっと女性をリード出来る紳士にならなければ、エミリアは振り向いてくれないのではないか?」

「……努力します」


 エミリア様の好きな物を沢山知っている自信はある。でも、好きな男性の好みは知らない。

 兄様の話がもし本当なら、エミリア様は大人っぽい男性が好みなのかもしれない。

 リーゼロッテ様に聞くのは恥ずかしいし。


 さて、どうやってお近づきになろうか。


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