王太子による勇者殺害未遂事件報告

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第1話 第一報

隣国に侵入していた魔族を我が国の援軍とその国の残存部隊などによって奪い返したことで、兵站などを担っていた私の部署が通常体制に戻りつつある。

派遣部隊からの報告書をまとめたり物資の輸送の報告も最終的な総括の段階になっている。


そんな日に。


「た、大変だ」


「ん、どうした。城内が少し騒がしいようだが、何かあったのか」

私が執務を行う部屋に転げるような勢いで同僚のリックが飛び込んできた。


「正門から切り込んできた者がいる。正門警備の警備部隊だけでなく駆け付けた城に駐屯している部隊が突破されたらしい」

「すでに場内に侵入され、今は騎士団が対応しているらしい。さきほど応援らしい騎士団とすれ違った」


「まさか、正門の警備部隊だけでも数十人いただろう。それに一般の兵士隊といっても駐屯部隊でも数百人、すべてでなくてもかなりの人数のはずだぞ」

「いったいどこの者たちだ」


「ちょっと信じられないがたった一人の剣士という話だ」


「まさか」

いくつか可能性が思い浮かんだがどれも考えられなかった、剣士ということでまず思い浮かんだのは剣術指南役や将軍クラスだが反乱にしても一人でということはあり得ないと思われた。

次に在野の上位剣士だが、一般兵とは言っても単独で当たれるかというとかなりあり得ないことだ。

他には指南役殿の師匠である剣聖や勇者だがいずれも隣国の国土回復戦に参加していたという話があり、我が国を敵に回すどころか攻め込んでくるような可能性はあり得ないと思われた。


「どうする」


「いや、どうするといってもまさか逃げるわけにもいかないが騎士団が出動するようなところに我々が行くのも邪魔でしかないだろうからな」

騎士団の主力は隣国へ派遣され期間の途上であるが王城には王直轄の近衛騎士団をはじめ主要な王族ごとに編成された騎士団だけでなく常設の騎士団が駐屯しているのだ。

派遣された部隊は魔族との戦いに長けている一方、この城の残存部隊は対人戦においてはそれら部隊以上の戦力だというのが軍上層部の認識だったはずだ。


「俺たちにできるのは本来の任務である情報の収集だろうが、城内となるとかなり厄介なことになるな。陛下はどうなっているんだ」

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