第15話 盗賊おっさん

 冒険者ギルドの裏手にダンジョンが完成した。当然、このダンジョンは冒険者ギルドの管轄だ。

 都市の中に形成されるダンジョンは良質である事が多い。まずは俺達がダンジョンに挑む。

 俺、アリス、シャルロットの3人パーティーだ。構成も基本的なものなのでいい目安になる。


 ダンジョンの1層は初心者ダンジョンをクリアした者なら十分に挑める設定はずだ。いくらエクストラハードモードでもそこを変えたらおかしくなる。


 〜 迷宮都市のダンジョン 第1層 〜


 ダンジョンへと続く階段を降りていく。横幅の広い階段だ。幅10メートルはあるだろうか。しっかりとした石段になっている。


「大人数が出入りする事を想定した階段だな。かなり大規模なダンジョンだぞこれは」


 階段を降りたら大きな扉があった。ちゃんと衛兵が立っている。俺達が近づくと無言で扉を開いてくれた。扉を通るとそこには緑豊かな草原があった。


「1層は草原タイプか。素材狩りに適したフィールドだ。これは大当たりだな」


 まずは探索だ。マッピングはアリスに任せてある。素材狩りに適した獣タイプの魔物が多い。多少はゴブリンの集落もあるようだが楽に倒せる。広大なフィールドでとても1日では探索しきれない規模だ。シャルロットはスキル『採取』を使って様々な植物系の素材を採取していた。


「初心者に最適な層だな。これは賑わうぞ。ん?」


 ふと前方の草むらに何かがあるような違和感を感じた。その辺を探ってみると宝箱が落ちていた。


「スキル『探索』が生えたな!」


 宝箱や罠を発見出来るスキルだ。ジョブをシーフにしておいて正解だったぜ。シーフはこの手のスキルが生えやすいジョブだ。


「ダンジョンの宝箱には罠があるものが多い。宝箱を開けたいならシーフ系のジョブが必須だ」


 スキル『罠解除』はシーフの固有スキルだ。スキルにプラスして専用の道具を使えば更に解除の成功率が上げる。勿論、道具も持ってきた。冒険者ギルドに置いてあったのを借りて来たんだけどな。

 腰に装備しているマジックポーチは物をパクるのにも使えるな……


 カチっと宝箱の鍵が開く音がした。何も起こらないから成功だな。低レベル帯の宝箱のは毒霧の罠が仕掛けられている事がほとんどだ。稀に爆発の罠もあるから油断は禁物だがな。

 中身は毒消し薬だった。まあこんなもんだろう。

 それから宝箱を探して回った。なんせ俺達しか居ないから宝箱が取り放題だ。1日で『罠解除』と『探索』のスキルがLV3まで上がったぜ。ウハウハだな。


 更に宝箱から『雷魔法』のスキル書が出た。それはシャルロットに渡した。近日中にスクロール専門店がオープンするらしいからそこで魔法はいくらでも買える。

 

 第2層はオーソドックスな洞窟タイプのフィールドだった。魔物はゴブリンが多い。たまにワーム系の魔物がいる。特筆すべきなのは黒色とか茶色の岩が所々にある事だ。鑑定したら予想通り鉄鉱石と銅鉱石だった。『採掘』が可能だな。それだけなら良いフィールドなのだが敵が急に強くなっていて中々奥には進めない。3人で必死に戦わないと敵が倒せないんだ。


「進むには装備をしっかりしないといけないな」


 中々バランスの取れた良いダンジョンだ。問題は装備だ。店売りの装備は無駄に高いからとても手が出ない。あくまで自分達で作るしかないのがこのゲームの特徴だ。鉱石がこのダンジョンから出るのは非常に重要な事だ。


「商業ギルド主導で工房を作ってくれ。2層で鉱石が手に入ると言えば町長が協力してくれるだろう」


 さすがに鍛治施設を自分で作るのは大変だからシステム側にやってもらうのが得策だ。


「俺は金属系の装備を作る予定だ。君達には皮と布系の装備を頼みたいんだが?」


 本来なら全て自分でやりたいんだが最速クリアを目指すなら分業した方がいい。シャルロットは裁縫をやっているから服等の布装備は彼女にやってもらうか。そうなると皮はアリスだな。


「シャルロットが布、私が皮でいいかな?」


「…………お願いがあります」


 ん? シャルロットは不満があるのか?


「装備は全て私が作ります。その代わりと言っては何ですが私とお付き合いして貰えませんか?」


 シャルロットが真顔で俺とアリスを見ている。俺とアリスが偽装結婚なのは同居しているシャルロットには説明してある。


「お、俺と交際したいのか? 中身はおっさんだぞ?」


 彼女居ない歴は長いな〜 女性と交際するなんて考えもしなかったが……シャルロットは銀髪美人だし良いよな〜 どことなく大人の女性って感じもする。ひょっとしたら中身は同じ年齢位かもしれん。


「ちょっと違います。タラオさんとアリスさんの2人と交際したいんです」


「はぁ?? それはえっと……」


「私、恋愛経験があまり無くてゲームの世界なら出来るかなって。ダメですか?」


 まあ女性と女性が交際するのもありだが……アリスもさすがに困惑しているみたいだ。


「BLを読むのは好きなんだけどGLは興味無いかな……」


 BLを読む? GLって何? おっさん分からないんですけど!?


「ア、アリス。それって何だ? BLとか」


 ブラックリストじゃないのか?


「ボーイズラブとガールズラブだよ?」


 ……マジか……おっさん、略語は弱いんです。勘違いするのでやめて下さい。


「タラオは美人2人と同居しているのに全く興味無さそうだしBL系かもね?」


 アリスさん本当にやめて下さい……


「いや……それは無いぞ。ただ君達は特に美人すぎるし、映画とかアニメっぽい容姿だからちょっと苦手っていうのはあるな」


 おっさんは普通の女の人がイイんです! 


「ゲームの話だがパーティー内で恋愛すると高確率で分裂するってのもあるぞ」


「生活するだけじゃつまらないですよ? 現実世界と同じにする必要は無いですよね? 違う事をやってみるのも有りだと思います」


 シャルロットは真剣なようだ……モブキャラとも恋愛は可能なんだがそれではつまらないのかもしれないな。


「そうよね……いきなり恋人って訳にはいかないけど……でもさ、この世界って遊ぶ所とか無いよ?」


「これから都市が発展すれば遊園地とか出来るかもしれませんし3人でデートしましょう!」


「イイね! ここに来てから遊んだ事って全く無かったし」


 何だか女性同士で盛り上がっているな……おっさんついていけないんですけど!?















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