第42話 未来を編んだシンブル

「僕のパートナーになってください。結さんの夢は、僕が支えます」

「え……?それは、もしかして」

「こういうことです」

桐哉さんは、胸ポケットに入れていたものを取り出し、私の手をとって指にはめた。それは、丹念に細めの白い糸で編まれたシンブルだった。桐哉さんの胸で温められたシンブルは、突然の告白の言葉をしっとりとしたぬくもりで包んでくれた。

「結さんが書いてくれた編み図で作ったシンブルです。覚えていますか?シンギング・ヒニーというケーキにまつわる言い伝えを。ケーキの中からシンブルを見つけた女の子は」

シンブルをそっと指でなぞる私を見つめながら、桐哉さんが教えてくれた。

「……将来、倹約家のよい妻になるそうです」

「妻、だなんて、そんな、私……」

「嫌ですか?」

「……うれしいです。思ってもみなかった」

私は、またも目の奥が熱くなった。けれど、それは幸せのぬくもりだった。

「よかった。だから、もう僕から離れないで。レッスンも、ずっと続けてください。死が二人を分かつまで」

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