第6話
海とは何か?
そう問われたら、貴方は何と答えるだろうか?
デカい水の塊?それは正しい。
富を運ぶ、黄金の路?商人にとってはそれが正しい。
その全てが正しく、そして間違っている。
海に携わる者にとっての海は、その生きざま、生業によって姿を変える。
これは、そんな海に対して狂った魅力を見出だした者達の話だ。
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『
全長26.8m、横幅最大10.21mそして高さが20m丁度。
現代人からすると船の前と後ろが高く、真ん中が低くなっている。
現代人には、ひどくずんぐりとした印象を与える木造帆船である。
船の前部に二門、中部の甲板に露天で二門、後部に二門で計六門のカノン砲を主武装とする。他に前中後それぞれに人の腕ほどの大きさの旋回銛砲三門を備えた冒険者船だ。
この世界の標準的な船と同様様々な魔術を使って、長距離航海が可能なように手を加えられている。
船体の構造材たる木材には、一つ一つ魔術処理が施され鋼鉄以上の耐久性が与えられている。
高度な
そんな船の上で、東郷謙二は死闘を繰り広げていた。
…死闘と呼ぶには余りにも情けない物だったが。
「ちょっ!まっ!待て!この!!糞野ろ…あっ、ダメダメダメ待って!!」
眼前に鋭い嘴が迫り、それを手に持ったモップの柄を噛ませる事で何とか押し留める。
東郷は恐怖に顔を歪ませ涙を浮かべながら、必死でその生物と戦っていた。
「ゲギャギャギャ!」
甲高く濁った声で威嚇しながら東郷を襲う生物…河童…いや、海ゴブリンであった。
「ひぃっ!だっ、誰かぁー!だれかたすけて!」
人の子供程の背丈しかない海ゴブリンであるが、その力は成人男性並みである。ろくな知恵を持たないのが人類にとって幸いであった。
緑色の皮膚はヌメヌメとしていて、生臭い。
指先の鋭い爪と黄色い嘴がを武器として、他の生物に群れで襲いかかる。
頭のてっぺんに皿があり、そこが特に脆い弱点とされている。
そんなモンスターに、東郷は組敷かれて殺されそうになっていた。
「どりゃぁ!っと、新入りぃ!生きてっかぁ!?」
「死にそう!!死んじゃう!!!」
「まだ元気だな、ちょっと、待っとけっ、よっ!!」
焼けた肌にバンダナを巻き、そこからネコミミを生やした逞しい体つきのカリビアン海賊スタイルの男が、また別の海ゴブリンと戦いながら東郷に声をかける。
「らぁっ!んで、もう一丁ぉ!!」
彼は手にした
「立てるか?」
「あ、ありがとうございまっ!?」
「っとぉ!新入りぃ!礼は後でいい、お前も暴れてこい!」
一刀の元に新手の海ゴブリンを切り伏せた海賊…もとい、海冒険者が東郷を戦場へと押し出す。
東郷の眼前に広がる光景は正しく阿鼻叫喚の地獄絵図と言ったところか。
身の丈二メートルはあるオークの戦士が鎚を振るい、着流しのラミア(♂でイケメン)の剣客が鯉口を切り海ゴブリンの首をはねる。
コボルトの射手(声が渋い)は手に持つボウガンから放つボルトで敵の喉を射抜き、ハーピィの武闘家(弁髪)が震脚を見舞う。
「ははっ。どうなってんだこれ…何なんだよ。」
東郷が安全地帯を求めて
どうにか身を隠せる場所をと視線を巡らせても、そんな場所は何処にもなく、その視界に絶えること無く窮地に陥った味方の姿が眼に入る。
「ほぁー!!」
本人的には腹のそこから出した鬨の声。しかして、出てくるのはなんとも情けない声だった。
東郷としては「どりゃぁ!」と言ったつもりだったのだ。
それでも思い切り蹴りあげた足は、今まさに喉を啄まれようとしていたドワーフの命を救っていた。
「ギャン!」
と、蹴り飛ばされながらも喚きながら手足をバタつかせて再度突っ込んで来る海ゴブリンの額に、銃声と共に今度は鉛玉がめり込み、その後頭部に血生臭い大輪の紅い華を咲かせる。
「サンキュー
宙に舞う海ゴブリンの脳漿の行く先を見届けること無く、ドワーフの戦士は敵を目掛けて駆け出した。
「ッハハ!!騒げ騒げ!!」
「
視線を巡らせれば、
船に乗る者全てが死闘を演じていた。
しかして、海ゴブリンの強襲は絶えることはない。
「ゲギャギャギャ!」
水中から飛び出してきた海ゴブリン…
「わー!!わ!!わーー!!」
パニックになりながらも、その鼻っ柱に東郷はモップをフルスイングで叩き込み、海へと還した。
そうして、東郷が船上でわちゃわちゃしているとやがて戦闘は終わった。
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