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朝。小鳥のさえずり。出勤や通学の音。
目覚めたくなかった。寝ていたい。どれだけ寝ても、まだ、眠い。
ずっと仕事だった。替えが利かないから、そこそこ張りつめた感じになっている。精神も、心も、身体さえも。ひりひりして、少しの異状に反応してしまう。仕事柄、仕方ないことだった。
こんな状態で、彼女には逢えない。
というよりも、逢いたくない。
普段の自分ではない、仕事のときの自分を見せたくはなかった。こわがられて、よそよそしくされてしまうかもしれないから。彼女にびびられたら、それこそ生きていけない。彼女の前では、どこにでもいる、ねぼけた顔のばかでいたかった。ばかでいい。賢くなくていい。
「はあ」
ため息。賢くなりたくて、そうなったわけでもないのに。ばかでいいのに。仕事は入る。この状態だと、しばらく逢えそうにはないな。
今日が始まる。
彼女に逢いたいけど逢いたくない、今日が。
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