かつて貴族令嬢だった女性は平民となり、婚約破棄された事を忘れて小さな幸せを築いていた。
仲仁へび(旧:離久)
第1話
婚約破棄された私は、花屋で働いている。
他の花屋さんの事はまだ知らないけれど、私が勤めているこのお店の朝は忙しい。
日が昇る前に起きて、花に水やりをして、色々な手入れをして、お客様の来訪予定を確認。
贈り物の包装のために、包装紙やリボンもしっかり揃えておかなければならない。
だから、いつも朝は寝ぼけ眼で作業。
時折りあくびもまじえて、動き回る。
そんな私に声をかけてくれるのは、幼馴染。
平民の男性ザックスだ。
目に鮮やかな緋色の髪の彼は、色とりどりの花を背景にすると良く映える。
この店の主役である花の方が、添え物に見えてしまうくらいだ。
彼は荒っぽい動作で、荷物を運んでいた。
「おーいピネス、こっちできたけど。水やり終わったか?」
「もうちょっとかかるわ。でも大丈夫。すぐに終わるから」
とある事件の濡れ衣をかけられて婚約破棄された私は、花屋の娘として第二の人生を送っている。
元は貴族令嬢だったため、働いた事がなかったのが難しい点だったが、幼馴染のおかげでそれも何とかなったのが幸いだ。
そんな幼馴染の彼ザックスは、幼いころ私の家の庭の垣根に穴を作って、不法侵入していた生意気な少年だった
お貴族様は足が遅い。
お貴族様はすぐだまされる。
そうやって私をからかってきた事は数数えきれない。
けれど、今は頼もしい男性に成長している。
細かな気遣いをしてくれるし、怪我をした時は心配してくれる。がさつなのは治らなかったようだけれども。
「元お嬢様が、こんな仕事によく慣れたもんだな。お前と知り合った頃が遠い昔の様だよ。あの頃は、草木の棘が指にささっただけで、ぴーぴー泣いてたし」
「恥ずかしい事を思い出さないで。小さな傷でも馬鹿にできないのよ。化膿したら痛むし、治るのがおそくなるし」
「はいはい。よっこらしょっと。さて、今日のお客様リストをチェックするか。予約が入っている客はどれくらいいたっけ」
商売道具を運んでいた彼が、リストを持ってくる。
仕事を終わらせて、私も合流。
彼と顔をつきあわせて、予定の確認を行っていく。
今日のお客様は、贈り物のために花を購入する人が多い。
その事を思うと、婚約破棄される事になった原因を思い出してしまう。
名家の貴族令嬢への贈り物があるのだが、そこに物騒な物を入れられていた、という事件を。
贈られた箱の中には、毒薬が入っていらたしい。
その容疑者となったのは、私。
前日に、被害者と言い争っていたから、多くの人は私が犯人だと思っている。
そんな事が影響して、私は婚約者から婚約破棄されたのだ。
考え事していたら、頭をこづかれた。
「まーた、余計な事思い出してんな。いいかげん忘れろって。昔の事を覚えてたってさ、幸せになれるとは限らないだろ?」
「そうよね。ごめんなさい。前を向いていなきゃね」
私は頬を叩いて、気を引き締めた。
彼の言う通りだ。
あれはもう終わった事。
真犯人を見つけたくても、どうにもならない。
彼が受け入れてくれたこの花屋で協力しながら、しっかりと経営していかなければ。
その日の仕事を終えた私は、お世話になっている花屋の屋根裏部屋に戻った。
今はここが私の部屋だ。
そこは、元は使われていなかった部屋であった。そのため、埃っぽい物置と化していたのだが、丸一日掃除をすると、なんとか人が住めるようになった。
この部屋を用意してくれたザックスには感謝しなければならない。
ベッドを整えていると、下の階で寝泊まりしている彼が上がってきた。
ちなみにご両親はいない。
母親だけいたようだが、数年前に流行り病でなくしたとかなんとか。
階段を上がる音がした。しばらくしてから扉をノックする音が響く。
何か私に用があるのかもしれない。
「どうぞ」
扉から顔をのぞかせるだけの彼は、「そろそろ平民の生活に慣れたかな、と思ってね」と言う。
「あれから一か月よ。もう慣れるわ。もともと貴方から平民の暮らしを詳しく聞いていたし」
さすがに身分を奪われた日は、どうなる事かと肝を冷やしていたが、恥ずかしいので言わない。
「そっか。それならいいんだ。その」
「何か言いたい事があるの?」
「いや、何でもない。明日は早いから、もう行くな」
「そうね。おやすみなさい」
「おやすみ」
彼は、何か言いたげな顔をしつつも、その思いを引っ込めたようだ。
静かに扉をしめていった。
「何だったのかしら」
なぜか、その顔がすごく悲しそうに見えた。
広い屋敷の中、自分の部屋にいる僕は、使用人を「しばらく入ってこないように」と遠ざけてから考え事にふけっていた。
僕は、先日、婚約者と別れた。
でもそれは、僕が別れようと思ってした事ではない。
婚約を破棄した覚えはまるでなかった。
でも、知らない間にそういう噂が広まっていたらしい。
婚約破棄の噂が流れ過ぎたのだ。
それで引っ込みがつかなくて、両親が決断した。家のメンツもあったから、仕方がないとは分かっているが。
それでも、婚約者であるピネスは最後まで、様々な人に無実を訴えていたようなのだ。その努力は叶わなかったようだが。
噂は、本当の事として扱われてしまった。
ピネスの事は、恋をするとまではいかないけれど、大切な人だと思っている。僕が婚約者である彼女を、ピネスを嫌うなんて、そんなはずはないのに。
だから彼女の様子を気にかけて、ピネスの屋敷へ出向いたけれど、時すでに遅し。
彼女は平民に下っていた。
僕は彼女の両親に説明した。
彼等も不自然な噂について分かっていたけれど、家を守るためにはどうしようもなかった。
ピネスにはまだ弟がいたから、その弟に被害が及ばないように、彼女の家は娘を切り捨てるしかなかったのだろう。
ピネスは貴族だ。
今までそう生きてきた。
それが平民になるなんて、考えられない。
早く助けてあげないと、どこかで行き倒れてしまっているかもしれない。
心配でしょうがなかったが、出来ることなど何も思いつかなかった。
頭を悩ませていると、執事の口から「お客さんがきましたよ」と知らされた。
そんな気分ではなかったが、わがままで仕事を放りだすわけにはいかない。
貴族同士のつながりを維持する事は重要な事だからだ。
だから、うまくできているか分からない作り笑いを浮かべながら、お客さんを出迎える。
けれど、そこにいたのは、予想外の人物。
「あの、話があるのですけれど」
ピネスにに毒薬を贈られたという、例の貴族令嬢だった。
「ピネスさんからもらったプレゼント、実は怪しい男性からもらっていたんですの。貴族の社交界にまぎれるにしては行動が粗野だったので、印象に残っていて」
毒薬の贈り物を届けられた貴族令嬢。フレンダはずっと考えていた。
ピネスはどうやら婚約破棄されて、平民になったらしい。
最近の社交界では、そういう噂でもちきりだ。
しかし私は冷静になった今、首をかしげていた。
毒薬を贈られたときは、思わずかっとなってしまったが、よくよく考えれば不自然な点に気が付いたのだ。
彼女はどうしてわざわざ、自分が怪しまれるタイミングでこんな嫌がらせをしたのだろうと。
もっと良いタイミングがあっただろうに。
それにおかしいのは、タイミングだけではない。
憎まれる心当たりがないというのがひっかかる。
私は確かに、彼女と前日にささやかな言い争いをした、その時は互いにちょっと機嫌が悪かったので、些細な事が勘に触ったのだ。
けれど、それが相手を殺すほどのものかと問われると、首をかしげさるを得ない。
だって、内容は本当に他愛ないもので。
「貴方まだ野菜嫌いを克服していないの?」「ピネスは自分が野菜好きだからって簡単に言ってくれるけど、大変なのよ」
なんていうものだったからだ。
ピネスは他の令嬢達よりも聡明だった。
だから私は、あまりにも、嫌がらせの仕方が杜撰すぎると思った。
そのため、詳しい話を聞くために、彼女の婚約者であった男性を訪ねたのだ。
そこで聞かされたのは彼がやむなく、ピネスとの婚約を破棄したという事実。
そして、ピネスの両親が、やむなく自分の娘を切り捨てたという事実だった。
私の脳裏には、プレゼントの箱を持った少年の姿が浮かぶ。
記憶がだんだんと鮮明によみがえってきた。
彼の手は棘だらけだった。
「貴方の手、いっつも傷だらけね」
お客様にお渡しする花束を作っている時、彼の手元を見た。
また花の棘がささったのか、あちこちに傷ができていた。
「これくらい、どうってことないよ」
「そうは言うけど、大事にしないと。自分の手なんだから」
「君は優しいね。それがちょっと心配だよ」
その時、一瞬だけ暗い表情を見せたザックス。
だけれど、すぐに明るくなる。
私は気になったけれど、詳しく聞く事はできなかった。
そこに、お客さんがやってきたからだ。
客?
だろうか。
やってきたのは、身なりの良い人物、貴族だ。
私は驚いてしまった。
このお店は、一般人が住む区画にある。
だから、今まで貴族が来たことはなかったのに。
「ふーん。ここが噂の令嬢のお店かよ。ちっせぇとこだな。しかもぼろいし」
「地味な内装じゃないか。センスないな。こんなんじゃ、ロクな客こねーだろ」
やってきたその客は、店を眺めながらそんな事を言ってくる。
そして、私を見つけてにやにやとした笑いを浮かべた。
「貴族がホントに花屋でなんか働いているよ。おい、傑作だな」
「お貴族様が花屋! はははっ。おかしいぜこりゃ」
どうやら彼らは、婚約破棄されて平民に下った噂のご令嬢を、わざわざ笑いに来たらしい。
このまま彼らに居座られたら面倒だ。
「帰ってください。他のお客さんの迷惑です」
だから、できるだけ強い口調でそう言ったのだが。
彼らはけらけらと笑うだけで、退かない。
「おいおい、つれない事言うなって。だいたい客なんていねーじゃん」
「もっと俺達と面白い話でもしよーぜ」
そして彼らは、無遠慮に店の花を触りはじめる。
「なぁ、こんな貧相な花を扱ってんのか? ひょろくね? これじゃ簡単に折れちまう」
「種類も少ねー。俺の誕生日パーティーの花の方がよっぽど多かったぜ」
繊細な花を手づかみで持った彼らは、そのまま勢いよくへし折ってしまった。
その態度には思わずカッとなってしまう。
「貴方達、邪魔をするなら帰って! このお店にある花はどれも大切なものなの!」
「うぉっ、何怒ってるんだよ。そんなんじゃ嫁の貰い手つかねーぞ」
「そうそう、だから婚約なしにされるんだよ」
げらげらと下品な声をあげて笑う彼らに、我慢の限界がきそうになっていると、横合いから水がとんできた。
笑い声をあげていた彼らはびしょぬれになってしまう。
「なっ、ってかくせぇ。なんだこれ!」
「冷てぇ。くさっ。誰だよ! 俺達は貴族だぞ!」
誰かが彼らに水をかけた。
けれど、それが誰かなんて無意味な推測だ。
この店にいる従業員は、私と彼しかいないのだから。
水がとんできた方向を見ると、バケツを持ったザックスが立っていた。
なぜか、仮面をつけてる。
町のお祭りで、子供が喜んで買うような仮面を。
「お貴族様には特別なプレゼントをさしあげましょう。臭いのきつい花を手入れしていた水です。無料なので、どうぞそのまま持ち帰ってくださいやがれ」
「てめぇっ!」
「生意気なっ!」
くだけた口調でしめたザックスに、貴族の男性二人が声を荒げるが、強烈な臭いに対する耐性がなかったのだろう。
気持ち悪そうな表情になって鼻をつまみながら、すぐに退散してしまった。
「覚えていやがれ!」
「ちくしょうがっ!」
「またのご来店はお待ちしておりません」
ザックスは中指を立てて、挑発のポーズをとった。彼の地が出てる。
彼らが完全に姿を消したのをみて、私は謝る。
ザックスは、間抜けな仮面をさっととった。
「ごめんなさい」
「どうして謝るんだ?」
「だって、私が最初に喧嘩を売るような口調で話さなければ、こんな事には」
「ピネスのせいじゃないよ。俺も結構ムカついてたし」
そういう事にしたいなら、そういう事にしておこう。
いさせてもらっている身なのに、問題を起こしてしまったのが申し訳ない。
お詫びは別の機会に、何か形になるものを贈ろうとそう思った。
「ザックスは優しいわね」
「そんなことないって」
すると彼は、いつか見た時の様に悲しそうな顔になった。
それから幾日か経過した頃。
ザックスがお得意先への花を運ぶため、外へ出掛けている時、元婚約者が尋ねて来た。
驚いた。彼が友好的な態度だったのも含めて。
彼は、私の顔を見るなり、頭を下げた。そして、こちらが知らない所で起こっていた出来事について話をしてきた。
一通り聞いた後、ため息をつく。
黒幕に踊らされた人は、予想以上に多かったらしい。
「そんな事があったの。じゃあ」
「ああ、そうだ。僕は君を捨てようとは思っていなかったんだ」
明らかになった事は衝撃の事実だった。
けれど、それが分かったところで今さらだろう。
例の件が濡れ衣だと証明できない限り、元の居場所には戻れないのだから。
黒幕が分かったとしても、いったんギスギスしてしまった関係が、完全に元に戻る事はない。
しかし、
「犯人への手がかりは、実はある」
「えっ」
彼はそう言ったのだ。
毒薬入りのプレゼントを贈った人物は、手にいくつもの傷がある人間。
それに、仕草が粗っぽくて貴族らしくない人間だった。
そして、髪色は目に焼き付くような緋色。
私の脳裏には、自然とある人物が思い浮かんできた。
しかし、そんなはずはない。
あるわけがないのだ。
だから私は「それだけの手がかりじゃ、やっぱり見つけられないわ。お仕事があるから帰って。ごめんなさい。ありがとう」と彼を急かしていた。
彼は去り際に、「何か分かったら連絡してほしい、出来る限り力になるよ」と言っていた。
その二人の様子を、遠くから一人の男性が見ていた。
その日の夜、ザックスが部屋を尋ねて来た。
ベッドに二人並んで腰かけて、他愛ない話をしていた私達だが、彼はふと真剣な表情になった。
「ピネス。もし俺が全てを捨てて、俺を選んでくれって言ったらどうする?」
こちらの瞳を覗き込むようにして、じっと反応を窺っている。
いつもと違う雰囲気の彼は、なぜか何かを怖がっているようにも見えた。
それと同時に、何だかいつもより少し怖く見えた。
私は彼の質問に、首を振って答えた。
「大切な問題だから、こんな所で答えを出せる話ではないわ。そういう時が来たらじっくり考える、それじゃだめ?」
「ピネスは真面目だな。しかも賢い解答をしてきてる。そうだな、確かに考える時間が必要だ」
彼は大きくうなずいて、こう私に喋りかけてきた。
傷だらけの手で、私の手をにぎりながら。
「俺はとある有名な貴族の血を引いているらしい。国の要人の。認めたくないけど俺は、親父が気まぐれに作った愛人から、その腹から生まれた人間なんだとさ」
「えっ」
彼が話してきたのは衝撃の事実だった。
「でも今までさんざんほったらかしてきたんだぜ、それを今になって要らん事実を教えてきてさ。何だこいつって思うよな」
いきなりとんでもない秘密を明かされて面食らっていたが、それは確かにそう思う。
おそらくザックスは、愛人の子供だったから、今まで平民として生活していたのだろう。
それなのに、何らかの理由があって貴族になれと言われたのだ。勝手すぎる。
私はザックスの手を握り返した。
「大変だったのね」
「ああ、大変だった。だから俺と一緒に逃げてくれないか。平民として。このままじゃ連れ戻される。どこまでも、世界の果てまでも」
連れ戻される、という事は一度は貴族がいる場所に立っていたという事だろう。
そこで私は、ザックスが言いたい事を悟った。
彼は、貴族のしがらみから解放されるために、この町から離れようと持ちかけているのだ。
けれど、それに私にもついてきてほしいと言う。
それは人生を共にするという意味なのだろう。
彼は、寂しそうに笑って、「大事な事だから一週間待つ」と言い、部屋から去っていった。
それからの一週間。
あまり仕事が手につかなかった。
ミスも多かったし、要領が悪かった気がする。
もんもんとしながら悩んでいた私は、一つの答えを出した。
それは、元婚約者の手も借りて出した結論だ。
私はザックスに、二つだけ質問して、決断をした。
そして、その時が来た。
「一週間経ったな。答えは出してくれたか?」
「ええ、私は貴方を選ばない。これからは一人で生きていくわ」
「どうして!」
私は指を二本、立ててみせた。
これは私と彼が共に生きる可能性そのものだ。
その一本をまず、折りたたむ。
「数日前、貴方に聞いたわよね。貴族として生きる事はまったく考えなかったのって」
それは、決断のために彼にした質問の一つ。
「聞かれたな。それが?」
頭の中にあったのはとある光景。
貴族になった彼と、貴族に戻った私が手をつないで談笑している幻。それが消えた。
そして、もう一本を折りたたむ。
「どんな境遇でも、好きな女を振り向かせるのに自信はあるのか、とも聞いたわね」
「ああ」
同時に、毎朝早起きしながら、花屋の人間として一緒にお店を経営していく幻が消えた。
ザックスは、一つ目の問いに「無理だ」と答え、二つ目の問いには「どんな罪をおかしてでも」と答えた。
「私、今いる場所を少しも変えようとせずに逃げ出す人間が嫌いなの。私は婚約破棄された時、ちゃんと皆に無実だと訴えたわよ」
彼はうつむいた。
「それに、罪を犯して人を貶めようとする人間もそう」
そして彼は、肩を震わせる。
それは見ているこちら側に哀れみの感情を抱かせるものだった。
ここで口を閉ざしたくなったが、まだ、言わなければならない事がある。
「貴方は私を一度貶めたわね。毒薬を使って」
彼がはっとした表情で、頭をあげ。こちらを凝視する。
私はその視線を真っ向から受け止めた。
しかし、彼は目をそらした。
「誰にやってもらったかは言わないわ。緋色の髪の貴族について知り合いに調査してもらったの。そうしたら、貴方の存在が浮かんできた」
今まで大変だけれど、楽しい日々だった。
彼と一緒に歩いていくのも悪くないとそう思っていた。これまでは。
自分の罪を正当化し、私になにも謝らない人と、これからも一緒にやっていけるとは思えない。
「荷物はもうまとめてあるわ。さようなら」
花に囲まれながら、私を気遣ってくれた男性。
花を手にしながら、色々な事を教えてくれた男性。
でも、その人の記憶はもう必要ない。
私は、それから二度とその場所には足を向ける事が無かった。
とある町の中。
人通りの少ない場所に、小さなお店があった。
そこは花を売る場所だ。
小さな花屋に、少女がかけこんでいく。
店員である女性は、少女と言葉をかわし、微笑んで花を一つプレゼントした。
少女は笑顔になって、店から離れていった。
婚約破棄された女性は、遠くの町にいっても、他の仕事に就くことができなかった。
だから、苦い思い出と共に培った経験を生かして、花屋の手伝いをはじめた。
そこは、お客さんが押し寄せるほどの有名店ではないが、地元の人によりそった経営方針が評価される。
そんな店だった。
かつて貴族令嬢だった女性は平民となり、婚約破棄された事を忘れて小さな幸せを築いていた。
かつて貴族令嬢だった女性は平民となり、婚約破棄された事を忘れて小さな幸せを築いていた。 仲仁へび(旧:離久) @howaito3032
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