彼女と僕がイチャイチャするだけの話

覚えやすい名前

第1話 そこそこ続いてる話のプロローグって読むのダルいよな

 僕は彼女のことが好きである。

 ちょっと待って最後まで聞いて!面白くするから、惚気じゃないから。

 

 これは今では完全に尻に敷かれてしまっている僕が、上に乗っかっている可愛い彼女と付き合うまでのお話です、どうぞ。


 時はさかのぼること一か月前

 高校への登校途中、はたまた下校中、僕は気づけばある人物を目で追っていた。

 シルクのような髪、ギリシャ彫刻のような肌、モデルのモデルになりそうな八頭身、溢れ出る気品、そして優雅さ。

 言うまでもなく毎朝登校時の電車で出会うたびに僕は彼女を眺めていた。名前はなんだろう高校はどこなんだろう、ナンパしようかとも思ったことがある(しなかったけど)

彼女はいつも友人と二人で電車に乗って談笑していた、なにぶん田舎暮らしなもので電車はいつもがら空き、僕の座る席の向かい側がほとんど彼女らの特等席のようなものだった

 ただその日は違った彼女は一人で電車に乗ってきた、友人はどうしたのだろう。

 電車は三両編成、僕と彼女以外に乗客はなし、そしてこれから乗ってくることは経験上絶対ない、そして彼女が降りるまであと一時間。

 となればやる事は一つこんな好機が目の前にぶら下げられて追いかけ捕まえない僕ではない。ぎこちなく立ち上がり彼女に近づく、無論対面している形なので近づく必要はあんまりない。勇気を出して一声

「や、やあ、どうも、今日は一人なんだね、体調でも崩したのかい」

気持ち悪い

カス

馬鹿

アホちゃん

なんだその声のかけ方、バイト先のきもいおっさんか?ほらもう彼女キョトンっとしちゃってるよ可愛いな、いや違うそんなこと考える暇はない二の句を繋がねば、えーーーと

「ねぇ、すごい汗よ、隣座ったら?」

「え、あ、そ、そうですねありがとうございます、この御恩は一生忘れません」

「え、?そ、そう、じゃあ覚えといて、、」

 思わぬ助け舟っぽいものがきて結果的に彼女の隣の席をゲットした嬉しい

とりあえずだらだらの汗をハンカチで拭い取った

「ねえ、君名前は?」

 今のは彼女から

「え?」

 で、アホ面で聞き返したのが僕

「な・ま・え・まさか無い訳じゃないでしょ」

「あー、えーっと長門文(ながとふみ)って言います」

「へー文君か、私は周防理科(すおうりか)よろしくね」

「あっはいこちらこそよろしく理科さん」

「不思議ね毎日顔合わせてるのに名前知らなかったなんて、ところで君どこの小学生?」

「いえ、高校生です」

「は?」

「え?」

今度は彼女がアホ面になった

ここらで僕の紹介、身長は159cm、黒髪、山園高校に通う高校一年生、終わり

「ハッハッハごめんごめん、あまりに君の身長がミニマムだったから勘違いしてたいつも小学生なのに一人で偉いなって思ってたんだよ、許しておくれ」

「いいです、慣れてますから」

「そっかー、じゃあ君は私の一つ下なんだ、あ、因みに私といつも一緒にいるあの子は石見数子(いわみかずこ)って言うんだけど今日は風邪ひいちゃって休みなんだ」

僕が聞いといてなんだがプライバシーの欠片もないな

「へー、そうなんですね」

、、、ここで会話が途切れる

「え、何もないの?」

「え、何もないですけど?」

「てっきり君から聞いてきたから何か用事があるのかと、、」

「いや、それは理科さんと話すための口実で」

「私と話す、なんで?」

 うーん話しかけることが目的だったから中身がないんだよなぁ

「なんでって、なんでだろ、ナンパするためかな」

 変なことをもとい本音を口走る僕

「ナンパ?暴風などに遭って船が破損し、航行できなくなること?」

「それは難破」

「大阪の地名?」

「それは灘波」

「じゃあ異性、もしくは同性に話しかける一大イベントのナンパ?」

「そう、そのナンパです」

言ってて恥ずかしいな

「わおそう言うの都会だけかと思ってた、んーーー?てことは、ムフフそうかそうか君はお姉さんに気があるわけだ」

急に一人称がお姉さんになったな

「まあはいそうです」

「ふーん、もうこのタイミングでか、そうかそうか、」

「?」

なんだ急ににやけ始めて、めちゃくちゃ可愛いな

「いやぁ気にしないで別に大したことじゃあないんだ」

「いやそういうこと言う時って大体なんかありますよね」

それとかガッツリ発音してるのに聞き取れない難聴系主人公とかなんなんだろうね

というかそもそも今まで好きだとかどうだとかそう言う伏線が貼られていないのに主人公補正でモテモテになるのはやはりどうかと思う。そこそこの付き合いがあって仲が良くなる描写があって初めて読者の納得のいく恋というのが出来上がるのではないか、仮に主人公であったなら君は脈略の無い告白や好意にokを出せるのか?

「じゃあ文くん、お姉さんとお付き合いをしないかい?」

「喜んで」

 出せる、めちゃくちゃ出せる

かくして僕と彼女は付き合うことになった

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