私とは違う人


「おーい!」


凄いなぁこんな公道で堂々と声を出せるなんて。私なら恥ずかしくて死ねるね。


私って批判ばっかだな。違うじゃん。周りを気にせずにいられるっことじゃん。凄いことなのにさ、自分が出来ないからって馬鹿にしてる。馬鹿みたいだ。


あーあ。ダメだな。変われないや。


「おーいってばー!」


不思議だなー、真後ろから声が近づいてくるし、さっき聞いた声な気がするけど、気がするだけ、気がするだけ。


風が吹いて桜が舞って、私の視界に暗い日常だった景色に淡いピンクに満たされる。


そして、思っきり両肩掴まれて振替されられた。


その人は迷いの無い目をしていた。少し羨ましいや。


その人は月陽にとって眩しく映った。


「無視すんなー!月陽!」


夜桜はにっと笑って私を見てくる。私の目を見てくる。


綺麗な顔が近くにあって少しドキドキする。


月陽はそれを隠すように顔を逸らして少しぶっきらぼうな態度をとってしまう。


「……まさか私とは思わないじゃない」


いや、本当に。


息を上げて頬が赤くなって、私の為に走ったなんて勘違いしそうだよ。


でもなんだか嬉しい気持ちもあったのは夜桜には言わない。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る