誰も知らないカカシの名前
藤咲 沙久
第1話 カカシの名
子供たちの笑い声が聞こえる。
どこからか焼きたてのパンが香る。
並ぶ屋根はまるで色鉛筆を入れた箱の中。
今日も街は賑やかだ。
そこへ三人の家族が帰ってきた。綺麗な洋服に明るい笑顔、そして楽しい思い出と一緒に帰ってきた。島国への長い長い旅行は、三人の心を温かくしてくれた。車に乗せたたくさんのお土産を振り返り、小さなお嬢さんはとても嬉しそうだ。
家族のお土産の中に、スケアクロウはいた。島国でスケアクロウを珍しく思った家族が、街の入り口に立ってもらおうと連れて来たのだった。スケアクロウは街の皆に歓迎された。
おどけた顔のスケアクロウは赤いベストを着ていた。街の前でいつもにこにこ笑っていた。島国にいたときのように恐い鳥を追い払わなくていいから、スケアクロウは幸せだった。
ただ少しだけ、寂しかった。
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