350字

雪飴

何もない

振り向くと、そこには何もない。

そんな無意味な行動をするほど何もない時。淡々と日常をこなし夜を待つだけの生活。

これを何年間続けてきたのだろうか。学生という無理矢理にでも何かある時を通り越してしまった私にはもう何も起きることはないのかもしれない。

「普通」の人なら何か趣味を見つけて推しや好きなものやらにお金をかけてそれを生きがいにしたり恋人や家族に幸せを感じて生きているのだろうか。

私は普通じゃない。そう思うだけで特別感が出て少しは前向きになれる気がする。

私には何もない。普通じゃない。家族もいなければ恋人や友達もいない。ここには何もない。こなす日常なんてものもほんとはない。

ただ美しい夕暮れを眺めながらその時を待っているだけの存在。だって、貴方が見ている画面の中の文字の世界の存在だから。主人公だから。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る