『火の島』 下の上の上

やましん(テンパー)

『火の島』下の上の上

 これは、まずい、と思いました。


 宇宙ごきのパトカーというものは、あるとは聞いておりましたが、見たのは初めてです。


 皆さんは、休みの日とかに、デモ行進に参加したことがあるでしょうか。


 むかしは、わりあい、ピクニックがわりに、メーデーのデモ行進に参加するのは、そう、不思議な光景ではありませんでした。


 たしかに、装甲車両や、パトカーがいたりして、当局側も、不測の事態に備えてはいましたが、それは、一部の過激派が混じっている場合もあり、用心していたのです。


 たしかに、あのように、市民が総出で(は、ちょっとオーバーですが。)、たくさん歩いてると、当局側には、いくらか、圧力になります。


 あそこに、ただ、みんなで、歩いてるだけなのに、もし、迫撃砲とかを打ち込んだりすると、話しが、ややこしくなります。


 軍が全体を支配すると、そうしたことが、ありうるので、その反省から、文民統制というやり方が、生まれました。


 でも、さいきんは、デモ自体、あまり、見なくなっていましたし、感染病がはやったりしたので、それは、また、非常に危険になりました。


 それでも、むかし、市民の力で革命をしたフランスや、イギリス、その血を引くアメリカなどの国の国民には、ある種のプライドがあるでしょう。


 選挙が基本ですが、場合によっては、デモ、や、ストライキで、政府の政策を変える力が、ありますし、変えさせない力がある場合もあります。


 暴力と勘違いしている人もいますが、まあ、革命の時とは、違いますから。


 しかし、宇宙ごきに侵略された人類には、もはや、そうした力が、初めからなくなっておりました。


 相手の能力、つまり、科学力、軍事力などが、桁外れに優位になると、抵抗することは、大変難しくなるからです。


 そもそも、地球人には、地球から遥かに離れたこんな惑星に、短時間で移動する力はありません。


 宇宙ごきは、そうした科学力をもっていたのですから。


 ぼくは、なので、非常にまずいと思いました。


 やきとりおじさんは、朝が早いので、すでに、拘束されたのでしょう。


 引き返したいけど、それは、無駄というものでしょう。


 案の定、パトカーの中からは、やきとりおじさんが、出てきました。


 しかし、なんだか、表情が明るいのです。


 一服盛られたか、なんて思っていたら、パトカーの反対側が開いて、はまきをふかしながら、サングラスをかけた、人間並みの大きさのごきが現れました。


 『わーい、やましんさん、元気い〰️〰️?』


 聞き覚えのたくさんある、明るい声が響きました。


 


 



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