episode17「こんにちは、元勇者―その①―」
ディバイン
「―――で、どこだ?ココ」
気が付けば俺は何もない真っ白な空間にポツリと寝っ転がっていた。
確か父上と先々代、ひいお爺様の話を終えた後は食事も喉を通らない程の眠気に襲われたから自室のキングサイズのベッドに横になって寝た筈。
・・・もしかして夢の中か?
???
「やぁ、
俺は体を起こし、目の前にいた若い男の人を見た。
目の前の男は―――宝物庫のショーケースに大事に保管されていた肖像画に書かれていた人―――
ディバイン
「元勇者でお爺様の父親で先々代の―――シロウひいお爺様!!!」
元勇者シロウ・タチカワ
「あ~あと悪いね、本来なら深夜帯に君をこの世界に呼ぼうと思ったんだけど予定より早かったから」
この人は思ったよりおっちょこちょいかもしれない
ディバイン
「父上とセダリアさんから聞きました。私が居る後代まで貴方の伝承がまだ伝わっています」
シロウ
「あ~っと・・・ここでは話の腰を砕こう。気楽に話そうか」
お転婆な人でもあるシロウひいお爺様らしいや
ディバイン
「成程、それであの双剣扱いとなった聖剣と魔剣はシロウひい祖父ちゃんに力を貸したんだ」
あの商会を統べるお婆さんが信頼を置いているのにも納得だ。
シロウ
「まぁね、でもまさか青銅の鎧が心火の鎧になるとはなぁ~、・・・んであの
ディバイン
「勿論。貴方が亡くなった後も大切にきちんと保管してたらしいですよ、俺が見た時はお店の看板として飾られてましたが」
俺がそう言うとシロウひいお爺様が
シロウ
「ははっ、そうかそうか・・・彼女らしい。俺が出会った時は未だ十代の君より7歳年下だったからなぁ」
そう言って感傷に浸る。
ディバイン
「この世界に転移する前はどんな仕事をしてたんですか?」
シロウ
「そうだねぇ~零細企業・・・まぁ所謂ブラック企業なんて揶揄されている会社で働いてたかな?でも俺、元の世界に未練は無くてね」
勇者として
シロウひいお爺様があれよあれよと語ってくれた。
当時の魔王は配下を大切に扱わず、さらに自国の国民にまで迷惑をかけた大罪人だと。
シロウ
「魔王を
そう言って座りながら遠くを見渡している。
全面真っ白な空間にだ。
ディバイン
「昔の事を、詳しく教えて下さい!」
シロウ
「・・・分かった。話をしよう」
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
今から数十年程遡り、1980年戦争時代。
シロウ
『――――うわっ?!』
俺はいつも通り仕事をしていた。
だが仕事終わりに会社の玄関から出た途端の拍子に
シロウ
「――――?!」
瞬間に見知らぬ場所に居た。
それが当時の今の大帝国が出来るまでの"ただ普通の"帝国だった。
当時なんかは【人神族】なんて言う言葉は無く、ただ単に獣人や魔族等と言った普通の種族を称する呼び方のままだったその戦時中の時代に俺は居た。
初代皇帝陛下
「頼む、これ以上の悲劇を見たくないんだ。」
当時はまだ魔神族の進軍もあった為、焦りに焦った皇帝陛下は各国と連携を取りながら始祖の魔王率いる魔王軍を抑えていた。
シロウ
「陛下・・・分かりました。それなら―――」
勇者として呼ばれた俺は皇帝陛下にとある条件を提示した。
それに驚いた貴族も居たがそうでもしないと無理だと言うような表情で何度も頷いた。
そして皇帝陛下も
初代皇帝陛下
「宜しく頼んだぞ!勇者よ!」
依頼を受けた俺は早速レベル上げを行うべく魔物の多い地域近くの森林に足を踏み入れたりして間引きをしていく。
シロウ
「終わった・・・ここまで長かった・・・戦いが・・・終わったッ!!」
最後まで諦めずに始祖の魔王を倒した俺は気力も無く、その場で倒れたが・・・心優しい魔族に介抱されながらベッドに運んでくれた。
始祖の魔王を倒した後の凱旋は物凄かった。
シロウ
「・・・えっ、エステノ様、今・・・今何と?」
第1皇女殿下エステノ・フィラ・オズロック
「貴方をお慕い申して居りました。この私、エステノ・フィラ・オズロックを貴方の御傍に置かせて下さいませ」
流石に皇帝の一人娘とも言われている彼女を放っておく事は出来ず、元の世界への帰還は取り消して、結婚を承諾した。
勿論、初代皇帝陛下は泣く程大喜びしていた。
セダリア
「おや、皇帝陛下、こちらに
シロウ
「おう、二人共。まだ継承されたばかりだって」
冗談交じりの笑いをしながらの会話は妙に弾んだ。
それに俺は一つ確信を得ていた。
俺みたいな転移者が来たんだし・・・俺じゃない転生者が生まれて来たら・・・?
"セダリア達に教えよう!"
そう思った俺は二人に
シロウ
「なぁ、セダリア、エステノ」
セダリア
「なんだい?シロウ」
エステノ
「なんでしょうか?シロウ様」
セダリアとエステノが俺に向き直し、俺は二人に切り出した。
シロウ
「俺って、この世界に転移者として勇者として召喚されたろ?だったらよ――――俺みたいな転移者じゃなくて転生者として生まれたらどうする?」
そう俺は二人に聞いてみた。
エステノ
「転生者・・・転移者とは違って新たな生命に前世の記憶を持って生まれる人の事ですよね?シロウ様」
俺は頷き
シロウ
「あぁ、もし生まれてくるであろう俺ら二人の子供の後代に転生者として生まれたらさ・・・・面白くねぇか?だってよ―――――」
――――その子が新たな朝日を迎える"革命"を起こすかもしれないだろ?
俺はそう言った。
二人は「さらなる革命かっ!」と目を輝かせていた。
勿論、当時の帝都民の暮らしは貧しいからな、村と変わらず。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
ディバイン
「それで、結婚前夜の日にあの双剣を当時まだ一介の商会娘だったお婆さんに渡したんだよね?」
シロウ
「勿論。彼女の腕利きは他に負けずとも劣らず。腕も鈍って無かったからね、商品を買いに来れやすいように飾ったりして客寄せの代わりとして使ってくれって」
目を細めたひいお爺様がそう言って俺の頭を撫でる。
シロウ
「俺は今はこうして女神達と共に天上から見守ってたんだ。やっぱり俺の言ってた事は間違って無かったな」
ひいお爺様がそう言うとゆっくり立ち上がって
シロウ
「さてと・・・もうそろそろ起きなきゃな。行って来な」
俺は頷き、そのまま――――――
ロック
『兄上、食事の用意が出来たのでお部屋から出て来て下さい』
目を覚ましたタイミングで廊下に居る次男坊のロックがドアをノックして聞いて来た。
ディバイン
「あー、もうこんな時間か・・・悪い!新しい召し物に着替えさせてくれるようにメイド達を呼んでくれ!その後にそっちへ向かう!」
俺がそう言うとロックは―――
ロック
『畏まりました、兄上。メイド達を呼んできますね』
ロックがそう言って立ち去って行った。
その後俺は新しい召し物・・・部屋着と言えば良いかな?その服に着替えてラフな格好で食卓の方へ行って食事を済ませる事にした。
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