第31話:自由行動2

「ははは・・・彼奴ら面白い」


 マキに引っ張られる俊哉と司を見ながら笑うのは竹下達。


「でも姫野大丈夫か?あの2人のスピード付いて行くの?」

「まぁ大丈夫じゃあ・・・あーぁ」


 言いかける竹下の目の先には、フラフラの司がいた。

 マキは気づいてないのか走っており、目的の場所に着いたのだろう走るのをやめる。


「着いた〜・・・って!司ちゃん?!」

「え?司ちゃん?!」


 マキが後ろを振り向くとフラフラになった司がおり、マキと俊哉が驚いた。


「だ、大丈夫?!」

「は、はいぃ・・・」

「ご、ごめんね!?」


 慌てながら謝るマキに“だ、大丈夫です〜・・・”と大丈夫そうには見えないが心配させまいと振る舞おうとする司がいた。


「マキ、止めてたのにダメじゃんか」

「ご、ごめんなさい・・・」


 俊哉に怒られションボリするマキ。

 すると後から来た明日香らが3人の元へと到着すると、ポカリと俊哉の頭を軽く叩いた。


「痛い!」

「トシもトシよ?手を離せば良いでしょ?」

「だって離したら転ばせそうでそれも出来なかったし」

「もう・・・司ちゃん大丈夫?」

「は、はい・・・大丈夫です」


 司の背中を摩りながら心配そうに話す明日香に、マキと俊哉2人はションボリする。


「ごめんねマキちゃん」

「ごめんなさい」


 俊哉とマキ2人が司に謝ると、司は慌てて“だ、大丈夫です!”と謙遜を言うのである。


「おーい、大丈夫か?」

「竹下。悪い司ちゃんフラフラにさせちゃった」

「お前、姫野とお前の体力差を考えろよ」

「申し訳ねぇ・・・」


 呆れ顔で話す竹下に申し訳なさそうに謝る俊哉。

 司の回復がてら休憩をする。

 テーブルが置かれた休憩ゾーンでジュースを飲みながら休む俊哉達。


「ごめんね司ちゃん」

「ううん もう大丈夫」


 謝るマキに笑顔で答える司。

 司が回復したのを確認するとハルナが司の手を取りながら話す。


「ちょっと見てみようよ。あっちとか面白そう」

「うん」

「私も行くー」


 司とマキがハルナの誘いに同調し立ち上がる。

 2人は俊哉の方を見ると、俊哉は笑顔で手を振りながら答える。


「俺はもう少し休むから行ってて」

「分かったー」

「あ、私も行くわマキ」

「おー、明日香も行こうよー」


 俊哉の言葉にマキは答え司、明日香、ハルナと一緒に行く。

 そして竹下らも“少し周りを見て行く”と言い立ち上がると俊哉を除く男子陣が立ち上がり席を後にする。

 また菫、真琴、絵梨、瑠奈の女性陣もパンフレットを手に“もう少し見て回るね”と言い席を立ち上がり歩いて行ってしまう。


「はぁ・・・」


 椅子の背もたれに体重をかけながらため息を吐く俊哉。

 するとふと目をやると、1人の女子生徒が残っていることに気づいた。


「あれ?由美っちはいいの?」

「私も留守番です 疲れました」


 俊哉の他に残ったのは由美。

 その後、2人は他愛も無い話をしながら過ごしていると、俊哉はマジマジと由美を見ながら話す。


「そういや、由美っちと2人で話すの初めてかも」

「そういえば、そうです 必ずパルなり司なりがいましたからね」

「だねぇ んー、なんか疲れたぁ」

「モテる男は辛いですね」

「モテるのかなぁ?顔も俺全然良く無いよ?」


 由美の言葉に俊哉は自分の顔を両手で触りながら話す。


「いえ、俊哉さんは顔では無いです。中身がいいんです」

「そうかなぁ?」

「そうですよ?でなければ、司がこうも男性に近づく事はないですよ?」

「そうかぁ・・・」


 照れながら腕を組み空を見上げる俊哉。

 褒められたのが嬉しかったのか顔は緩み切っており由美には見せられないようだ。


「ですので、私は司を押すのです」

「あはは・・・そう言う由美っちはいないの?いい人とか?」

「い、いいいないですよ?!私みたいなチンチクリンで胸もない女が、そんな・・・」


 俊哉からの質問に慌てながら話す由美。

 ワタワタとしながらも話す由美を見ながら俊哉は真剣な表情で話し返す。


「そうかなぁ?俺は由美っちは可愛いと思うけど?」

「か、可愛い!!?」

「え?だってさ、背が低くて目はタレ目気味でジト目だけど、それも由美っちの魅力じゃない?俺はそう思うけど?」

「そ、そんな事はあああ・・・」


 由美は下を向く。

 顔が真っ赤なのもそうなのだが、何の迷いもなく話してきた俊哉の顔を直視出来なかったのが一番なのだ。


(なななな何を言ってるですか!?俊哉さんは冗談にもほどがあるです!!でも、あの顔は冗談では・・・)


 そう思いながら俊哉の顔をチラッと見ると、俊哉は由美の視線に気づきニコッと笑みを見せる。

 由美はバッと慌てて下を向き直す。


(あの笑顔はマジですー!!)


 見れない!!

 そんな思いが頭の中を駆け巡り、また由美の胸はドキドキと大きく脈打っていた。


「ゆ、由美っち?」

「・・・大丈夫です」


 何とか落ち着かせ顔を上げる由美。

 俊哉は安心したように胸を撫で下ろす。


「全く、俊哉さんはイキナリ何を言うですか?」

「えー?だって由美っちがそう言うから素直な気持ち言っただけだよ?」

「それでも、その・・・イキナリ過ぎです。謝るのです」

「あ、はい。すみません?」


 キョトンとしながらも謝る俊哉。

 2人は可笑しくなったのか吹き出し笑い合う。


「はぁ、俊哉さんは不思議な方ですね」

「そう?」

「はい。だからこそ話し易いのかもですが」

「俺も由美っち話し易いな。誰とでも普通に話せるよね」

「あー・・・確かにそうですね」


 俊哉から言われ、由美は空を見上げながら今までの自分を思い返し納得したように答える。

 すると見て回ってきた他の生徒らが俊哉と由美の元へと戻ってくる。


「おーお待たせー」

「お疲れさんー」


 俊哉が椅子から立ち上がり皆んなを出迎える。

 そして女性陣も帰ってきて全員が集まった。


「そろそろ時間ですわね。では此処を出ましょうか」

『はーい』


 瑠奈の声に返事をする俊哉たち。

 時間が17時前となっており閉館の時間ギリギリまで遊んでいたことになる。

 円山動物園を後にし、彼らは再び札幌の街へと戻る。

 そして次なるイベント。



 夕食へと移行する。



 次回へ続く。

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