青色の下で・・・ Second season

オレッち

第零章:次なる物語のピース

第1話 宮原琢磨

第1話:宮原琢磨


「聖陵に入ります!」


 12月にそう宣言した青年がいた。

 その青年は短髪で顔は整っており、所謂イケメンとも呼ばれる程。

 そしてキリッとした眉毛が特徴である。


「え?・・・マジで?」

「マジです!」


 その真っ直ぐな目を向けてハッキリと言い放つ青年。

 彼の名は宮原琢磨みやはらたくま、静岡シニア所属の野球選手である。

 そして琢磨の向かいにおり少し困った表情をしているのは、彼の一つ上の先輩である横山俊哉よこやまとしやだ。


「迷いはありません!俊哉さんと野球がしたいんです!」


 堂々と、ハッキリと言う宮原琢磨。

 これは、彼が聖陵に入るまでのちょっとした物語である。

その発言から遡る事8月、シニア中学硬式野球全国大会が行われていた。

 東海地区代表の静岡シニアは前年度、陵應に入学した村神秀二と神坂龍司、そして聖陵に入学した横山俊哉らが全国優勝を果たしたチームである。

 代が変わり琢磨がキャプテンとして率い、最後の夏連続の全国大会出場を果たし大会連覇の期待がかかっていた。


「よし!いくぞ!」

『おぉ!!』


 ベンチ前の円陣で檄を飛ばす琢磨。

 他の選手たちもやる気満々で大きな返事をし試合へと向かって行く。


「ゲームセット!!」


 だが二連覇の壁は高かった。

 結果は大会準々決勝での敗退。

 しかも相手投手に完全に抑え込まれてしまっての完敗である。


「くそう・・・くそう!!」


 悔しがりながら球場の外で涙を流す琢磨。

 他の選手たちに慰められ、琢磨はキャプテンとしての最後の言葉を言う。


「ここまで俺について来てくれて、本当にありがとう。厳しい事も言ったし喧嘩もする事もあったけど・・・全国に出れて良かったと思う・・・本当に・・・ありがどう!!」


 ボロボロと涙を流しながら言葉を話す琢磨。

 こうして琢磨の中学野球が終わったのであった。


 それから飛んで一月ほど経ったある日。

 引退し、ただ時間が過ぎて行くのを待つのみの何とも言えない空間を過ごす琢磨の所に1人の男子生徒が話しかけて来た。


「琢磨ー」

「おう亮斗あきと


 亮斗あきとと呼ばれた男子生徒は背は低く150後半程、そして髪の毛は少し長めで若干タレ目が特徴の男子生徒だ。


「そういやさぁ、昨日ウチのシニアんトコにスカウトっぽい人が来たみたいだぜ?多分琢磨だよ」


「えぇ?俺を?」


 そう話す亮斗に琢磨は首を傾げながら聞き返す。


「そうそう。その前も来てたよな?」

「あぁ・・・そういや来てたかも」


 この時期になると高校野球部の関係者が目星い選手の元へと足を運び話をしに来る。

 勿論、琢磨も例外ではなくこれまでに何度か関係者の方々と話をした。


「でもさぁ、琢磨はブレないんだろ?」

「勿論」


 自信を持って話す琢磨。

 亮斗はポリポリと頭を掻きながら話す。


「お前の実力なら、何処行っても大丈夫だと思うんだけどよ?。何でって兄貴のいる聖陵なのさ」

「そりゃあ勿論」


 亮斗の問いかけ。

 琢磨は一息置きながらも、野暮な事を聞くなよと言わんばかりの態度、そして表情でハッキリと彼は言った。


「俊哉さんと野球する為に決まってるじゃん」


 宮原琢磨、中学三年生。

 彼はすでに心に誓って入る事があった。

 聖陵にいる横山俊哉と共に高校野球をする事。

 それだけである。


「相変わらずだねぇ、琢磨は」

「悪いかよ?」


 笑いながら揶揄い気味に話す亮斗にムスッとしながら話す琢磨。


「良いや。んでもよ、実際どうなのよ?聖陵以外に考えてとかは?」

「うん・・・まぁ考えても無かったけど・・・」


 亮斗の言葉に素直に答える琢磨。


「やっぱり明倭?」

「明倭は守備のチームで面白いと思うけど、ちょっと違うかなぁ」

「他に声かけてもらった所とかは?」

「県内なら、明倭、沼津東かな。県外なら神奈川陵應りょうおうに東京の羅新らしん、埼玉の悠岳館ゆうがくかんに北海道聖帝せいてい学園。他には京都天誠てんせいに兵庫鳴紅めいこうかなぁ」


 琢磨から出て来る高校の名前はどれも全国区の強豪校。

 しかもその高校全てに断りを入れたのだというから、ある意味凄い事である。


「強豪以外には?」

「まぁ1つ。東京の高校なんだけど・・・紀柳きりゅう高校って所。凄い強いわけでもなく、弱くもなくって所でさ。でも環境良さそうではあったけどな」

「しっかり調べてんじゃん」

「うるさいなぁ。良いじゃんか」


 亮斗の言葉にムッとしながら言い返す琢磨。

「結局、安打数は俺の二本だけ。1本目は内野安打で2本目のタイムリーを打ったヒットは、相手捕手のエラーからの動揺だからな。今度は全身全霊をかけて対戦して、今度こそ完璧なヒットを打ちたい」

「それこそさ、強豪に行けば良いんじゃね?」

「それこそ聖陵だよ亮斗」


 亮斗を指差しながら話す琢磨に、亮斗はハァッと溜め息をつく。

 これ以上は何言ってもダメだな。

 そう亮斗は琢磨に対して感じていた。


「そう言えば亮斗はどうすんのさ?お前勉強も出来るから、勉強できて野球強いとことか県内外にもいけるんじゃ」

「あぁ?、俺実際決めてないんだよね?」

「そうなの?勿体無いな」

「まぁ高校行って野球するのもぶっちゃけなぁ」

「なんだソレェ?」


 頬杖をつきながら話す亮斗に首を傾げながら言う亮斗。


「琢磨みたいに明確な目標ないからなぁ、俺は」

「ふーん・・・」


 亮斗の言葉に琢磨は何かを考えながらも、返事をしていた。


(聖陵に一緒に行こうぜ・・・と言いたいけど、こればっかりは自分の考え出しな。無理強いはさせれない)


 亮斗とはシニアでずっと一緒にやってきた、謂わば相棒だ。

 彼も聖陵に来れば力強い戦力になるはずだ。

 だが琢磨は無理強いはさせれなかった。

 亮斗には亮斗のやりたい事を優先してほしい、そう思っていたから何も言わなかった。


「そしたら、高校は別々だな」

「かもなぁ」

「なんだよ、その返事?」

「べっつに」


そう話しをし、互いに笑い合う琢磨と亮斗。


「さてと、明日はシニアで練習だ」

「大変だな」

「高校入るまで体鈍らせたくないからな」

「まぁ頑張れや」

「あぁ」


 互いに話をし、ニッと笑みを浮かべる。

 そして2人はそのまま別れて行くのであった。

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