『惑星パイダンの青い鳥』

やましん(テンパー)

『惑星パイダンの青い鳥』



 『これは、ほら、であることに、ご留意ください。』


        

        🌐



 惑星パイダンは、非常に地球とよく似ている。


 いや、地球が、パイダンによく似ていると言うべきだろう。


 意識航法が確立して以来、パイダンは新しい地球となった。


 違うのは、その広さだ。

 

 いや、広さという概念さえ通用しないらしい。


 まだ、この世界の果ては見つかっていない。


 とはいえ、パイダンが惑星であることは間違いがない。


 太陽があり、その周囲を公転しているから。


 にも拘らず、ここには、果てがない。


 その理由は、まだ解明されていない。


 

         🌐



 パイダンの名前は、不思議な生き物から来ている。


 この世界の主というべき、『怪鳥』、あるいは、『恐竜』である。


 その正体は、やはり、良くわからない。


 パイダンは、非常に知能が高く、人間がどうこうする相手ではない。  


 人間が現れたとき、パイダンは、特に抵抗もしなかったが、ひとつだけ約束がかわされた。


 パイダンは、眠っている人間を、食べる権利を有する。(建物の中と、赤ちゃんは、除く。)


 人間は、人間を食べようとしているパイダンを撃退して構わないが、パイダンを殺してはならない。


 それ以外の状況では、お互いに無干渉とする。


 人間はパイダンの住む場所は守り、パイダンは、人間が住む場所は守る。


 それが、破られないかぎり、人間はこの世界で自由である。


 つまり、パイダンは、人間の街に自由に出入りするし、起きている人間とは、仲良しである。


 人間は、パイダンの街に自由に出入りするし、自分が寝ない限り、パイダンとは仲良しである。


 ちょっとまて、それじゃ、人間は、不利だろう。


 まあ、仕方がないのだ。


 この世界は、もともと、パイダンの世界であり、パイダンは眠らないのだから。

 


 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 


 パイダンは、派手ではないが、美しい。


 身体中の羽毛を、自由自在に操り、様々な模様を浮かび上がらせるし、文字も描く。


 それで、人間と意思の疎通が出来るのだ。


 かれらは、ときに、仲間たちと一緒に現れて、華麗な羽毛ショーを見せてくれる。


 それは、もう、感動的な光景である。



        🌐



 パイダンが人を襲うときには、まず、羽毛を伸ばして、海のように舞う。


 それから、青い羽毛を長く伸ばして予告し、次に、真っ白な一本の吸入毛をスッと伸ばして、しばらく宙に踊らせ、それから、目当ての相手の体に突き刺すのだ。


 栄養になる体液は、すべて、いただきます。


 だから、多少時間がある。


 その間に気がついて、起き上がれば、おしまいで、パイダンは捕食行為を止める。


 だから、人間が外に出るときは、心配ならば、一人で出掛けないことが、こつである。


 老人などは、特にそうだ。


 つい、ベンチとかで、うつうつしやすいから。


 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・



 あるひ、やましんは、非常に疲れていた。


 だから、ついつい、昼寝をした。


 寝始めたときは、確かに、屋根も壁も、あった。


 でも、いつの間にか、屋根が、壁が、無くなっていた。


 向かいの建物のひさしに、パイダンが現れた。


 捕食のダンスが始まったのである。


 やましんは、半分目が覚めかけていたが、いわゆる、金縛り状態になっていた。


 屋根や壁が、巻き取り式になっているのは知っていたが、まさか、実際に巻き取るひとがいるとは、思わなかった。


 青い羽毛が延びてきて、その中に、真っ白な羽の変化した、美しい吸入毛が延びてきていた。


 『わ、わ、わ。たしけて。喰われるう。もれちゃう。』


 やましんは、叫んだ。


 叫んだのが、良かったのである。


 ふらふらながら、なんとか、起きあがれたのだ。




 パイダンは、飛び去った。




 やましんは、お手洗いに急いだ。


 


 屋根を巻き上げた人の影が、消えていった。


 



 ほんとのような、ほら、である。

 


 

      ・・・・・・・・・・🌐

 

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『惑星パイダンの青い鳥』 やましん(テンパー) @yamashin-2

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