ざまぁされるのが確実なヒロインに転生したので、地味に目立たず過ごそうと思います

第10話

　さて、どうやって助けを呼ぼうかと思ってたら、体育倉庫の扉が開いた。

　良かった。誰か気付いてくれた人が居たんだ。開けてくれた人にお礼を言おうと思った私は、その人物の顔を見て固まってしまった。何故ならここに居るはずの無い人物だったからだ。

「オーッホホホッ!　お久し振りですわねぇ、汚ならしい平民さん。私のことを覚えていらっしゃるかしら?　それともその卑しい脳味噌では、三歩歩いたら忘れちゃうのかしら?　オーッホホホッ!」

　なんでここにカミラが居る!?　退学になったはずだろ!?　有り得ないだろ!?　私の頭は混乱して、

「ど、どうしてここに! ?」

　そう言うだけで精一杯だった。

「オーッホホホッ!　私に力を貸してくれる方がまだこの学園にもいらっしゃるのよ?　知らなかったでしょう?　オーッホホホッ!」

　そういうことか!　そのパターンもあったのか!　手を貸したのは誰だ?　アマンダか?　レイチェルか?　それともエレノアか?　あとイチイチ「オーッホホホッ」を付けんな!　ウゼェ!　そうしないと喋れない病気かなんかなのか!?

「...一体なにをしに?」

「決まっているでしょう!　あなたに復讐するためよ!」

「復讐って私はなにも...」

「お黙りなさい!　あなたのせいで私は破滅したのよ!　お父様は私を廃嫡して修道院に送るっておっしゃったわ!　信じられる!?　私をあなたと同じ卑しい平民に落とすっておっしゃるのよ!?　そんなの許されていいはずがないでしょう!?　私が!　この高貴な私が!　平民になるだなんて!　神をも恐れぬ所業だわ!　あなたもそう思うでしょう!?」

　いっそ清々しいくらい完全な逆恨みなんだが...どうやら何を言っても無駄みたいだ...で?　結局の所なにしに来たんだ?　私に恨み言を言いに来ただけじゃあるまい。

「私だけが地獄に落ちるなんて不公平だわ!　あなたもそう思うでしょう?　だからね」

　そう言ってカミラが指をパチンと鳴らすと、カミラの後ろからスラム街に居そうな感じの破落戸が３人現れた。

「あの時は詰めが甘かったけど、今回はそうは行かないわ。なにせここには窓が無いもの。卑しい平民に相応しくなるように、身も心もたっぷりと汚して上げるわ!　覚悟なさい!　オーッホホホッ!」　

　カミラの狂ったような...いや、実際にはもう狂っているんだろう...笑い声を聞きながら、私は周囲を見回す。あった!　確かに窓は無いけど、ここは体育倉庫。お目当てのモノを見付けた。

　下卑た嗤いを浮かべながら近付いてくる破落戸どもが、私に触れようとした瞬間、私はサッと身を翻した。

「このっ!」

　追って来た破落戸どもが追い付く前に、私はグラウンドのライン引きの中に手を突っ込み、ラインパウダーを掴んで破落戸ども目掛けて投げ付けた。

「うわぁ!　め、目がぁ!」「なんも見えねぇ!」「目が!　目が痛てぇ!」

　破落戸どもがその場でのたうち回る。私はラインパウダーを吸い込まないようにハンカチで顔を覆いながら、体育倉庫の出口を目指して走った。そして出口付近に居た、

「なっ!?　あんたら何やってんのよ!?」

　と叫ぶカミラにもラインパウダーをお見舞いしてやった。

「ウギャアッ!　目がぁ!」

　踞るカミラの横をする抜けようとしたが、

「待ちなさい!　逃がさないわ!」

　カミラに足首を掴まれた。しつこい!　力任せに引き剥がそうとした時だった。　

「お嬢様!?　大丈夫ですか!?」

　体育倉庫の中に誰かやって来た。しまった!　あれは侯爵家の使用人か!?