第8話

 怖い怖い怖い...マジで怖い...


 サンドラの目的は私を消すこと。文字通り私を消そうとしている。それが分かってしまうから怖くて堪らない...


 これが分かりやすい虐めとかなら、親しくなったマリク殿下やキース様に相談するという手もあった。だがサンドラのやってることは、あくまで過失という体を装おって巧妙に殺意を隠している。


 狡猾なやり方だ。端から見れば単なるドジっ娘にしか見えないだろう。実際、彼女の周りの人達は天然だと思い込まされているらしい。その裏に隠された殺意に気付くことなく...


 これではいくら私が訴えても、誰も信じてはくれないだろう。自衛するしかない。だがこのままずっと受け身で居続ければ何れはジリ貧になってしまう。


 自分から動くしかない。私は考えを巡らせる。そこでふと気付いた。なぜサンドラは私の行く先々に現れるのか? 私が気付いていないだけで、後を尾けられているのだろうか? だったら逆に、私がサンドラの後を尾けて行けば攻撃を受けることはないのでは? そう思った私は、早速次の日から実行に移すことにした。



◇◇◇



 次の日の朝、いつもならとっくに教室に入って自分の席に着いている時間。私は廊下の隅に隠れて観察している。するとクラスが違うサンドラがやって来た。クラスの中を覗き込んでいる。私の姿を探しているのだろう。居ないと分かると去って行った。なるほど、いつもこうやって確認していたのか。


 お昼休み。いつもなら席で少しまったりしてから食堂に行くが、今日は今朝と同じように廊下の隅に潜む。するとサンドラがやって来た。今朝と同じように私の姿を探している。居ないと分かると去って行った。私は後を尾ける。


 食堂に着いたサンドラは、周りをキョロキョロと見回している。私の姿を探しているのだろう。居ないと分かるとなんだかガッカリしているように見える。私が今日は休みだとでも思ったのかも知れない。


 放課後。いつもなら席で少しまったりしてから帰るが、今日は今朝と同じように廊下の隅に潜む。今度はサンドラはやって来なかった。


 こうしてしばらくは、サンドラのとの接触を避ける日々が続いた。



◇◇◇



 その日は珍しく朝からサンドラがやって来なかった。お昼休みもだ。放課後もやって来なかったので、ちょっと安心した私は、3階にある図書室に向かった。図書委員をやっているので、その仕事をするためだ。


 仕事が終わって帰ろうと階段に向かっていた時だった。視界の隅にチラッとサンドラの姿が見えたような気がした。驚いて足を止めた私を、男子生徒が追い抜いて行った。そして...


「うわぁっ!」


 叫び声がしたので階段下を覗いて見ると、そこには倒れた男子生徒と、何やら液体の入ったビンを手に持って呆然としているサンドラの姿があった。

 

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