シンと僕とリターン
シンとリターン
僕が本社に転勤になって1か月が経とうとしていた。
「なぁ、シン、なんか会社が変な感じと思わないかい?」
「うん、そうだねぇ。」
その間、会社は大きな社内改革に着手していた。
車内がバタバタしている中、人事部の同僚が、妙な話をして来た。
女性人事の改革をするらしい。最初はふんふんと聞いていたが、
「元社員で、今北九州でバリバリ働いているこの彼女って、お前の彼女だろって。」書類を僕に見せて来た。「えっ、どういう事?」
「シン、どう思う?」
「とりあえず話を聞いてみようよ。」
「会社は彼女を欲しがってるんだ。今とにかく働ける女性が欲しいらしい、しかも彼女なら元社員という事もあり、当時からの仕事ぶりも評価されているしね。さらに今働いている会社はうちの関係会社らしいじゃないか。」「えっそれは初耳だよ。」
「いや、間違いないはずだよ。」「そうなのか。」
「言っても無駄かも知れないけど、内緒だよ。」と言って彼は去っていった。
当たり前だ、だまっておけるはずがないだろう。
僕は彼女に、プライベート用のP.Cでメールを打った。タイトルは”考えて欲しい案件”にした。
すぐに彼女からLINEが入った。「今晩電話できる?」とメッセージだった。僕も間髪入れず「O.K」の返事をした。
「なぁ、シン、彼女はどうするかな?」
「聞いてみなきゃわからないよ。」
やはり僕の会社から、アクションがあったようだ。
会社対会社で、人事トレードと言う話だった。僕の会社の北九州営業所の女子社員と、彼女が入れ替えにという話だった。ただ、これは、双方本人の意思に任せるというものだったそうだ。
それから2か月後庶務一課の部屋では「彼女が今日から君たちのグループリーダーになる。よろしくしてやって欲しい」と彼女が紹介されていた。
僕とリターン
いよいよ本社に復帰だ、肩書は多少気にするが、とにかく本社だ。
新幹線の中で僕は決意を新たにしていた。
駅には彼女が待っていてくれると言っていた。
彼女との暮らしも楽しみだった。
新幹線が東京の駅に滑り込んだ。
僕は早く彼女の顔が見たくて駅に着く随分前にドアの1番前に立って着くのを待っていた。
ドアが開くとすぐに彼女を見つける事が出来た。
手を振りながら「ただいま。」と言うと「おかえり。」と笑顔で迎えてくれた。
「どこにも寄らなくていい?」と彼女が聞いて来た
「アルにも会いたいし、真っすぐ帰ろう。」
「なんかアルにでさえヤケちゃうな、でもそうしよう。」と彼女がいった。
僕たちは、真っすぐ家に帰る事にした。
家に着くと、彼女が荷物を持ち、僕に鍵を開けて先に入るよう促した。
彼は「じゃぁ」と言って、鍵を開け、「ただいま。」と言って家に入った。彼女も続いて「ただいま。」と言った。
僕が荷物を片付けていたら、彼女が手伝ってくれた。そして「出勤の準備は時間かかりそう?」と聞いて来た。「いや、大体済ませて来たから、昼まではかからないよ。」と答えたが、何か企んでいるようだった。
「じゃあ、今日は、おうちデートしない?1歩も出ずに。」
「やっぱりか、もちろんいいよ。じゃあ早く片付けてしまうね。」
いつの間にかアルが僕の足元が当然定位置とばかりに、すり寄っていたが、「アル、ちょっとだけバタバタするよと言って、明日の段取りを始めた。
準備が終わったのは昼前だった。「ちょっと早いけど、お昼にしない?」と言うと、「もうお腹ペコペコだよ。準備中ずっといい香りが家中ただよってるんだからね。」「実は昨日から準備してたんだ。」「そうだと思ったよ。」
昼食を食べ、昼からは、サブスクで映画を見たり、好きな音楽を聴きながら、話をたくさんした。夕食を食べ、眠りに着くまで、話尽くした。まるで、今までの会えなかった時間を埋めるように。
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