私達なら

『8-2で死ぬ可能性もあるってことだよな!?』

 冒険者の1人が問いかけたそれは、冒険者であれば当然の疑問でした。何しろ前金の小金貨20枚という報酬ですら、腕に自信のない冒険者であれば尻込みするという難易度の依頼の報酬の相場ですから、それを前金で支払って、さらに成功報酬で80ともなれば、明らかに危険度は桁違いということでしょう。

 加えて、冒険者の多くは必ずしも忠誠心が高いというわけではないので、自分達の命が危ないとなれば、依頼を放棄して逃げてしまうこともある。つまり、前金だけをもらって依頼は果たさずに逐電してしまうんです。

 もちろん、そのような事をすれば冒険者としての信頼は地に落ち、ギルドに知られれば冒険者としての登録を抹消されてしまうことさえある、重大な信義則違反。

 とは言え、命には代えられないので、軍のように敵前逃亡の罪で罰せられるということはありません。そういう諸々から考えても、敵の戦力を少しでもいでくれたらいい。下手をするとそれこそ単なる数合わせということもあり得る依頼ですね、これは。

 スケルトン兵は、戦闘力そのものはさほど高くないけれど、完全にバラバラにしないと無力化できない面倒な相手で、それが300ということは、かなり厄介な状況だということではあります。

 普通に考えれば、軍の主力がミノタウロスに集中するために、冒険者達にはスケルトン兵の相手をしてもらいたいというのが狙いでしょうか。

 それでも、スケルトン兵300、ミノタウロス20、万が一、敵の真ん中で孤立しても、守りを固めれば、私達なら凌ぎきることができる。

 その上で、ティフォリアの弱体化魔法が十全に効果を発揮すれば、むしろ楽な仕事でしょう。もしそうなれば、今回の依頼を引き受けた冒険者達は、実に美味い仕事を得たことになるでしょうね。

 何よりドゥルカは、この世界を救った勇者の力を受け継いだ、小さな勇者。ドゥルカの父親なら、今回の敵ぐらい、単騎で突入して、たちどころに片付けてしまう。さすがにそこまでは真似できなくても、ドゥルカでも負けることはない。

 だから私は、

「この依頼―――――」

『この依頼、引き受けます』

 と応えようとした時、

「この依頼、受ける」

 先にそう言って手を上げた人がいました。ナフレリグァヌ・レゾヘでした。

 すると、堰を切ったように、

「俺も受けるぞ!」

「俺もだ!」

 って、わらわらと。

 完全に出遅れた形にはなったけど、私も手を上げます。

 しかも、見ると、手を上げた人達の中には、ナフレリグァヌ・レゾヘとドゥルカにのされた<ならず者>達の姿までも。

 やれやれ、大丈夫なんでしょうか。

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