第39話モモ子、夏バテか

39,モモ子、夏バテか


 夏になってモモ子の食欲が落ちた。


異常にハーハー言っているように感じた。


去年の夏、こんなに気ぜわしい息をしていただろうかと


思い返してみたがはっきりしない。


ぐたっとして玄関のたたきの上に寝そべっている。


時々、目を開けては暑いよぉ暑いよぉどうにかしてよと私の顔を見る。


少しは涼しくなるかと扇風機の風を当ててやるが風が当たるのは嫌いらしく


場所を移動してしまう。


エサも食べようとしない。


手に取って一粒ずつ与えるが口に入れたまま噛もうとはせず、


ポロリと下へ落としてしまう。


食いしん坊のモモ子が食欲ないなんて珍しい事である。


一応、病気を疑って目や耳、口の中、舌の色、息の臭い、便の形、色、臭いなどを


見てみるが特に異常はない。


ただの夏バテだろうと思ってはいたが去年の事を思い返すと食欲は無いとは言っても


いつもなら夜、食べるべき物を食べ残し、朝になって残りを食べるということだった。


この方法は他の犬もやっていたことだったので食欲がない分、二回に分けて食べる方法を


編み出したのだろう。


二回に分けても食べきれない場合は少し牛乳をかけてやると


たいがいはぺろりと食べてしまう。


少なくとも半分は食べるのに今年は食べる様子が無い。


鼻先にエサを入れた器をおいたまま寝そべっている。


もっとおいしいものを頂戴と言いたそうな不貞腐れた上目使いで私を見ている。


そのままにしておくと鼻先で器をひっくり返して餌をばらまいたり、


傍に置いてあった足拭きようのタオルを器の上にのせて


かくしてしまったりする。


猫の場合は基本的には縁側に置いてある犬用の餌を食べているので


量を決めて器に入れるわけではないのでわからない。


どの位の量を食べているのかも、一日に何回食べるのかもよくわからない。


家の中では魚の骨などを食べるがいつもと変わらない食べ方である。


でも、好き嫌いが激しい。


魚の骨はイワシ、サヨリ、小肌などは好んで食べるが


マグロ、カサゴ、サバなどは嫌いらしく臭いを嗅いで好きな魚が無いと


プイッと二階へ上がって二階の窓から台所のひさしの上に行き、


風呂場の窓のひさしにポンと飛び移ってから裏庭へ降りて縁側にあるエサを食べに行く。


サッシの窓を開ければすぐなのだがそれには気が付かないらしい。


モモ子なら目で訴えて窓を開けさせるのに・・・


袋の中に潜ってポッポッと餌を食べる音がする。


時折思うのだが猫は体重のわりによく食べる。


例えばモモ子の体重は三十七キロで餌は一日に丼一杯。


ニャオちゃんの体重は三キロか五キロ位だと思うが


同じ餌を丼半分位は食べていると思う。


それは別として一週間もするとモモ子の食欲も回復してきた。


暑さに慣れてきたのだろう。



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