第10話近所の猫事情

10,近所の猫事情


日を重ねるにつれ猫はだんだんと家の中にまで入ってくるようになった。


もちろん、それを黙認しているのはこの私なのであるが・・・


例によってモモ子は私が帰って来てもすぐには二階から下りては来ない。


降りてくるまでの数分間だけ猫は家に入り探索する。


玄関から左手に居間、その奥にインコのいる台所があった。


そのインコの籠のところまで行って「こんにちは」と挨拶をしている。


この猫はお嬢様育ちらしくインコの事を獲物という目で見ないで同じ動物として、


あるいは物珍しいものを見たという好奇心で眺めているようだった。


一方、桃太郎の方はそうはいかない。


『フー!フー1』と鼻息を荒くして威嚇している。


桃太郎を興奮させても高齢なので、具合が悪くなってもいけないと思い


猫を桃太郎の方に近づかせないようにする。


モモ子に感づかれる前に抱き上げて庭へ出す。


ある日、猫を抱いていると近所の奥さんが通りかかったので、そのまま世間話をする。


その間ずっと腕の中にいる猫を見て野良だと説明すると驚いたり羨ましがったりしている。


その奥さんの家は数匹の猫を飼っていた。


その中にはその家で生まれて目も明かないうちから飼っている猫もいるのに


抱いても数分もしないうちに腕から抜け出してしまうらしい。


野良猫が、しかも大人の猫が数十分も私の腕の中でじっとしているのを見て驚いているらしい。


この奥さんは近所の猫事情に詳しい。


△△さんの家の猫と✖✖さんの家の猫は仲が良いとか、


白地に黒のブチが道向こうから渡って来るとか。


○○さんの家の裏庭で野良猫が子猫を三匹生んだので★★さんと◎◎さんで


一匹ずつ引き取ったとか・・・


その情報の中には私の家の縁側の餌を食べにくる猫の数も入っているようだ。


私はこの腕の中にいる猫どこから来るのか、飼猫なのか野良なのか知っているのか聞いてみた。


もしかしたらその豊富な情報の中にあるのかもしれないと思ったからだ。


だが、答えはノーであった。


最近見るようになっただけでどこからやって来るのか知らないという。


なんだかホッとしていることに私は気が付いた。






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