第35話 開幕! 第5班対第1班
「それでは、第5班と第1班の試合をはじめます! 両者は準備をしてください!」
やる気満々で、闘技場へと向かった僕達。そこで僕達を待ち構えていたのは、もうすでに準備を済ませた第1班のメンバーだった。アルフレッドを先頭に、スウとナオビは、少し不満そうな表情を浮かべたまま、アルフレッドの後ろに立っていた。
もうその様子だけでリアは、アルフレッドが1人で戦うつもりであると言うことがすぐにわかった。その事実が再びリアの闘志に火をつける。
――このまま、このまま舐められたままで終わってたまるか!
客席から見ていた生徒達は、もうすでにこの勝負の結末がどうなるか、確信している者がほとんどだった。第6班相手にあれだけ圧倒的に勝利を飾った第1班。もはや、同期の中でアルフレッドの勝てる者がいるとは、だれも思っていなかった。
しーんと静まりかえる闘技場。そんな中でふとリアの耳に1人の少年の声が届く。
「リア! やっちまえ!」
その声の主はカシン。医療班のお陰ですっかり回復したカシンは、だれもがアルフレッドが勝利するであろうと思っていた空気の中、1人、リア達第5班に向けた応援の声を上げたのである。
そんなカシンに向けて拳を突き上げたリア。その光景を見ていた一部の生徒達の間から、苦笑いを含んだ声があがる。
「……あいつら、本当にあのアルフレッドに勝てると思っているのか……? バカだろ?」
リア、そしてカシンをあざ笑う声。そんなクラスメイトの声に、珍しく声を荒げたのは、第1回戦でリア達と戦った第4班の代表、グランだった。
「今、リア達を笑ったのは誰だ! 勝負はやってみるまでわからないだろう! これから全力を尽くして戦おうとしているクラスメイトを侮辱する奴は僕が許さない!」
「グラン君……」
そして、再び声援を送ったカシンに遅れて、グランもリアに向けて声を上げる。
「リア! 君達は僕達を倒したんだ! 自信を持って!」
カシンやグランの声援に、口元が少し緩んだリア。
――2人とも、ありがとう…… でも、僕は…… 僕達は大丈夫! 最初から、諦めてなんかいないよ!
リアもソールも、そしてルウも、第5班のメンバーは皆、アルフレッド相手に勝つつもりしかなかった。真剣な表情でアルフレッドを見るリア達3人。
そして、自らの教え子達の諦めていない様子を見た彼らの担任、イーナもまた口元を少し緩めた。審判という立場上、いーなとて、自らの教え子を大々的に応援するというわけにも行かなかったが、心の中では全力で応援していた。
――リア、ソール、ルウ。君達なら大丈夫! アルフレッドに…… 第1班のメンバーに、皆の力、見せつけてやりなよ!
そんな思いを込めながら、イーナは口を開いたのだ。
「それでは、第5班対第1班! 試合開始!」
「炎の術式! 紅炎!」
「氷の術式! 雪月花!」
最初から手加減なんかいらない。試合開始と共に、すぐに術式を発動させたのはリアとルウ。炎と氷、2人の魔法のコンビネーションが、試合開始早々アルフレッドへと襲いかかる。
「波道…… 防!」
先ほどの試合でカシンの攻撃を防いだのと同じように、手を上げたアルフレッド。そして、カシンの時と同じように、防がれたリア達の攻撃。だが、そんな事はリア達もわかりきっていることだ。
「これならどう! 水の術式! 水竜!」
間髪入れずに、発動するソールの魔法。それに対しても同じように、手を上げて防ぐアルフレッド。相変わらず余裕綽々といった様子で、その場を動かないアルフレッドを前に、リアは必死に考えを巡らせていた。
――あの波道という魔法。さっきの戦い、それに今の僕達の魔法を防いだ辺り、弱点はなさそうだ。それに、ファロンやカシンの戦いを見る限り…… 近接攻撃にも対応できるみたいだし……
魔法攻撃をむやみやたらと繰り出したところで防がれてしまうと言うことはわかった。それは試合前から想定していたことだったので、今更特段驚くことでもない。
――次のプラン! アルフレッド君が…… どれだけあの魔法を連発できるか!
試合前にリアは、いくつかの勝つための筋道を考え、ソールやルウと共有していた。最初の案、もしかしたら波道にも弱点があるかも知れないという考えは、どうやら期待できなさそうな様子だが、それならそれで、次のプランがあった。アルフレッドに勝つための第2の可能性。それが、波状攻撃である。
「炎の術式! 紅炎!」
リアを先頭に、時間をずらしながら次々と魔法を繰り出していく第5班のメンバー達。だが、短い間隔の攻撃にもアルフレッドは難なく波道で防いでいく。次々と繰り出される炎、水、そして氷の魔法を防いでいくアルフレッド。炎と水と氷、3つの属性が入り乱れる、そんな闘技場の色鮮やかな光景に、先ほどまでアルフレッドの勝利を確信していた生徒達も、徐々に目を奪われはじめていた。
「すげえ…… あいつら……」
「でも、アルフレッドも全部的確に防いでいるし…… それになんと言ってもあいつ、まだ手の内を全く見せていないしな……」
何度か連続して攻撃をしたのちに、攻撃の手を緩めたリア。このまま攻撃を続けたところで、おそらくアルフレッドに対しては無駄であろう。むしろこのままではこちらの魔力を無駄に使ってしまうだけと言うことにもなりかねない。
そう思っていたリアにむかって、全くその場を動かないまま、的確に攻撃を防いでいたアルフレッドが表情を全く変えないまま、口を開いた。
「……もうこんな小細工は良いだろう。 俺はお前達の全力を、完璧にたたきつぶす。さあ、来てみろ!」
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