第29話 『第5班 vs 第4班』
「対戦相手も決まったところで、早速、第1戦に入ります。第4班、第5班は準備に入ってください!」
僕達、第5班の初戦は第4班。ヨツハ先生の率いる第4班は、爽やかイケメン『グラン』を中心に、可愛らしい風貌の少女『ミーナ』、そして、すばっしこい小柄な獣人族の少女『ソン』の3人である。
彼らの能力については、まだよくわかっていない。対してこちらは、水属性魔法使いのソール、そして氷属性の魔法のルウ。相手の能力はわからないが、能力のバランスで言えば、僕達の班はなかなかバランスが取れているだろう。
試合の準備を済ませ、闘技場へと出た僕達。
――やっぱり最初だし、恥ずかしくない試合をしないと!
そう気合いを入れたリアに、相手チームの代表グランが近づいてきた。
「リア君、僕は君達と最初に戦える事、嬉しく思うよ」
「僕達と?」
「君達第5班は、いきなりレッドリストの堕魔達とやり合ったんだろう? そして、キミは堕魔に一撃を入れたと聞いている。僕はキミ達にも注目していたんだ。それに見て見なよ」
そう言って座席の方を示したグラン。座席に座ったクラスメイト達が、僕達の試合の行方に注目している。第1班のアルフレッド君も、僕達のいる闘技場へと視線を向け集中しているようだった。
「皆ももう君達の噂は聞いている。だから皆こうして注目しているんだ。だけど僕達だって、ただ後塵を拝しているだけというわけにもいかない。君達を倒して、僕達も零番隊へと近づく」
そう口にしたグランの眼差しは真剣そのものだった。この時リアは気付いたのだ。
――ああ、そうか、ずっと僕達は第1班を、アルフレッド君の背中を追い続けているだけだと思っていたけど…… 僕達の力にだって、皆注目しているんだ。
リア達第5班が、すでにS級堕魔『ギール・グール兄弟』と交戦したと言う事は、学園の皆が知っていた。いくら先生が付いているとは言えど、S級堕魔相手に生き残ったという事実はクラスの皆が注目していたのだ。
――だったら、なおのこと恥ずかしい試合を見せるわけにはいかない。イーナ先生のためにも!
そして、審判を務めるイーナの方へと視線を送ったリア。リアの視線に気付いたイーナは小さくウインクを返す。それだけでイーナのメッセージをリアに伝えるには十分だった。
――頑張れ、リア。ソール。ルウ。
そして、イーナ先生の可愛らしい声が闘技場にこだました。
「では! 第1戦開始!」
「先手必勝ぉぉぉ!」
イーナの声と共に、突っ込んできたのは小柄な獣人族の少女、『ソン』。風のような速さで突っ込んできたソンに、身構えるリア。近接戦闘は、女子ばかりの第5班において、リアの担当だった。
模擬戦と言うだけあり、武器の使用は認められてこそいるが、真剣ではなく模擬刀。模擬刀に手をかけたリアはそのままソンの攻撃に剣を合わせる。
どんと大きな音が闘技場にこだまする。ぶつかり合う剣と、ソンの脚。武器をもたないソンだったが、その驚異的な身体能力を生かした体術は、武器を持つ敵以上に脅威と言えた。
「まだまだぁ!」
次から次へと繰り出してくる激しい蹴り。それにしても様子がおかしい。ただの蹴りがこれだけの威力を出すことが出来るのだろうか。油断をすれば、模擬刀が吹っ飛んでいきそうなほどの威力の蹴りに、リアは剣を合わせて防ぐのが精一杯だった。
「さすがだね! 私の蹴りにも合わせるか……」
「……ぎりぎりだけどね……」
にやりと笑みを浮かべるリアとソン。既に2人は戦いに愉しみを感じ始めていた。近接戦闘のぎりぎりのせめぎ合い。少し油断をすれば一気にやられてしまうと言う緊張感。それがリアにとって、そしてソンにとっても快感になりつつあったのだ。
そして、座席から試合の行方を見守っていた生徒達の間からも驚きの声が上がる。
「おお! すげえ! なんだあの蹴り!」
「でもあの攻撃を防ぐリアのやつもやるな!」
第1戦からボルテージが上がる生徒達。そして、その熱量に合わせさらに攻撃を加速させていくソン。
「これでどうだ!」
そして、もう一撃繰り出されようとしたソンの蹴り。合わせようと剣を構えたリアだったが、すぐにリアは背後から迫っていた別の気配に気が付いた。
「敵はソンだけじゃないんだよ。まずはキミから倒させてもらう!」
「私達もいるんだからね!」
そう口にしたのはグラン。ソンの蹴りにすっかり気を取られていたリアは、近づいてきたグラン、そしてミーナに対して反応が出来なかった。隙だらけのリアの側面から魔法を発動しようとしていた2人。リアは完全に挟み撃ちに遭っていた。
「風の術式……」
「氷の術式!」
――やられる!
「水の術式!
「氷の術式!
やられる。リアがそう思った瞬間、こだましたのは、ソール、そしてルウの声。そして、魔法と魔法がぶつかり合い、大きな爆発音が闘技場内へと響き渡る。
包囲されたリアを包み込むように、両方向に生成された水と氷の盾は、グラン、そしてミーナの発動した魔法からリアの身を守ったのだ。
「あなたたちこそ、リアに気を取られすぎじゃない?」
「こっちだってそう簡単に負けるわけにはいきません。お姉様と相まみえるまでは…… ルウも負けるわけにはいかないのです!」
そして、援護をしてくれた2人の元へと合流したリアはチームメイトの2人に向かって言葉をかける。
「ありがとうソール! ルウ! 今度はこっちの番…… 先生に鍛えてもらった…… 第5班の連携も、相手に見せつけてやろう!」
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