第14話 担当教官は誰?


「ここまでが第4班ね!」


 続々と自らが所属する教師を発表されていく生徒達。ここまで零番隊の壱の座ミドウ、そして弐の座アルトリウス・ルシファーレン、参の座ミズチ、肆の座ヨツハと、零番隊の順列に従って班が決められてきた。


 そもそも零番隊は王の直属の部下となる、10人の討魔師からなる組織である。それぞれ圧倒的な実力を持つ討魔師達であるのには変わりないが、基本的には上位になればなるほどその影響力を増していくと言われている。そして、零番隊五番目の討魔師、伍の座に座る討魔師が、リアやソール達の担任となるイーナであるのだ。


「じゃあ、次、第5班。えーっと…… 担当は私になります!まずは…… ルウ!」


「はい!」


 竜人族の姉妹の片方であるルウ。第1班で呼ばれたスウの片割れとなる少女。スウよりかは少し子供っぽいと言うか、まあおそらくはルウの方が妹なのだろう。どこか幼く見えるような、そんな少女だった。


 ここまで、まだ名前を呼ばれていなかったリアとソール。ソールがリアにささやきかける。


「せっかくだから、イーナ先生だったら良いね!」


 そういえば、ソールの憧れの討魔師はイーナであった。ミドウの元で学ぶというリアの夢は叶わなかったが、せめてソールには何とか叶えて欲しい。そう思ったリアはソールに頷いた。


「そうだね!」


 そう、リアが言葉を返したのと同時に、イーナの声が重なる。


「次、ソール!」


 急に自らの名前を呼ばれたソールはびくりと身体を震わせた。そして、少し遅れた後に、「はい!」と元気よく立ち上がったのだ。ソールの表情からは笑みがこぼれていた。ソールの夢が叶った瞬間、リアも嬉しそうなソールの様子を祝福するように眺めていた。


――まあでも、せっかくだったら、僕もイーナさんの元で学びたかったな!


――そうだね! イーナ様すごくお優しいし!


 そんなやりとりをルカとしていたリア。そして、イーナの班の所属となる最後の1人の名が告げられた。


「最後の1人は…… リア!」


「はいっ!?」


 思わず、呼ばれた自分の名前に反応して声が裏返ってしまったリア。周囲の視線が一気にリアへと集まる。一気に顔が赤くなるリア。困惑のあまり、今何が起こっているのか、リアは全く状況を読み込めていなかった。


「ルウ、ソール、そしてリア。3名が私の第5班になります。これからよろしくお願いします」


「お願いします!」


 ぺこりと一礼をしたイーナに、慌ててリアも元気よく声を上げながら頭を下げる。突如として元気な挨拶をしたリアに、再び入学生達の視線が集まる。すっかりテンパってしまって忘れていたが、ここまでは名前を呼ばれた入学生達は最後、一礼するだけで、リアのように元気よく挨拶をした者は誰もいなかった。


 そそくさと着席するリア。穴があったら入りたい。いきなり入学式から目立ってしまったリアは座席で顔を真っ赤にしながら、そう思っていた。


――よかったね、リア! イーナ様だって!


 無邪気そうに喜ぶルカ。全く人の気も知らないで…… 


 そしてもう1人、笑みを隠しきれない様子のソールが小さな声でリアへと話しかけてくる。


「リア、2人ともイーナ先生のとこだね! これからもよろしくね!」


 まあ…… いろいろとやらかしてしまった気もするが、イーナ先生のチームで、それにソールも一緒となれば、これからもこの学園でやっていけそうな気はする。


「次は第6班。担当はルート先生ね!」


 リアやソールの名前が呼ばれた後も、そのまま、部隊分けはどんどんと進んでいった。陸の座であるルート、漆の座のリンドヴルム、㭭の座のスクナとどんどんチーム分けは進んでいった。


 そして、次は第9班。順当に行けば、玖の座に座る討魔師が教師となるはずである。だが…… 元々玖の座に座っていた討魔師は今、リアと共にいるルカだった。


――ルカって零番隊をやめたんだよね?


――そうだよ! でもちゃんと後釜はいるから大丈夫!


――え、誰々?


「次、第9班。9班の担当は、グレンディア・シュトラール先生!」


 グレンディア・シュトラール。元々零番隊、拾の座に座っていた討魔師である。本来、拾の座であるはずの彼が、9班の担当になると言うことは、ルカが元々いた場所に後釜としてグレンディアが上がったと言う事だろう。


「……最後に、第10班。えーっと…… 新しく、拾の座に任命された、ナーシェが担当になります!」


 ナーシェ。リアも、その名前は聞いたことがあった。イーナや陸の座のルート、それに、リアの相棒となったルカと、昔パーティを組んでいた治療魔法使いである。かつて、まだ人間とモンスターが共に暮らすようになる前、まだモンスターが人間にとって脅威だった頃、現在の討魔師と呼ばれるもののほとんどは、対モンスターを専門とするハンターとして生計を立てていた。


 その中でも、イーナ達の『ヴェネーフィクス』というパーティは、ハンターの中ではその名を知らないものはいないとまで言われた、いわば伝説のパーティだった。その一員であったナーシェなら、確かに零番隊の討魔師としても遜色はない。


 班分けも無事に終了し、それぞれの生徒がどの先生につくのか決まった。そして、檀上にいたイーナが、再び新入生の皆に向かって言葉をかける。


「じゃあ、班分けは以上! この後は、少し休憩を取って、それぞれ自分の担当の先生のもとで顔合わせのミーティングをする予定になってるので、遅れないで下さいね! そして、改めて、皆さんご入学おめでとうございます。これからの皆さんの活躍に期待してますので、一緒に頑張っていきましょう!」


 こうしてリアとソール、2人はイーナの班の一員となる事が決まったのである。


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