第9話 試験当日
「リア、ソール。後悔のないように、全力でやっておいで! 私は先に行って待ってるから!」
試験当日の朝、ずっと面倒を見てくれていたイーナから、励ましの言葉をもらったリアとソール。いよいよ試験の日がやって来たのだ。
リア、そしてソールにとっても、運命が決まると言っても過言ではない日である。緊張して、あまり寝付けなかったリアに、ルカが励ましの言葉を贈る。
--大丈夫! ここまで全力でやって来たんだから!
--ありがとう、ルカ! 絶対、合格するよ!
不安がないわけではない。だけど、不思議と自信があった。何せここまで、イーナさんやルカと共にたくさん修行をしてきたのだ。これでダメだったら仕方がない。そう思いながら、僕達は試験会場である、討魔師養成学園の校舎へと向かったのだ。
フリスディカ中心部に新設された討魔師養成学園。まだ完成したばかりの綺麗な校舎を前に、気合いを入れ直すように、リアに向かってソールが言葉をかける。
「ねえ……リア。今度はここで、絶対に二人で過ごそうね!」
「うん。行こうソール!」
絶対に二人で合格する。そう思いながら、学園の門をくぐろうとしたとき、リアの背後からリアもソールも良く知る少年の声が聞こえてきた。孤児院時代、やたらとリアに突っかかってきていた少年、ガリムの声である。
「リア、まさかお前、本当に受験するつもりなのか?」
「ガリム……」
「せめて恥だけはさらさないでくれよ」
吐き捨てるようにそう口にしながら、リアのすぐ横を通過していくガリム。
――何、あいつ? 完全に馬鹿にして! リア、あんな奴のこと気にしちゃ駄目だからね!
あからさまに不機嫌そうなルカの様子に、ついリアも笑みをこぼしてしまう。今までの自分だったら、魔法ではガリムには到底敵わないと思っていたかも知れないが、今は違う。
僕にはイーナさんやソールと一緒に、乗り越えた修行の日々、それに新たにパートナーとなったルカという存在がある。
――大丈夫、気にしてないよ。
リアは、そのまま堂々と校舎の中へ足を踏み入れた。
………………………………………
「そこまで!」
最初は学力試験。シャウン王国の歴史やら、魔法についての問題が中心である。流石に王立の学校と言うだけあり、そうやわな問題ではなかったが、それでも、目標としていたくらいには、解けたと思う。ソールも問題はなさそうな様子であったし、ここはひとまず大丈夫であろう。何よりも本番は次なのだ。
「えー、では受験生の皆さん。次は実技試験になります。用意して校庭に集合するように」
試験官を務めていた兵士の案内で、校庭へと向かうリア。リアが校庭に着いた頃には、既に、試験を終えた受験生達が、これから始まるであろう実技試験に向けて準備を始めていた。
それぞれ教室で筆記試験を行っていたときには、そこまで気にはならなかったが、やはり王立の学校と言うことだけあり、受験者が一同に介する実技試験ともなれば、集まる人数は桁外れだった。
討魔師による推薦が必要とはいえ、シャウン王国全土から、受験者が集まっているのだ。ぱっと見渡すだけでも、数百人はいるだろう。この中でも合格できるのはせいぜい数10人と言ったところ。今回の試験がいかに狭き門であるか、と言う事をリアもソールも、この時実感したのだ。
既に名を知られつつある魔法使い達の姿がちらほらと見える。例えば……
「おい、あいつ…… アルフレッド・ルシファーレンじゃないか……」
受験者達の間から動揺の声が聞こえてくる。シャウン王国でも由緒あるルシファーレン家の跡取りとなるアルフレッド。すでに討魔師として活躍している彼なら、今回の試験も間違いなく通過してくるだろう。もちろん、ライバルとなるのは、人間だけではない。
「あっちには、
今回の試験は種族に関係なく受験が出来る。強力な魔力を持つモンスター達も平等に受験資格があるのだ。
「リア、私達、大丈夫かなあ……?」
気合いを入れながら、準備をする他の受験生達を見て、ソールも少し不安になったようだ。だけど、こればっかりはもう仕方が無い。いくら不安に思ったところで、試験の時間は来てしまうのだ。ならば、リアやソールに出来ること、それはどんな結果になったとしても、後悔をしないよう、全力で試験に挑むことしかないのである。
「大丈夫、ソール。僕達なら大丈夫だよ」
絶対にソールと二人で合格する。そんな気持ちを込めながら、リアはソールに言葉を返す。そして、まさにリアがソールに言葉を返したその時、受験生達がざわついた。討魔師を目指す者達にとって、憧れとも言える存在、ミドウが姿を現したのである。
「おい、本物のミドウさんだ……」
さらに受験生達のざわつきが大きくなる。ミドウの後ろから、零番隊として活躍する討魔師達が続々と姿を現してきたのだ。その中には、イーナの姿もあった。ちらりと視線をリアとソールへと向けたイーナ。イーナの優しいまなざしからは、頑張れというメッセージが伝わってきた。
そして、教師となる予定であろう討魔師達の姿が揃い、受験生達をざわざわと喧噪が包み込む中、堂々たる様子で言葉を発したのは、零番隊の顔ともなる存在である、ミドウであった。
「それでは、これより実技試験を始める! 説明をはじめるので、良く聞くように!」
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