第12話 恋愛

 夏休み2日目。朝から強い日差しの降り注ぐ快晴で、日中は35℃を超えるとのこと。外にいたら死んでしまいそうだが、今日は絢音あやねの意向により、サマセミは回避して私の部屋でのんびりすることになった。さすがに少し疲れたのと、久しぶりに3人だけで過ごしたいという。

 交通費がそこそこかかるので、3人とも定期で集まれる古沼で遊ぶ提案もしたが、遊ぶお金より電車代の方が安いというもっともな意見で説得され、部屋を片付けた。共働きの両親が仕事に行き、時間があったので家の掃除をしてから駅まで二人を迎えに行く。昨日は制服だった涼夏すずかはTシャツにショートパンツ、ステージ用に攻めた格好をしていた絢音も、夏っぽいブラウスにスカートというラフな格好だ。

「二人とも久しぶり」

 昨日と同じネタを使うと、絢音が悲しそうに表情を曇らせた。

千紗都ちさと、24時間で記憶が消えちゃう人みたいだよ?」

「冗談だから、そんな目で私を見ないで!」

 大きく首を振ると、二人はますます憐れむような眼差しを向けた。ゾクゾクする。

 暑いからハグはお預けだという二人を自宅に招き入れる。絢音は初めてなので、部屋に入るや否や興味深そうに部屋の中を見回した。勉強机と本棚、少しぬいぐるみが置いてあって、ボードに帰宅部員や奈都なつの写真が貼ってるだけの、至ってシンプルな部屋だ。この部屋の主は、大して趣味がないのだろう。自分でもそう思う。

「テレビも無いんだね」

 絢音がクマのぬいぐるみを胸に抱えながら言った。

「タブレットで動画観てる。テレビって、言うほど観なくない?」

「そうかも。この子はオス? メス?」

「考えてない」

「じゃあ、この子の名前はメテオラ」

 絢音が満足そうにそう言って、ぬいぐるみを棚に戻した。涼夏が笑い転げる横で、私は抗議の声を上げた。

「人の家に来て、最初にやることがぬいぐるみに名前をつけることなの? っていうか、メテオラって何?」

「ギリシアの、岩の上に修道院があるとこ。人生で1回行ってみたい場所の一つ」

 まるで悪びれることなくそう言って、思わず腰を上げた私の体をふわっと抱きしめた。最近学校でしか会っていなかったので、なんだかとても久しぶりの感触だ。しかも薄着なので、肌の感触や熱がダイレクトに伝わってくる。私の髪に頬を擦り付けながら、絢音がうっとりと微笑んだ。

「気持ちいい。私もこのまま1時間チャレンジしたい」

「いや、その間私はどうすればいいの?」

 涼夏が驚いたように声を上げて手を振った。絢音が「眺めてて」と冷静に告げて、私は思わず噴いた。絢音が抱き付いたままなので、仕方なくそのまま座ってグラスにジュースを注いだ。買っておいたお菓子を開けてからグラスを取る。

「じゃあ、とりあえず絢音の快気祝いをしよう」

「元気だから! ずっと元気だったから!」

 絢音が遺憾の声を上げて、片腕を私の腰に巻き付けたままグラスを取った。まるで保育園に迎えに来た母親に抱き付く幼児のようだ。

 乾杯をしてから改めて昨日の感動を伝えると、絢音はどうもと言いながら私の後ろに座り直した。両膝で私の体を挟みながら、ギュッとしがみ付く。背中に押し付けられる感触が柔らかくて気持ちいい。

「あんなにたくさん拍手もらったら、クセにならない? 私は人生で、知らない人から拍手された経験がないからわからんけど」

 涼夏がワクワクした眼差しを向けると、絢音は「どうかなー」と相槌を打ってから、意味もなく私のお腹の肉をつまんだ。抱き付くのは構わないが、それはやめていただきたい。

「中学の時よりは刺激的だったかな。みんな上手になってたし、中学の文化祭より拍手も大きかったし」

「続けるの?」

 何気なく聞くと、絢音は何でもないように私のシャツの裾から手を入れて、お腹を撫でた。肌が汗ばんでいるのがわかる。「恥ずかしいんだけど」と訴えたが、無視された。それよりも、次に絢音の言った一言の方が重大だった。

「ちょっとあの後色々あって、あのバンドに参加することはないかな。まだちょっと、わかんないけど」

 何やら歯切れが悪い。ただ、話したくないのではなく、絢音の中でまとまっていないだけだった。涼夏が気楽に「何があった?」と聞くと、絢音は私のお腹を無造作に撫でながら言った。

「ベースの子に告白された。これにはさすがの絢音さんも予想外で混乱してる」

 テーブルの向かいで涼夏が目を丸くする。私も驚いて振り返ると、すぐそこに絢音の顔があって、いきなりキスされた。無理矢理私の体をテーブルの方に向けさせて、絢音が私の肩に顎を乗せる。

「ゲスト参加だったからね。学校も違うし、これでまた会えなくなると思ったらつい言ってしまったと、彼は供述していました」

「絢音的には?」

 涼夏が核心に触れるが、絢音は可笑しそうに笑い声を零した。

「ないない。1秒で断ったし、私が悩んでるのは、今後メンバーとどう付き合おうかなって。まあ、元々縁が切れてたようなものだから、また帰宅部でのんびり遊んでればいいんだけど、莉絵りえはまたバンドを一緒にやりたそうだったし、私もそういう思いがないでもないし、困ってる」

 莉絵とは、あの日絢音に声をかけに来たドラムの女の子だ。フルネームは豊山莉絵で、絢音以外でユナ高の生徒はあの子だけだった。後のメンバーは全員一岡である。絢音がごく自然に私のブラジャーに手を這わせながら続けた。突っ込みたいが突っ込みづらい空気だ。

「莉絵も、LemonPoundで自分だけ学校が違うのがちょっと面倒になってたみたいで、しかも朱未のボーカルはいまいち。だったら、私と新しくバンドを組んで1からやりたいって、これもライブの後にこっそり言われた」

 絢音が真面目な口調でそう言いながら、私の胸にリズミカルに指をうずめた。さすがにそろそろやめさせようと、服の中から冷静に絢音の手を取り出すと、向かいで涼夏がくすくす笑った。

「絢音は、莉絵ちゃんとバンドを始めたい気持ちは?」

「なくはないけど、天秤にかけたら圧倒的にこっち。たまにLemonPoundのゲストに出るくらいなら良かったけど、ベースの子に告白されて微妙になった」

 絢音がため息をつきながら、私の体をギュッと引き寄せた。ちゃっかり胸を触られているが、先に服の中に手を入れられたせいか、服の上からならまあいいかと思った。完全に絢音の手の平で転がされている。

「コクられたことは、他のメンバーは知ってるの?」

 私が聞くと、絢音が首を傾げる気配がした。

「どうかなぁ。いないところで言われたけど、伝わってる気はする。莉絵に聞いてみてもいいけど、聞いてなかったら余計にややこしくなりそうだし」

 クッキーが食べたいと言うので、1枚取って絢音の口に放り込んだ。耳元でボリボリと頬張る音がする。ASMRというやつだろうか。ゾワゾワするが、不快ではない。

「告白されたっていうと、私高校に入ってから、奥永君と河口君と笹部君に告白されてる」

 涼夏が唐突にそう切り出して、絢音が「ん?」と声を漏らした。顔は見えないが、驚いているようだ。それは、涼夏が告白されたことがあるという事実に対してではなく、突然そんな話を始めたことに対してだろう。超絶に可愛い涼夏が男子に告白されるのは、極めて自然なことだ。

「一昨日、そんな話をしてたんだよ。私が聞いたら、涼夏がどうせ話すなら絢音もいるところでって」

 終業式の後、私が高校に入ってからは告白されたことがないと言ったら、涼夏が驚いていた。その前振りを説明すると、絢音がなるほどと頷いた。

「私も高校に入ってからはないや」

「中学ではモテモテだった?」

「告白されたことがあるっていうだけだよ。お二人の足下にも及びません」

 絢音がそう言いながら、手を伸ばしてクッキーを取る。動くたびに背中にむにむに当たる感触がとても気持ちいい。

 それにしても、涼夏が今挙げた3人は、いずれも違うタイプだ。特に笹部君は少しオタク気質の子で、同じクラスなのによくぞ告白したと思う。こう言っては何だが、接点も少なく、可能性はゼロだったはずだ。悪く言うつもりはないが冷静にそう告げると、涼夏は相変わらず天使のように微笑んだ。

「好きになってくれるのは嬉しいよ」

「私は、好きでもない相手の好意はちょっと迷惑に感じる」

「千紗都は全身からそういうオーラが出てるから、誰も近寄って来ないんだろうね。圧倒的に可愛いのに」

 涼夏の言葉に、絢音がふふっと笑った。圧倒的に可愛いかは知らないが、意図的に壁を作っているのは確かだ。それは涼夏にも何度か指摘されている。

「それで、別に自慢がしたかったわけじゃなくて、告白されても断った後も、結構普通に喋ってるよって話」

「それは涼夏の人間レベルが高いだけで、私みたいなコミュ障の一般人には難しいんだよ。しかも、3年も異性を意識せずに、ただの友達だって思ってた相手に告白されて、ちょっと難しい」

 絢音が弱気にため息をつく。何もかも完璧に計算して動いている絢音が、ここまで動揺するのは本当に珍しい。

「絢音は男の子と付き合ったことはないの? 私はないけど」

 涼夏がふんわりと微笑む。初めて聞くが、答えはわかっているという顔だ。案の定、絢音は「ないよ」と答えてから、まるで意味もなく私の胸を揉んだ。

「涼夏ほどじゃないけど、私も男の子ってちょっと苦手」

「私は別に苦手じゃないよ? 恋愛する気がないだけで」

 涼夏が笑いながら訂正する。両親が離婚して、それを間近で見てきた涼夏は、異性とは恋愛しないと決めている。実際に、男子に対して恋愛感情を抱いたこともないらしい。ただ、別に男子を毛嫌いしているわけではなく、友達もたくさんいる。だから4ヶ月で3回も告白されるのだ。

「そうだったね。私は苦手。ほら、お兄ちゃんと弟がいて、なんていうか、がさつだし、品がないし、物理的に汚いし、デリカシーもないし。お風呂上りに全裸で闊歩して、私は何回見たくもないものを見せられたか」

 絢音がそう言って、うんざりしたようにため息をついた。涼夏は母親と妹と3人暮らしだし、私は一人っ子の上、父親はさすがに多少は娘に気を遣っている。身内とはいえ、同世代の男子の裸を見せつけられる絢音には同情を禁じ得ない。

「私、綺麗なものとか、可愛いものが好きなの」

 不意に絢音がそう言って、柔らかく微笑んだ。涼夏がいたずらな笑みを浮かべる。

「イケメン好きってこと?」

「男女は問わないけど、たぶんもう無理だよ。完璧に私の好きな顔立ちをしてる二人が、私と一緒にいてくれて、私を必要としてくれてる。私はこれ以上多くを求めないし、少なくともこの空間が壊れる動きはしたくない」

 きっぱりとそう言い切って、まるで猫でも可愛がるように私の顎と首筋に指を這わせた。つまりそれが、絢音が私たちにだけハグをして、何よりも帰宅部を大事にしている理由だった。もちろん、はっきりとそう言われたのは初めてだが、驚きはなかった。絢音が私と涼夏を好きなことは、見ていればわかる。

 そろそろ背中が暑くなってきたので、一度絢音を引き剥がすと、今度は横から抱き付いてきた。どうしても私の部屋で1時間チャレンジをしたいらしい。仕方がないのでそっと胸に抱き入れると、絢音が満足そうに笑った。

「千紗都は? バドミントン部で何があったの?」

 涼夏が静かにそう切り出して、私はゆっくりと顔を上げた。何かがあったことは二人とも薄々勘づいているが、私がそれを自分の口から話したことはない。自分の話をする気がなかったから、二人の過去にもあまり触れて来なかった。この二人が、私が今まで意図的に過去の話を避けていたことに、気が付いていないはずがない。

 そろそろ話してもいいだろう。涼夏の目がそう訴えている。私は肩の力を抜いて、ぬいぐるみでも抱くように絢音を抱き寄せながら口を開いた。

「中2の時に、同じ部活の男子に告白されて、フッたの。その子にはもちろん、そもそも恋愛に興味がなかったから」

「それで? それは千紗都のトラウマのきっかけだよね?」

「その子、部活どころか、学年で一番人気の男子だったの。私は知らなかったんだけど、その子を好きだった子も多くて」

「あー、泥沼が見えたわ」

 涼夏がわざとらしく両手で目を塞ぐ。絢音も先の展開を読めたと言わんばかりに、深く重たい息を吐いた。

 その頃の私は、今よりずっと社交的だった。異性に壁も作っていなかったし、男女を問わず友達も多かった。バドミントンの才能はまったくなかったが、部活内のヒエラルキーでは、間違いなく上の方にいた。

 ただ、学年一のイケメン男子が私に告白し、私がそれを断ったことで、部活内に妙な空気が流れ出した。嫉妬が渦巻き、派閥が生まれ、色々な関係がゆっくりと壊れていった。

「何で断ったんだとか、何様のつもりだとか、よくわからないことも言われたし、どんどんギスギスしていって、気が付いたら友達とも距離ができてた。ずっと守ってくれた子にも迷惑をかけそうだったから、私は部活を辞めた」

「ナツ?」

「そう。奈都だけが私の味方をしてくれて、結局奈都しか友達がいなくなって、修学旅行もずっと奈都と一緒にいたし、3年の時なんて、割とリアルに奈都としか喋った記憶がない」

「完全に正妻じゃん。勝てっこないって、それ」

 涼夏が両手を広げて首を振った。私は苦笑しながら絢音の髪を撫でた。

「どうだろう。奈都は部活を辞めなかったし、3年の時は部長になった。私は奈都としかいなかったけど、奈都は他の子とも一緒にいたし、私は一人でいることの方が多かった。だって、放課後は奈都は部活だったから」

「それでそんな寂しがりに……。千紗都、私がずっと一緒にいてあげるからね?」

 涼夏がそう言って、涙を拭う真似をした。私は「是非そうして」と軽い口調で答えてから、長い息を吐いた。

「高校でも、奈都はバトン部に入った。もし私が涼夏と絢音に出会えてなくても、奈都は部活をやってたと思う。そしたら、私はまた一人ぼっちだった。奈都はたぶん、私が奈都を好きなほど、私のことが好きじゃない」

 私と奈都は対等ではない。ため息混じりにそう言うと、少しだけ沈黙が落ちた。絢音は私の胸に顔を埋めていて何を考えているのかわからないが、涼夏は折り曲げた指を唇に当てて、何か考えるように虚空を見つめていた。それから私を見てにっこりと笑った。

「ナッちゃんのことはわからんけど、私はずっと千紗都といるから。何もかも受け止めるから、全部私に委ねていいよ」

「そうする。夏休み、毎日私と遊んで」

「それは無理かな。バイトもあるし」

 涼夏がしれっと手を振ると、絢音が可笑しそうに肩を震わせた。私の体を抱きしめたまま顔を上げて、綺麗な黒い瞳で私を見つめる。

「みんな色々抱えてるんだなって、ちょっと安心した」

 そう言って、斜めに顔を押し付けて私の唇をペロリと舐めた。キスしてくれるのは嬉しいが、涼夏の目の前で恥ずかしくないのだろうか。

「私、昨日結構凹んでたの。せっかくライブ楽しかったのに、告白はされるわ、莉絵にもLemonPound以外で活動したいって言われるわ」

 絢音が私の唇に舌を入れながら、怒った口調でそう言った。涼夏が「台無し感あるよね」と笑う。その前にこの状況に対して言うことはないのかと突っ込みたかったが、今は絢音の話が先だ。

「元々捨てたバンドだし、元に戻っただけって気もする。ステージは楽しかったけど、さっきも言った通り、私はここが一番大事なんだって、それを見誤らなかったら大丈夫な気がした」

 求められるまましばらく絢音と舌を絡め合って、やがて絢音が顔を離してとろんだ目で私を見た。

「メスの顔してる」

 冷静にそう指摘すると、絢音は「千紗都のせいだよ?」と言いながら体を離した。何も私のせいではないと思う。

「なんか二人とも私とばっかりキスしてるけど、二人はしなくていいの?」

 なんとなくそう言うと、涼夏が目をパチクリさせて絢音を見た。絢音もうっとりした顔で涼夏を見上げる。

「別にいいけど」

「うん」

 涼夏が年寄りのように重苦しく腰を上げて絢音の前に座った。そのままふわりと絢音の体を抱きしめて、二人で唇を重ねる。

 一体私は何を見せつけられているのだろう。そう思わないでもないが、これもきっと絢音のボディータッチ計画の一環なのだろう。私がはばにならない範囲で、二人の仲も深まって欲しい。二人が舌を絡める音を聴きながら、私は一人で納得するように頷いた。


 結局その日は一日中外に出ることなく過ごした。昼は涼夏が手際よくチャーハンを作って、絢音が感動していた。

 今後の夏休みの話をすると、涼夏は週に3日はバイトを入れると告げた。絢音は夏期講習はないが、週に2回行っている塾を週3回にするらしい。

「結局、学校がある時とそんなに変わらないか」

 私が独り言ちると、二人が困ったように微笑んだ。私を一人ぼっちにしないとは言ったものの、現実それはなかなか難しい。

 宿題は一緒にしよう。頻繁に遊ぼう。それから、夏の思い出を作ろうと言うと、涼夏が「プールだな」としたり顔で頷いた。

「私も千紗都の水着姿が見たい」

「わかる!」

 二人が両手を取り合って、女の子っぽい仕草でにこにこと頷き合った。

「だから、涼夏の方が可愛いから。圧倒的に!」

 冷静に突っ込むと、涼夏がゆっくりと首を振った。

「顔は好みがあるとして、千紗都の方が胸が大きいのは紛れもない事実。体型が、私はちょっと幼い。千紗都は大人」

 そう言って、涼夏がじっと私の胸を見つめた。微差だと思うが、確かに私の方が胸は大きい。大きいと言っても生活の邪魔になるほどではないが、そこを指摘されると反論できない。涼夏はCくらいだろうか。絢音はそれよりもう少し小さい。

「私もバイトしようかなぁ」

 何気なく呟いて、自分で自分の発言に驚いた。そんなこと考えたこともなかったが、実際暇しているし、お金も欲しい。ユナ高は元々バイトに寛容だし、特に夏休みの短期バイトは親の許可だけですることができる。悪い選択ではない。

「するならうちにおいで。今、バイト募集してないけど」

「ダメじゃん!」

「同じショッピングセンターの中で、色んな募集があるよ」

 涼夏があっけらかんと笑う。絢音は「いいなぁ」と目を輝かせたが、他人事のような口調だった。塾との両立は難しいのか、親の許可が下りそうにないのか。もし私がバイトを始めて、絢音と経済格差がついてしまったら、涼夏がそうしたように私も上手にカバーしてあげたい。

 高校最初の夏休み。せっかくだから、色々なことに挑戦しよう。暑いのは苦手だけれど、ワクワクは一日ごとに強まっている。

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