第三十五話 神々の遊戯




 自らが魂を持たない人形であるなどと、そう簡単に認められるものではなかった。


 だが、そんなはずはないと否定しながらも、リートはどこかでそれを受け入れてしまった。


 他の神には後継者などいない。永遠を生きる神にそんなものは必要ないのだから。

 じゃあ、アモルテスにも必要ないのだ。後継者など。


「人形を創る時に手伝ってやったから、こっちもちょっとした頼みをきいてもらったのさ」


 相変わらず愉快そうに、ザルジュラックが言う。


「俺も長い永遠に飽いていたからな、たまには楽しいことがしたい」


 ザルジュラックはいつの間にかまた別の玩具を手にひっかけて振り回していた。


「そこで、思いついたんだ。世界の支配者となるべき器に、絶対にモテない魂を入れたらどうなるか?」


 リートは顔を上げてザルジュラックを凝視した。そんな視線は意にも介さず、飄々とした口調でザルジュラックは続ける。


「アモルテスも面白がって、絶対にモテない魂を創ってくれたよ。そんで、どっかの世界の支配者になる器にそれを入れようって話になった。ちょうどお誂え向きに、小さな世界に支配者となる若者が生まれる予定だった」


 それが、ジェラルドだったのか。

 リートは眉をしかめてザルジュラックを睨んだ。


「そうして、俺は運命で遊び、アモルテスは人形で遊んでいた。果たして、モテない魂を乗り越えて、器を愛するものが現れるかどうか。それとも、モテない魂のせいで世界は滅びるのか。しばらくは楽しめるかと思ったんだが」


 ザルジュラックは肩をすくめて溜め息を吐いた。


「でも、アモルテスと一緒に世界を覗き見している時に、ハルデラグスに見つかっちまってなぁ。いやあ、失敗した」


 がりがりと頭を掻き、悪びれる様子もない。


「世界を使って遊んでいることがハルデラグスにバレて激怒されちまった。いますぐ何とかしないと浄天宮で千年労働させるって脅されてさ。魂を回収することになった。そこで、お前を派遣することにした。魂のない人形ならば、モテない魂への嫌悪を抱くこともないからな」


 ザルジュラックがリートを見て言った。


「お前は「ちょっと口が悪くて生意気な可愛い弟子」って設定で創られた、アモルテスの人形だ」



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