心霊スポットの形跡
「心霊スポット」と聞いて、どんな場所を思い浮かべるだろうか。
・一家心中が起きた廃屋
・自殺者が多発し住人が消えた廃団地
・何人もの患者が亡くなった廃病院
こういった「見かけからして明らか」な場所だけでなく、私たちが普段使っている施設や集合住宅、道路などが実は心霊スポットだったというケースも珍しくない。
今回紹介するのは、私自身が体験した心霊スポットの形跡に関する話である。
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某県内にあるその道路は、心霊スポットとしてオカルトマニアの間ではよく知られている。
インターネットの情報によると、その道路のある地点では交通事故が多発しており、次のような噂が囁かれているとのこと。
・夜になると事故死した人の亡霊が現れる
・タクシー運転手が乗せたはずの女性がいつのまにか消えていた
・車の窓ガラスに無数の手形が付いていた
どれも心霊スポットとしては「あるある」な噂である。
2年ほど前、この道路が家の近くにあることを知った私は、噂の真相を確かめてみることにした。
手始めに、インターネットを使って過去の出来事を調べてみる。しかし、その道路で事故が起きたという記録は全く見当たらない。
これも心霊スポットではよくあることだ。噂が完全なデマであり、なんてことはない普通の場所というケース。この道路に関する噂も、誰かがでっち上げたものだろう。最初、私はそう思った。
それでも、一介のオカルトマニアである私としては、家の近くにあるなら行ってみないわけにはいかない。
仕事が終わった夜20時ごろ、例の道路に沿って歩道を歩いてみたのである。
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交通量は確かに多いが、ごく普通の道路だった。心霊スポットなんて話を聞かなければ、全く印象に残らないであろう道。逆にそれが私の興味を駆り立てた。普通の道路が、何の理由もなく心霊スポットになるのだろうか。私は周辺を調べて回ることにした。
向かいの歩道からも見てみようと、歩道橋を渡っていた時のこと。ある違和感に気づいた。
歩道橋の両脇に設置されたフェンスが妙に高いのである。正確に表現するなら、普通の歩道橋は大人の胸くらいの高さの柵が取り付けられているが、その上から重なるように高さ2mほどの鉄網が設置されているのだ。
今まで生きてきて、このような歩道橋は見たことがない。頭上までの高さがあるフェンスが取り付けられているということは、以前ここから転落した人がいた可能性が高い。
その歩道橋は、噂の地点の真上あたりにかかっていた。高さ的に落ちても死ぬことはないかもしれないが、車がビュンビュン行き交う道路の真ん中に落ちれば、命はないだろう。
同じ道路にかかる別の歩道橋を2〜3見てみたが、高いフェンスは取り付けられていなかった。
確証とは言えない。しかし、普通の道路が心霊スポットと化した形跡を見つけられたような気がした。
もっと何か、強い根拠はないだろうか。そんな期待を持って、私は歩道橋から100mほど道路に沿って歩いてみた。
ある横断歩道の歩行者用信号機の根元に、小さなお地蔵様と水やお菓子、花などが供えてあるのを見つけた。後から知ったことだが、道端にあるお地蔵様は、交通事故で亡くなった人の供養を目的として建てられる場合が多いそうだ。
どんな事故だったのか、誰が亡くなったのかはわからない。私にできるのは、お地蔵様に手を合わせることだけだった。
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人が近寄らない廃屋ならまだしも、日常的に使われる場所が心霊スポットになってほしくないというのは、よっぽどのオカルト好きを除けば一般的な考え方だろう。
もし心霊スポットになり得る事件・事故が起きたとしたら、その場所を管理している人は事実を隠そうとするはずだ。だから私がインターネットで調べた限りでは、あの道路に関する事件・事故にはたどり着けなかった、とも考えられる。
何が真実かはわからない。生きた人間によって死を無かったことにされた人たちがいるのなら悲しい、そして恐ろしい話だ。自分が死んだ時も、場所によってはその事実は葬り去られてしまうのかもしれない。
仮にそうだとしても、実際に心霊スポットへ足を運ぶと隠しきれない形跡が見つかることもある。自分が死んだ時は、その形跡を誰かに見つけてもらえることを祈る。
※関係者に配慮し、内容を一部変更しています。
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