第187話


 午前は広い座敷を借り、それぞれ持ってきた宿題など勉強会をする。


 安良川に連れてきてもらったが、朝食直後の記憶が無い。


「(なんか良いことがあった気がするんだが……)」


 どうしても思い出せない。


「(まあ、良いか)」


 引き続き夏休みを楽しむためにも、早めに宿題を進めなくては。


「なぁ、桐堂。ここ分かるか?」

「ん?見せてくれ」


 僕だけが終わっても一緒に遊ぶ相手がいなければ意味がない。何かあれば積極的に手伝う。


「ああ、ここか。ここの描写は……」

「ほえー」


 というかそのコツとやらは担当の輝久先生が要点を抑えてくれていたはず。さてはコイツ、授業真面目に受けてなかったな。


「メラノさーん、助けてぇ〜」

「良いよ、見せて」


 あっちの女子組はメラノさんが色々教えてくれてるらしい。留年してるだけあって知識は多い。


「烏川は大丈夫なのか?」

「ええ、そっちは?」

「僕は大丈夫だ」

「そう」


 会話が途切れる。が、この沈黙は嫌いじゃない。


「…………」

「…………」




〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜




「何、この熟年の……アレ的な」

「さぁ……?」


 当の本人たちは至って真面目に宿題をしているだけなのだが。



 勉強の合間、休憩時間にそのことを聞かれ、桐堂が顔を真っ赤にして「はぁ!?ゔぇ、はぁ!?」と狼狽えるのはまた別の話。




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