第152話


 烏川の帰りが遅い。


 テレサ以外に苦戦したところは見た事が無いし、昨日の襲撃者に関しては1人で圧倒していた。


「(まさか……いや、でもそんな)」


 そんな、まさか烏川が負けるなんて事は無いだろう。


 一瞬でも頭に浮かんだその思考を振り払う。


「(大丈夫だよな?烏川)」






〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜




「っらぁ!」

「っぐ……」


 身動きできないまま頭部を鈍器で殴られる。先程からずっとこの状態だ。


「さっきはよくもやってくれたよ、なぁ!」


 今度は腹を蹴られる。敢えて抵抗せず、腹部をくの字に曲げて揺れる。


「……寝ちまったか?」

「気絶だろ馬鹿が」


 しかし右手の感覚は戻ってきた。左手の方はまだないが。


「それにしてもさぁ、あの人たちの目の前だったから言わないでおいたけどさ……」

「なんだよ」


 ひと通り気が済んだのか暴行は落ち着く。


「この娘、結構可愛くね?」

「おいおい。敵だぞ、コイツは」

「ちょっとくらい良いじゃん。な?」

「ったく……」


 駄弁ってある隙に薄目を開ける。伊達メガネはどっかに落としたらしい。それはどうでもいい。


「(さて……と)」


 予定ではもうそろそろ連絡が来るはずなのだが


 ピピッ


「(来た)」


 電子音が私の耳元で鳴る。


『準備完了。あとは四散させ、各個撃破するのみです』

「(………りょーかい)」


 男が私の服に触れ、顔を近づけたその時。そっと目を開く。


「ん?起きたか。まあ良いや、そのまま……」

「ふっーーーーーっ」

「うわっ!?」


 真っ黒な毒霧を吐き出す。


「か、カハッ……」

「コヒュッ………」


 顔を寄せていた1人はもろに毒を吸い込んでしまい、恐らく肺を潰されたのだろう。


 呼吸困難になりバタりと倒れ伏す。


「私の容姿を褒めてくれた事には感謝するわ。でもごめんなさいね?」


 誰一人ここから生きては返さない。


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