第145話


 男は鋭い爪を烏川に突き出すが、アッサリ躱され顎に掌底を受ける。


「んごっ、クソッ……!貴様、何処の者だ……!」

「ただの人間。それ以上でも以下でもないわ」

「ふざけるな!」


 爪で薙ぎ払うも、今度は足で払われ顔面に蹴りが。


「ガハッ」


 あまりの威力に後ろへ転倒する男。そして烏川の靴の裏から光沢のある鋭い刃が。


「くっ……!」


 間一髪男は身を捩る事でブレードの追撃を躱す。が、一回避けられたからといって烏川が追撃を諦めるわけがない。


「ごはっ」


 体勢を整えるまもなく男の顎を蹴り上げる。


 宙に浮く男。烏川は男が落下する前に蹴り落とし、踏みつける。


「ガッ、ハッ」


 痛みのあまり顔を歪めた、その時だった。


「むごっ!?」


 開いた男の口の中にあろうことか烏川は手を突っ込む。


「自己紹介が遅れたわね」


 そう言って烏川はニヤリと笑う。


「私の名はオルカ。リッパーの方が通りが良いかしら?」

「!?」


 男は烏川の自己紹介にガクガクと震える。


「あら。どうしたのかしら、そんなに怯えて。ふふっ」

「〜〜!〜〜!」


 ヒュンッ


 ガシャッ


 突如飛来した鎖が烏川の身体を縛り付ける。


「チッ、まだ仲間がいるか」

「うぉぉぉあっ!」


 その隙に男は柵から飛び出す。


「なっ、待てっ!」

「覚えてな、クソガキども!」


 黒いマントのようなものを翻すと、男の姿が闇夜に消えてしまう。しかし


「今よ。全員、撃て」


 烏川のその一言と共に、あらかじめ隠れて潜んでいたクラスメイト達が一斉に物陰から飛び出す。



 そして、シオンなど多数のガナーデバイスを一斉に発砲する。


「ぎゃっ」


 いくら迷彩マントだろうがなんだろうが、何も隠せてない下からなら丸見えだ。


 姿を消したかに見えた男は真下から撃ち抜かれ、呆気なく墜落する。


 烏川が待機場所に燕翔寺の部屋を選んだ理由。それは僕の部屋よりも上の階で更に目立つ場所だから。


「確保ー!」


 道尾の声が下の方から聞こえる。無事犯人を捕まえたらしい。烏川も自分に巻きついた鎖をクナイでアッサリと破壊し首を回す。


「ひとまず、吸血事件はこれで終わりね。ただ、敵はまだいるわ」

「ああ……」


 そう、今烏川を鎖で拘束したのはあの男とはまた別のやつだった。敵は少なくともあと1人はいる。


 まだ、油断は出来ない。


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