第146話


 ひとまず吸血事件は解決。メラノさんへの疑いは完全に晴れた。


 しかし、奴は襲撃者の1人でしかない。


 クラス内は校内に侵入した不審者を見事確保したことでパレード状態だが一切油断はできない。


『もしかしたら別の目的があって奴は陽動かも知れない』


 昨晩、烏川が自分の部屋に戻る際に言い残した言葉が頭をよぎる。何かよからぬ陰謀がこの学園に迫っているのかもしれない。


 考え込んでいると頭を小突かれる。烏川だ。


「何かに熱心になるのも良いけれど、学生なんだから今は授業に集中しなさい」


 ごもっともな意見だが言っている本人は授業中に飲み物を飲んだり果てには途中で抜け出したりとあまり説得力は無い。まあ、烏川の本来の身分は学生では無いのだが。


「そっちこそ、上手くカモフラージュしなくて良いのか?」

「気が向いたらね」


 そう言って烏川はタッチペンをクルッと投げ回し、見事にキャッチする。


「(まあ、良いか)」





〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜





「(今のところ動きは無し、か)」


 ただフォリンクリ特有の匂いと、喧しい電気信号のような物はすぐ近くで感じられる。


「(やっぱり、まだこの学園に居るようね)」


 最低でも昨晩の鎖の奴は私たち全員の顔を見ている。つまり、桐堂の顔も私の顔も割れている。


 能無しの害虫共のくせに、今回はヤケに慎重だ。


 というより、最近の襲撃者達は計画的な犯行に見える。


「(進化、しているのかしら。だとしたら厄介ね)」


 まあ、何はともあれテレサの時以上に本腰を入れないといけないのは事実。


「(髪も黒に戻ったし)」


 さてと、私も頑張りましょうか。




  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る