第142話


「………な、なあ烏川……」

「何?今忙しいのだけど」


 現在、放課後。今まさに襲撃者に備え、とある作戦を実行しようとしている真っ最中。


 ………なのだが


「なんで僕は女装させられているんだ……?」


 何故か僕は"燕翔寺の部屋"で"女子生徒の制服"を着せられていた。


「似合ってるわよ」

「そんな事は聞いてない」


 意味不明な事態になんだか頭痛がしてきた。


「どういうわけか例の吸血野郎は"桐堂廻影"を女だと思い込んでるみたいなの。顔も整ってるし、ぱっと見大丈夫よ。だから、ね?」

「ね?じゃないんだよ!」


 燕翔寺に助けを求めるも、燕翔寺自身も主犯の1人。烏川に至っては心なしかノリノリに見える。


「観念しなさい桐堂。貴方は今夜限り、男を捨ててもらう」

「なんで、こんな目に………」


 そしてついでにと、ご丁寧にウィッグまでつけられてしまった。





〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜






「作戦はこうよ」


 どこから持ってきたのかホワイトボードと指示棒を持って烏川が説明を始める。


 まず、燕翔寺の部屋のネームプレートを一時的に電子ジャックし、僕の名前を表示させる。  


 奴は僕が狙いなのだから遅かれ早かれ確実に近づいてくる筈。


 そして僕自身を囮にして控えていた烏川や燕翔寺の他、待機しているクラスメイト達が一網打尽にすると言う算段らしい。


「だからって女装する必要は……」

「念には念を、よ。だまって着てなさい」

「うっ……」

「似合ってるよ、廻影くん……ぷっ」

「おい……」


 もし何か困った事があっても離れたところから嘲笑ってやる。


 僕は小馬鹿にしたように笑うその少女を睨みながらそう決心した。





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