第140話
「あ、暁海ちゃん……?」
「………」
朝。
気を失っていた女子生徒を保健室に預けた後、教室に入るなり僕たちの席の近くで待っていたメラノさんに突然烏川はクナイ向ける。
「私の質問に正直に答えなさい」
「えっ!?な、なに……?」
「質問への回答以外の言葉を発するな」
「っ……」
僕が知る中でこの学園にヴァンプはメラノさんしか居ない。まさかだと思うが……
「昨日の夜、貴女は何処で何をしていた?」
「昨夜……?いつも通り学園の図書館で、人形を補充してたけど……」
「ふぅん」
烏川はメラノさんの目をじっくりと見つめる。そのとてつもない圧力に僕とメラノさんはたじろぐ。
「最後の質問。最後に人間から血を吸ったのはいつ?」
「私は人間から血を吸わない……!」
今の今まで烏川に押されていたメラノさんが突然牙を剥き出しにして怒る。赤い瞳も血の色の様に真っ赤に染まっている。
「………そう」
しかし烏川は驚いた様子もなく、ただ圧迫感だけが消え去る。
「確認終了。当候補生の試験続行に問題無し」
「え……?」
そして淡々とそう告げると、烏川は自分の席に着く。
「えーっと、今のは……?」
「吸血事件が起きたのよ。この学園で」
「ええっ!?」
「そ、そうなんだ……」
「ま、小心者の貴女がそんな真似できるとは最初から思ってなかったけれど」
「ううっ、酷い……」
「で、あの話の続きだけれど」
「ああ」
昼休み。烏川から聞いた話によるとあの女子生徒は烏川に襲い掛かろうとしたらしい。
【眷属】
ヴァンプは血を吸った相手に自分よりランクは下がるが、同じ能力を与え、一時的に従える力を持つ。
「それだと犯人がメラノさんじゃないにしても、相手は吸血鬼の可能性があるんじゃないか?」
「無いわよ」
真っ向から否定された。
「あの力を使うには少なからずエレミュートを流し込む必要がある。いわばエレミュートのウィルスね」
「ただこのウィルスは徐々に免疫に分解されるの。一時的にしか従属させられないのはこの為ね」
そのウィルスが一切検知されなかった。
「言っておくけれど、エレミュートを探知する能力に関してはこの学園で私が1番だと思うけれど」
大した自信だが、それは事実。その烏川ですら検知出来なかった。つまり
「あれはマインドコントロールね。貧血と恐怖により精神的に疲弊した所にでもかけたんでしょうよ」
「なるほど、な」
血は吸うが、ヴァンプではない。眷属に敢えてしなかったという可能性もあるが、わざわざ目撃者がどこにいるかもわからない敵陣の真っ只中で敢えて手間のかかる方を選ぶ理由が無い。
「(一体、敵は誰なんだ……?)」
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