第113話

「おそいな、あの2人」

「ああ」


 安良川の一言に相槌する。


 もうすぐ実技の時間が終了する。しかし、道尾と燕翔寺の姿がまだ見えない。


「(どうしたんだろうか・・・)」


 流石に遅すぎる。心配になって来たところで、やっと2人の姿が。


「うひゃー」

「……」


 もし何かのトラブルで帰還出来なくなっていたらどうしようと思っていたが、そんな心配は要らなかったらしい。


 しかし、2人の足取りはどこか沈んでいるように思える。


「2人ともお疲れ様。どうだった?」

「負けちゃったよ、アッハハ」

「申し訳ございません、道尾様」

「いーのいーの!気にしないで智恵ちゃん!」


 ヨシヨシ、と燕翔寺を宥める道尾。


「(何かあったみたいだな)」


 烏川に視線を向けると「ひとまずそっちで何とかしてちょうだい」との指示がくる。


「(まあ、ただの勘であってそう見えただけなんだが)」


 ともかく、僕も燕翔寺に寄り添う事にする。


「(燕翔寺がここまで落ち込むのは・・・・)」


 いや、まさかな。ひとまず燕翔寺を落ち着かせることに専念する。あの燕翔寺がここまで取り乱すとは。


「落ち着いたか?」

「は、はい。申し訳ございません」


 一旦落ち着きを取り戻したようで、燕翔寺の視線も上がる。


「何があったんだ?」

「それが……」

「あたしがドジっただけだって、智恵ちゃん」


 どうやら道尾と関係しているらしい。ひとまず燕翔寺から道尾を引き離し、話を聞く。


「道尾、何があったのかを教えてくれ」

「でも」

「燕翔寺の事を思ってなんだろうがこのままじゃ落ち込んだままだ」

「だよね、分かった。けど、今話させないかな。それに、本人の口から言ったほうがいいかもだし」

「わかった。安良川もそれで良いか?」

「おう、俺は問題ないぜ」


 友人として、今の燕翔寺は放っておけない。


「(なるべく早く、解決してあげたいな)」


 もうすぐ傘草先生のHRが始まる。まずは整列してからだ。




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