第107話

「はぁ………」


 小さな溜息が一つ。


 現代文、輝久先生の授業。いつもの燕翔寺ならどんな授業も真面目に受けているが、今日はどうやら集中出来てない様子。


「(どうしたものか)」


 しかし本人が望んでもないのにズケズケと領域に踏み込むのはどうかと思う。


 こんな時どうしたらいいのだろうか。つくづく今まで他人と全然接して無かったのが悔やまれる。


 コツコツッ


「ん?」


 横から机を叩かれる。視線を向けると烏川が「前を向け」とジェスチャーする。


「桐堂くん?」

「は、はい!」




〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜





「だから言ったのに」

「め、面目ない」


 昼休み。案の定、烏川は心底呆れた様な顔をしている。


「(燕翔寺は今日はこっちに来ないのか)」


 どこかに行ってしまったらしく既に教室に居なかった。


「メラノさん、燕翔寺から何か聞いてないか?」

「わ、私?うぅーん……」

「メラノさんもダメか……」


 ここで燕翔寺と特に交流があるメラノもダメだと判明する。頼みの綱だったんだが。


「「うぅーん」」


 2人揃って頭を抱えるバカ2人こと道尾と安良川については最初からあまり期待していないので放っておく。


「私の意見、良いかしら?」

「ああ」


 もっぱら戦闘員だが組織の人間という以上、おそらく僕たちの中で一番社会や人間関係の経験は多いはず。少し期待できる。


「まず放課後まで待ちましょう」


 それだけ言って烏川は席を立つ。


「ん?それだけ?」

「そ。じゃ、また後で」


 そう言い残し烏川はその場から立ち去る。


「俺たちで何か作戦でも考えるか?」

「………いや、やめておこう」


 意思疎通という考えを捨て去った烏川の言動だが、おそらく今は下手に関わって刺激せず、待つのも手だと言う事だろう。実際、燕翔寺は教室を出て昼休み中1人でいることを選んだ。


「僕たちで焦っても仕方がない。烏川の言う通り放課後まで待ってみよう」


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