第76話
「さよなら、神様気取りのクソ女」
烏川のその言葉と共に、テレサを貫いた一本の黒い槍は爆発する。
バケモノの様な強さを誇ったテレサの肉体も流石にその爆発にはなす術もなく、下半身のほとんどを消しとばされてしまった。
「お、おる、きぬ……す……!」
「へぇ、まだ生きてるんだ」
もはや身動きも取れないテレサに向かって烏川はトドメを刺すべくナイフを逆手に持つ。しかし
「っとと」
「烏川っ!」
「ああ、ごめん」
グラつき、倒れそうになる烏川を支える。その隙を突かれ、背中から翼を生やしたテレサの逃亡を許してしまう。
「チッ、逃げられた」
それよりも、だ。
「烏川、大丈夫なのか?」
「問題、ないわよ」
そう言って烏川は自分の右目から流れる血を拭う。
「ちょっと貧血かしらね」
「ちょっと所じゃないだろ……!?」
誰がどう見ても重傷。立っているのが不思議なくらいだ。幸いこの学園には保健室という名の医療施設がある。
「燕翔寺、メラノさん」
燕翔寺と、いつの間にか復活していたメラノさんを呼ぶ。
「はい。なんでございましょうか」
「ぅうん?」
「烏川を頼めるか?流石に男の僕が色々するのは……な?」
燕翔寺は首を傾げるが、僕が何を言いたいのか察したメラノさんは「あー、分かった」と了承してくれる。
「えっと、じゃあ、失礼するね暁海ちゃん」
「別に良いわよ」
「良くないよ……?」
意外とメラノさんも力が強いのか半端無理矢理烏川を連れて保健室へ向かい、燕翔寺もそれに着いて行く。それにしても、メラノさんって不死身か何かなんだろうか?
「(………とりあえず、僕は部屋に戻るか)」
これ以上、僕に出来ることはない。変にウロチョロして襲われ、烏川の仕事を増やすようなことにならない為にもさっさと自分の部屋に戻っておかないと。
「……」
自室に到着してシャワーを浴び、バスルームから上がって窓から夜空を見上げる。
「(安良川や、道尾達にも悪いことしたな)」
今ではすっかり周囲に対する憎悪の様な感情は消え去って思考もクリアになって冷静に物事を判断できる。
その原因であった釘のようなものは以前放課後、僕が戦った襲撃者の仕業だったんだろう。それでも僕がしてきた行動に変わりはない。
「(明日あったらまず謝ろう)」
そう決心し、僕は布団に潜るのだった。
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