第60話

「やあ、また会ったね」


 前回と同じ白衣を着た少女が同じく前回と同じように座っている。


「ふっふっふっ、喜ぶといい。今回はちゃーんと茶菓子を用意しているんだ。ささ、座りたまえ」


 満面の笑みでそうすすめられるので、言われた通りにまたあのフカフカのソファに腰掛ける。


「いやー、君が来てくれると助かるよ。堂々と仕事をサボれるからね」


 そりゃダメでしょ、と言うと少女は「あーあー聞こえなーい」と耳を塞いで喚く。


「全く、君は僕の弟みたいなこと言うなぁ」


 えっ、弟さんが・・・?


「いいや、正確には従弟だ。昔はよく一緒に遊んだものだよ」


 そう言った途端、少女の顔が曇る。


「だと言うのに・・・」


 ・・・・?


「僕よりも先に結婚してさ!全く飛んだ裏切り者だよ!全く!」


 バンバンッと自分のデスクを叩きだす。身長も相まって少し子供っぽい。


「まあこの話は良いや。今日も耳寄りな情報を持ってきてるからね」


 そう言って少女は向き直り、服装を正す。


「四面楚歌。孤立し、救いを求めた少年に一筋の光が刺す。慈愛の微笑みは嘘か、真か。第5章、大いなる聖十字・グランドクロス」


「見逃したらダメだからね?」

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